Nearest Faraway Place nearestfar.exblog.jp

好きなリンク先を入れてください

Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
プロフィールを見る
画像一覧
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

<   2018年 01月 ( 12 )   > この月の画像一覧



今日はいい天気、というよりは晴れたり曇ったり。曇ってるほうが多いかな。ただ気温は高くて(室温は14℃)暖かい。今日のような日ではなく、もっと気温が低くて、でも雲ひとつなくスッキリ晴れたような日に口ずさむのがこの「Sunny Winter」という曲。今年はすでに何度か口ずさみました。




歌っているのはキャロル&シェリル(Carol & Cheryl)という2人組の女性グループ。レーベルはコルピックスですね。プロデュースはもちろんステュ・フィリップス。


「Sunny Winter」という曲を初めて聴いたのは山下達郎さんの『サウンド・ストリート』のサーフィン&ホット・ロッド特集でした。放送されたのは1984年9月13日。

冬の、しかもサーフィンでもホット・ロッドでもない曲が「サーフィン&ホット・ロッド特集」でかかったかというと、この曲のA面が「Go Go G. T. O. 」というそこそこ有名なホット・ロッドの曲で、でも達郎さんはB面の綺麗な「Sunny Winter」が好きなのでこっちをかけたということ。そのとき以来、僕も大好きになったんですが、でもこの曲、いまだにまともな形でCD化されていないんですね。A面の「Go Go G. T. O. 」は宮治さんが監修して3年前の夏に発売された『ワーナー・サーフィン&ホット・ロッド・ナゲッツ』に収録されました。早くきちんとした形でCD化して欲しいですね。というよりもシングル盤がほしい。けど、めっちゃ高い。


ちなみに「Sunny Winter」が収録されたCDで僕が持っているのはこのCD。もちろん正規盤ではありません。でも、今となったらかなり貴重なものかもしれません。


a0285828_14214417.jpg


このアルバムの写真に写っているのがキャロル・コナーズ(Carol Connors)という人。キャロル&シェリルのキャロルがこの人です。

キャロル・コナーズについてはこの日のブログとか何度か書いていますね。その日のブログで紹介しているThe Storytellersというのは彼女とスティーブ・バリが作っていたのいたグループ。『ワーナー・サーフィン&ホット・ロッド・ナゲッツ』と同時に発売された『ワーナー・ガール・ブループ・ナゲッツVol,4』に収録されてびっくりした「Time Will Tell」はキャロル・コナーズとスティーブ・バリの共作。女性の声は一人ではない気がするのでたぶんシェリルも参加しているのではないかと思っています。


そのシェリルというのは彼女の妹。達郎さんの番組でも「妹だと思います」と説明しています。まだ情報が少ない当時、限られた資料で的確な推測をしていますね。そういえばその時の放送ではキャロル・コナーズがテディ・ベアーズのアネット・クラインバートと同一人物かどうかまではわかっていなかったようで、達郎さんも「一説には言われていますが、定かではありません」という表現に留めています。

このあたりのことは大瀧さんといろんな情報を交換しあっていたことは間違いありません。


さて、今年、最初に「Sunny Winter」を聴いた日だったか、その次の日くらいに、そのシェリルの方に関する驚くような情報を目にして、椅子から転げ落ちそうになりました。そっ、そんなところにまで、という話。

その話はまた次回に。


[PR]
by hinaseno | 2018-01-18 14:22 | 音楽 | Comments(0)

今日は、数日続いていた寒さがふきとんで、春のような陽気。目の前の庭の木にも小鳥がやってきています。

これくらい暖かいと、くまくまちゃん色したマフラーも必要ないですね。僕の肩の上にある(はずだとおもっている)やさしさも、震えるどころか、小鳥のように飛び立とうとワクワクしている感じです。行きたい場所は姫路のおひさまゆうびん舎。


その話の前に昨日アップしたブログ、引用した歌詞の空けていたはずの行がくっついた状態になっているのに今朝気づきました。

下書きではきちんと空けていたのに、アップするとなぜか空きがなくなってしまうんですね。隙間がなければなんのこっちゃです。とりあえず直しておきました。


さて、ちょうど1年前の1月16日に、新刊の『くまくまちゃん、たびにでる』とともにくまくまちゃんシリーズ3冊が同時に発売されたんですね。

というわけで、それをお祝いして今日、姫路のおひさまゆうびん舎でくまくまちゃんパーティが開かれるようです。残念ながら行くことはできないけど、僕の心は小鳥か、あるいは天使になってそこに飛んで行ってます。

いったいどんな会になるのか想像するだけでワクワクしますね。それぞれの人がどのくまくまちゃんが好きかなんて話すだけでも楽しそう。ちなみに今僕が好きなくまくまちゃんはこれかな。

a0285828_13042755.jpg


♫水いろのひかりさしこむ窓にくまくまちゃんがひとりぽつん♫ です。ちょっと歌うのには無理があるか。それはさておき窓際にひとり佇むくまくまちゃんはどれも最高。とりわけこの後ろ姿のはいいですね。よく見たらくまくまちゃんの体は楕円形。温かな膨らみのある楕円です。


くまくまちゃんで好きな絵といえば、先日高橋さんのブログでアップされていた絵も、涙が出るくらいに素敵な絵でした。

実はこの絵、昨年のクリスマスにこっそりいただいてたんですね。

a0285828_13081236.jpeg


赤い実がなったマンリョウの木のそばで、一羽の小鳥がくまくまちゃんに赤い実の贈り物をしています。あ〜、たまらない。


今では3・21(3月21日)がナイアガラ・デイとして定着し、いろんな場所でいろいろな形のお祝いがされる日となっていますが、1・16はくまくまちゃんデイとして、これから毎年何かのお祝いをしていけたらいいですね。


と、そんなことを書いていたら、赤い単車に乗ったお兄さんがやってきました。出てみると小さな小包。おひさまゆうびん舎からの郵便でした。中身はもちろん…。

これを見て、あの少女たちがどんな顔をするか、今から楽しみです。

a0285828_13062714.jpg


というわけでこれからひとりで『くまくまちゃん』を読みます。

a0285828_13064900.jpg


[PR]
by hinaseno | 2018-01-16 13:07 | 雑記 | Comments(0)

松本さんによって1番の「水いろの陽に濡れるテーブルに/きみはほおづえき/今朝の夢のつづき思い出す」に相当する3行分の歌詞が加えられたことで言葉数も整い、ようやく曲は完成に…と、行くはずだったのにそうはならなかったんですね。

原因はやはり松本さんが書いた本来の詞の行や段落分けを無視した大瀧さんの曲作りにありました。


改めて1番のサビまでの歌詞の確認を。松本さんが書いた詞はこうなっていました。


 水いろのひかりさしこむ窓に
 きみはひとりぽつん
 風にきみの顔がにじんで

 水いろの陽に濡れてるテーブルに
 きみはほおづえつき
 今朝の夢のつづき思い出す

  さあ
  あたまに帽子のせて
  でかけなさいな
  ほら外はいい天気だよ

ここを大瀧さんはこう歌うようなメロディにしたんですね。

 水いろのひかりさしこむ
 窓にきみはひとりぽつん
 風にきみの顔がにじんで
 水いろの陽に濡れてるテーブルに

 きみはほおづえつき今朝の
 夢のつづき思い出す

  さあ
  あたまに帽子のせて
  でかけなさいな
  ほら外はいい天気だよ

さて、この形で新たに書かれた3行の入った2番の歌詞を1番で作られたメロディに入れてみると、こう歌うことになります。

 水いろのひかりあふれる
 部屋に朝は悲しすぎる
 風にきみの夢がにじんで
 水いろの陽に溶けだした朝

 きみの肩のうえでやさ
 しさが小さくふるえている

 さあ
 あたまに帽子のせて
 でかけなさいな
 ほら外はあんなにいい天気だよ

1番で、本来は次の行の最初に置かれている「今朝の」という言葉を前のフレーズの最後に入れたために、2番では「きみの肩のうえでやさ/しさが小さくふるえている」と歌わなければならなくなっているんですね。

「やさしさ」が切り離されている!

いくら大瀧さんでもこれには抵抗があったようです。多少つながりがおかしくなっても(でも、不思議な面白さが生まれる)言葉を切り離してしまうことをしばしばされますが、それはあくまで文節単位。一つの単語まで切り離してしまうことは(たとえば「颱風」のように自分で書いた詞でない限り)まずやらない。


それからもう一つ、この「外はいい天気(だよ)」にはリンダ・スコットの「I've Told Every Little Star」のイントロの部分を取り入れていて、で、「I've Told Every Little Star」は最後に再びイントロのフレーズに戻るという構成になっているので、それと同じようにするにはサビを最後に持ってこない方が自然な感じがすると判断したかもしれません。

ということで、最後のサビと「きみの肩のうえで/やさしさが小さくふるえている」の2行をカットして、「水いろの陽に溶けだした朝」まで歌って最初のフレーズに戻るというパターンも考えてみたはず。でも、「溶けだした朝」で終わるのも歌ってみたらかなり不自然。


で、結局、松本さんにわざわざ考えてもらった3行をバッサリとカットして「風にきみの夢がにじんで」で終わる形にしたんですね。限られた時間の中で曲を仕上げなければならなかったので仕方がなかったんだと思います。歌詞メモに大きく×を入れたのはもちろん大瀧さんのはず。


曲を完成させたものの大瀧さんにはいくつかの不満足感が残ったので(もっといい曲になるという感触があったんでしょうね)、たぶん早い段階で、おそらく帰国してすぐくらいに曲の作り直しを始めたにちがいありません。

とりわけ気になったのがカットした3行のうちの最後の2行。「きみの肩のうえで/やさしさが小さくふるえている」の部分ですね。いい言葉だけにカットしたことにうしろめたさを感じたのかもしれません。


というわけでそれをなんとか入れようといろいろ考えて仕上げたのが「風にきみの夢がにじんで」のすぐあとに、「きみの肩のうえで/やさしさが小さくふるえている」を「小さく」を重ねてつなげるという形。言葉数を整えるために「ふるえている」を「ふるえてる」にして。で、出来上がったのがこのフレーズですね。


 きみの肩のうえで やさしさが
 小さく 小さく ふるえてる

そしてもう一度繰り返す。


 小さく 小さく ふるえてる


で、イントロのフレーズに戻る。

見事という他ないです。

それからもともとは「あんなに」が入る予定でメロディを作ったはず「ほら外はい~い~い~い~天気だよ」を「ほら外はあんなにいい天気だよ」に戻して。

もう一つ言えば、一番のサビの後に転調して半音上がる形になっているのも素敵です。


というわけで今年最初にギターで弾いているのはもちろん「外はいい天気だよ」。単純な巡回コードを使った曲なんですが、「やさしさが」の後に一瞬ポロンと出てくるディミニッシュ・コードがたまりません。でも、そこにそのコードが入るのはねらったわけでなく、たまたまなんですね。


[PR]
by hinaseno | 2018-01-15 13:08 | ナイアガラ | Comments(0)

この話もいよいよ大詰め。

本当は2回で終わりにして、「きみの肩のうえでやさしさ…」の部分は大瀧さんが考えたんだという結論にするつもりだったんですが、実はそうでなかったということで長い話になりました。あれは松本さんから出た言葉だったとは。しかも想定外の「3行」。それがきちんと証拠として残っているのだからびっくり仰天でした。


ところで昨日は終日『定本はっぴいえんど』を読んでいました。とりあえずまずは大瀧さんのインタビュー、それから松本さん、細野さんのインタビューを読みました。大瀧さんのが一番長いんですね。まあ、大瀧さんは当時の出来事をきちんと書いた手帳や、歌詞のメモなどいろんなものを持っていたので、証言としては一番信用がおけたのだろうと思います。


さて、いろいろ読んでいて、ひとつだけおっというものを見つけました。それは松本さんがロスから国際電話で歌詞を聞いた相手のこと。

僕が持っている『HAPPY END』のCDの解説や、あるいは大瀧さんの2012年のインタビューでは電話した相手は当時のはっぴいえんどのマネージャーの石浦信三さんということになっているんですが、『定本はっぴいえんど』の執筆者の『HAPPY END』の解説では電話したのは石浦さんではなく松本さんの奥さんということになっていました。


大滝がアイディアを使いはたし詞が書けないということで、松本が国際電話で自宅に電話し、夫人に『風のくわるてつと』の中で、まだ曲のついてないものを読んでもらい、それを控え、大滝に渡している。

まあ、マネージャーの石浦さんからにせよ、松本さんの奥さんからにせよ、『風のくわるてつと』に収められた形の詞が伝えられたことだけは確かなようです。


さて、改めて『定本はっぴいえんど』に掲載された「外はいい天気だよ」の歌詞の手書きメモを。

a0285828_14200896.jpg


それからこちらは『風のくわるてつと』に載っている詞。

a0285828_14180778.jpg


最後の×の部分以外は基本的にはそのままですね。漢字、ひらがなの表記もほぼ同じ。

違いはというと『風のくわるてつと』では「机」となっているのが「テーブル」に、「ほおづえついて」が「ほおづえつき」になっています。

おそらく字数を整えるために変更したはずなので、このメモは電話で伝えられたのを書き取ったそのままのものではなく、大瀧さんが曲を作り始めて、大瀧さんの意見を取り入れる中で書き換えられたものと推測できます。


大きな違いは『風のくわるてつと』の詞では最後に「さあ あたまに帽子のせて…」のサビが繰り返しがくるのですがメモの方ではカットされて、新たな歌詞が3行加えられていること。


メモで最後のサビがカットされていることに関しては、ただ単に繰り返しなので書くのを省いただけのことだろうと思っています(最初に大滝さんに渡されたメモには当然書かれていたはず)。大瀧さんが作ろうとした曲の1番の構成を見ればわかるように、最後にサビが来るからこそ必要な部分としてあの3行が書き加えられているはずなので。


ちなみにその最後のサビはこんな歌詞。1番の後に出てくるサビと少し違っています。


 さあ
 あたまに帽子のせて
 でかけなさいな
 ほら外はあんなにいい天気だよ

最初のサビの「いい天気だよ」の前に「あんなに」という言葉が入っているんですね。4文字も多い歌詞を同じメロディで歌うのは難しいのでは、と、知らない人であれば思うかもしれませんが、実はこの曲は「あんなに」が入った方が自然な形のメロディになっているんです。ところが『HAPPY END』版の「外はいい天気」でも、結局最後のサビがカットされて、「あんなに」が入っていない最初のサビだけが残ったのでそこは「い~い~い~い~」と歌っているんですね。はっきり言えばかなり不自然。

やはり大瀧さんは最後に「あんなに」を入れた形のサビがくる形の曲作りをしていたことは間違いありません。だからこそ、そのために1番と同様の形をした3行の言葉を松本さんに考えてもらう必要があったんです。


ちなみにはっぴいえんど後に作り直された「外はいい天気だよ」では、最後にサビは来ないものの、一度目のサビで「あんなに」を入れて歌っているんですね。そっちの方がもちろん自然です。


[PR]
by hinaseno | 2018-01-14 14:18 | ナイアガラ | Comments(0)

いやあ、寒いですね。今朝起きたら室温は4度。部屋に温度計を置いてから最低を記録しました。外はマイナス4度だったようです。僕の肩の上にある(はずだと思っている)「やさしさ」もぶるぶるとふるえていました。

これでは肩に上にある(はずだと思っている)「やさしさ」が凍りついてしまいそうな気がしたので久しぶりにマフラーを買いに近くのスーパーに行きました。

で、紳士服売り場をぶらぶらと歩いていたら、くまくまちゃんカラーのミニマフラーと目があって即買い。ちなみにブランドはゴールデンベア。

ほくほくした気持ちで家に戻っていざ巻こうとしたら巻き方がわからず悪戦苦闘。仕方がないのでネットで調べたら片側に穴が空いていてそこを通すことがわかりました。ということでくまくまちゃんみたいなかわいい格好でこのブログを書いています(ちなみに部屋にエアコンは付けていません。音楽のジャマなので)。


ところで例の資料、昨日の午後ようやく届きました。いやあ、すごいですね。とりあえずまず最初に分析作業を数時間。予想以上に難航。ある程度結論付けたものの、確信までは至らず昨日は終わり。今朝目が覚めて、寒いけど水色の光が差し込む中、ふと、ある対談が載っている本のことを思い出して確認。なんと、そこにはっきりと書かれていました。

ということで新年早々、うれしい発見になりました。情報をくれた方、本当にありがとうございました。

それにしても、元日の朝、天気が良くて、たまたま流れてきたフレーズから、数年来置き去りにしていたままの謎がこんなふうに解決しようとは思いもよりませんでした。


と書いてもなんのこっちゃ、ですね。

ある情報をいただいてすぐに注文したのは『定本はっぴいえんど』(1986年)。はっぴいえんど研究には必読の書と言われていますが、持っていなかったんですね。そこに掲載されていたのがこの写真。

a0285828_14554342.jpg

破りとられた紙に書かれているのは「外はいい天気だよ」の手書きの歌詞。隣のページの下には「「外はいい天気だよ」歌詞のメモ 於ロスレコーディング」というコメントがあります。


一番下の大きく×が付けられた箇所も気になりますが、まずは筆跡鑑定から。松本隆さんの字なのか、それとも大瀧さんの字なのか。

松本さんの字は個性的なので見ればすぐにわかるだろうと思っていたんですが、思った以上に難航してしまいました。

上に貼った写真には隣のページに掲載された「はいからはくち」の歌詞メモも入れたんですが、その歌詞を書いているのはもちろん松本さん。松本さんは『風街ろまん』や太田裕美さんの『手作りの画集』の歌詞カードを書いているんですが、誰が見ても松本さんの字ってわかるような字なんですね。

ただしそれは清書した段階でのもの。「外はいい天気だよ」歌詞のメモは清書ではなく、たぶん急いで走り書きされたものなので、よく見慣れた松本さんの字とは感じが違うんですね。で、確認のために大瀧さんの字をいろいろと調べてみたんですが、大瀧さんの字だという判断も、大瀧さんの字ではないという判断もできない。う~ん、困ったな、なにか特徴的な文字はないかと逐一調べて、ようやくひとつ見つけました。

それは「か」。

松本さんの書く「か」はいつも必ず右の点が下の方に打たれ、しかも左側の部分にくっつくように書かれているんですね。それに対して大瀧さんは右上に離れて打っています(普通の人はそう書きます)。というわけで「外はいい天気だよ」歌詞メモは、×が付けられた部分も含めてまず松本さんが書いたもので間違いないという結論に至ったので昨夜は眠りにつきました。


今朝目が覚めて、できればもう少し確証のようなものがあればと考えていたとき、ふと、そういえば『風街茶房』に載っている大瀧さんと松本さんの対談で、確か歌詞のメモに関する話があったことを思い出しました。

で調べてみたらなんと! はっぴいえんどのメンバーの記憶はいい加減なものが多いという話からです。ちなみに対談が行われたのは2000年2月21日。


大瀧:覚え悪いんだよ、みんな。全然ダメ(笑)。
松本:誰も信用できない(笑)。
大瀧:俺の話を聞いていれば間違いないよ。手帳つけているからね。『定本はっぴいえんど』に書いているはっぴいえんどのスケジュールなんて、全部おれの手帳を写したんだから(笑)。あと、今日持ってくれば良かったんだけど、松本の手書きの詞も全部残ってるんだよ。「はいからはくち」、「乱れ髪」、「外はいい天気」……みんなあるんだよ。銀行のメモ用紙とかその辺のノートに書いたやつ(笑)。それ全部集めてまとめたんだけど、まとめるとモノって目の前から消えるもんだね。

ということで、『定本はっぴいえんど』に載っていた「外はいい天気だよ」は、大瀧さんが松本さんから渡された松本さん手書きの詞であることはまちがいがなさそうです。


これが確かめられたということで、いよいよ詞の分析ということになります。ポイントはもちろん×が付けられた最後の3行ですね。そこには『風のくわるてつと』にはなかった言葉が書かれています。

そして問題の最後の「2行」に書かれていたのはこの言葉でした。


 きみの肩のうえで
 やさしさが小さくふるえている



[PR]
by hinaseno | 2018-01-12 14:56 | ナイアガラ | Comments(4)

「2行」問題は資料が届くまでおいておくとして、とりあえず確かなことは大瀧さんとしては『HAPPY END』に収録された「外はいい天気」には納得のいかないものがあって、でも曲としては気に入っていたので、はっぴいえんど解散後に曲に手を入れて、最後に「きみの肩のうえでやさしさが、小さく小さくふるえてる」を入れた形のものを完成形としてとらえていたにちがいないということ。そしてそのタイトルは松本さんの本来の詞に使われている「外はいい天気だよ」。

はっぴいえんど解散後ははっぴいえんど時代の曲をあまり歌わなかった大瀧さんが、唯一「外はいい天気だよ」だけはいろんなライブで歌い続け、さらに『DEBUT』にきちんとした形で収録したことを考えると、大瀧さんが「外はいい天気だよ」を作品としてかなり気に入っていたことがわかります。

確かにこれは『ロンバケ』の作品に並ぶほどの名曲です。


この曲を名曲たらしめている要因は、なんといっても大瀧さんのその作曲法。本当にすごいなと思います。

前回も書いたようにこの曲は詞先。

松本隆さんは最近のインタビューで、詞先で曲をつくれる人があまりいなくなったと何度も語っていました。大瀧さんや細野さん、あるいは筒美京平さんと仕事をしていたときには詞先の作品が多かったけど、それには作曲者の能力が高くないとできないんだと。


ただ、大瀧さんの場合、普通の詞先のやり方ではないんですね。詞をもらっても多くの場合すぐに言葉を分解して、言葉数だけを確認することから始めます。例えば「風にきみの 顔がにじんで」のフレーズであれば「3・3・3・4」として。

ということなのでしばしば本来の詞にあったはずの言葉のつながりが切り離され(ずらされ)、離れていたはずの言葉がくっついて、不思議な世界が生まれる。きっと松本さんもびっくりだったでしょうね。


ちょっと具体的に。

いずれにしても、まず最初にあった詞は、まちがいなく『風のくわるてつと』に収録されていたもののはずなので、改めてその詞を。


 水いろのひかりさしこむ窓に
 きみはひとりぽつん

 風にきみの顔がにじんで……

 水いろの陽に濡れる机に
 きみはほおづえついて
 今朝の夢のつづき思い出す

 さあ
 あたまに帽子のせて
 でかけなさいな
 ほら外はいい天気だよ

 水いろのひかりあふれる部屋に
 朝は悲しすぎる

 風にきみの夢がにじんで

 さあ
 あたまに帽子のせて
 でかけなさいな
 ほら外はあんなにいい天気だよ

松本さんは曲が付けられることを想定して詞を書いているので、曲のイメージはこうだったはず。


〈1番〉水いろのひかりさしこむ窓に
    きみはひとりぽつん
    風にきみの顔がにじんで

〈2番〉水いろの陽に濡れる机に
    きみはほおづえついて
    今朝の夢のつづき思い出す

〈サビ〉さあ
    あたまに帽子のせて
    でかけなさいな
    ほら外はいい天気だよ

〈3番〉水いろのひかりあふれる部屋に
    朝は悲しすぎる
    風にきみの夢がにじんで

〈サビ〉さあ
    あたまに帽子のせて
    でかけなさいな
    ほら外はあんなにいい天気だよ


ところが大瀧さんは松本さんがイメージした形を見事なまでにぶっ壊しているんですね。いや、壊したというよりも実際には少しずらしただけなんですが。

驚くのは本来は〈2番〉の1フレーズ目になるはずの「水いろの陽に濡れる机に」を〈1番〉の最後に入れていること。で、〈1番〉の始まりの「水いろのひかりさしこむ窓に きみはひとりぽつん」のフレーズを「きみはほおづえついて 今朝の夢のつづき思い出す」の部分で使っている。切れ目が変わっているんですね。そのために「今朝の」と「夢」が切り離されて「つきけさの」という不思議な言葉が生まれたり…。

一応大瀧さんが歌った形で詞を書いてみます。


 水いろのひかりさしこむ
 窓にきみはひとりぽつん
 風にきみの顔がにじんで
 水いろの陽に濡れる机(テーブル)に

 きみはほほづえつき今朝の
 夢のつづき思い出す

 さあ
 あたまに帽子のせて
 でかけなさいな
 ほら外はいい天気だよ

大きく見ればここまでが1番ということになるでしょうか。問題は2番ですね。


 水いろのひかりあふれる
 部屋に朝は悲しすぎる
 風にきみの夢がにじんで

ここまで1番同様に歌っても、最後のサビに行くためには、1番の「水いろの陽に濡れる机(テーブル)に/きみはほほづえつき今朝の/夢のつづき思い出す」の3行分に当たる歌詞が足らない。

ということで(松本さんを交えて?)なんらかの試行錯誤があったはず。もちろんそれが例の「2行」問題にかかわる話。


でも、結局大瀧さんは1番と同じ形の2番を作らずに「風にきみの夢がにじんで」の部分を1番の「風にきみの顔がにじんで」とは違うメロディにして、松本さんの本来の詞にあった最後のサビを歌わない形の曲に仕上げました。


[PR]
by hinaseno | 2018-01-10 15:46 | ナイアガラ | Comments(1)

昨日、このブログに書いたことに関して、ある方から貴重な情報をいただきました。実はこの話は昨日と今日の2回で終える予定でいたのですが、確認のためちょっと時間がかかりそうです。そして予定していたストーリーもどうやら変わりそう。でも、こういうのがあるから面白いんですね。肩の上で、小さくふるえていた「やさしさ」は、もしかしたら天使だったかもしれない。


というわけで結論(というほどのものでもなかったけど)部分はちょっと先送りして、ここでちょっと興味深い音源を紹介します。実は1975年7月29日(前日7月28日は大瀧さんの27歳の誕生日)に放送された「ゴー!ゴー!ナイアガラ」で「外はいい天気(だよ)」のライブ・バージョンがかかっているんですね。こんな歌詞になっているんです。


 水いろの光 あふれる
 部屋にきみは ひとりぽつん
 風にきみの 顔がにじんで
 水いろの陽に ぬれてるテーブルに
 きみにほゝづえつき 今朝の
 夢のつづき おもい出す
 さあ 頭に帽子のせて
 出かけなさいな
 ほら 外はあんなにいい天気だよ

 水いろの光 さし込む
 部屋に朝は 悲しすぎる
 風にきみの 夢がにじんで
 きみの肩のうえで やさしさが
 小さく 小さく ふるえてる
 小さく 小さく ふるえてる

なんと最後に「きみの肩のうえでやさしさが、小さく小さくふるえてる」が入っているんですね。ライブということで(バックはシュガーベイブ!)アップテンポのアレンジがなされていますがメロディは「外はいい天気だよ ’78」と全く

同じ。一番の「水いろの光 さし込む」と2番の「水いろの光 あふれる」が逆になっている以外は歌詞もほぼ同じ。

このライブ、どうやら1974年7月11日に公開録音された文化放送の「三ツ矢フォークメイツ」で演奏されたもののようです。74年といえば『HAPPY END』の翌年。たった1年で大瀧さんは歌詞を変えたバージョンを作っていたんですね。78年になって『DEBUT』に収録するために作り変えたわけではありませんでした。


さて、ここでちょっと「外はいい天気」が作られた時の状況を。

「外はいい天気」が収録された『HAPPY END』はアメリカで制作されたんですが、大瀧さんは実はアメリカに出発する日(1972年10月4日)の前日までファーストアルバムを制作していました。作業はアメリカに出発する当日の朝まで続いていました。ということで、新しい曲は何一つ用意していないままアメリカに行ったわけです。たぶん能力もエネルギーも使い果たしていて、とても新しい曲を作れる状態ではなかったはず。で、おそらくアメリカに着いてから松本さんに何か曲になっていない詞はないかと訊いたんでしょうね。

で、松本さんは国際電話でマネージャーに連絡を取って、すでに作詞を終えていた未発表の作品を聞き取って大瀧さんに渡したんですね。それが「田舎道」と「外はいい天気(だよ)」。いずれも翌月に発売される『風のくわるてつと』に収録されているので、渡された歌詞は『風のくわるてつと』に載っているものと同じはず。ただ、聞き取りの過程でいくつかの違いが生じていたかもしれませんが。

というわけなので「外はいい天気」はもちろん詞先。相当あわただしい中で曲が作られたのはいうまでもありません。


ここで大瀧さんのちょっとおもしろい証言を。例の『KAWADE夢ムック 増補新版 大瀧詠一』に収録されているインタビュー。聞き手は湯浅学さん。


湯浅:はっぴいえんどの3枚目をレコーディングする時は、すっからかんな状態でしたか。
大瀧:そう、また曲を作れったってねえ。作業が終わってその日に飛行場だよ、売れっ子でもあるまいし。しかも、初めての外国だから。
湯浅:じゃあ「田舎道」も向こうで作った?
大瀧:うん。「外はいい天気」も詞がなくて、松本が国際電話で送ってもらったんだけど、そしたら詞が2行長かった。どちらも詞が先なんだけどね。


この話で気になっていたのは「松本が国際電話で送ってもらったんだけど、そしたら詞が2行長かった」の言葉。この「2行」の秘密を解明する手がかりが、どうやら昨日いただいた情報の中にありそうなんですね。


[PR]
by hinaseno | 2018-01-09 13:04 | ナイアガラ | Comments(4)

今朝はとてもいい天気で、水色の光が差し込んでいます。

という書き出しで、昨日書いていたんですが、アップができませんでした。今朝は雨。


ところで今年の元日の朝はとてもいい天気で、窓からは水色の光が差し込んでいたので、自然にある曲のメロディが流れてきました。


 水いろの光 さし込む 
 部屋に君は ひとりぽつん

いや、「部屋」ではなく「窓」だったっけ。

曲はもちろん大瀧さんの「外はいい天気」、いや「外はいい天気だよ」、いや正確には「外はいい天気だよ ’78」…。

何を言ってんだかって感じですが、実はこの大好きな曲のことをこれまでずっとあいまいなままにしていたのでここでちょっと整理しておこうと思います。

この曲が作られたのははっぴいえんど時代。1973年2月に発売されたはっぴいえんどの3枚目のアルバム『HAPPY END』に収録されました。曲のタイトルは「外はいい天気」。

YouTubeに『HAPPY END』の全曲の音源があったので貼っておきます。「外はいい天気」は23:14から。




作詞はもちろん松本隆さん。歌詞はこうなっています。


外はいい天気

 水いろのひかりさしこむ窓に
 きみはひとりぽつん
 風にきみの顔がにじんで
 水いろの陽に濡れる机(テーブル)に
 きみはほほづえついて
 今朝の夢のつづき思い出す
 さあ
 あたまに帽子のせて
 でかけなさいな
 ほら外はいい天気だよ
 水いろのひかりあふれる部屋に
 朝は悲しすぎる
 風にきみの夢がにじんで

で、1978年8月に発売されたアルバム『DEBUT』で、オリジナルのメロディと歌詞を少し変えてこの曲をカバーするんですね。タイトルは「外はいい天気だよ ’78」。78年発売のアルバム用にカバーしたので「’78」が付けられていますが(『DEBUT』には他にも何曲か「’78」が付けられています)、オリジナルは「外はいい天気」だったのに「だよ」という言葉が添えられているんですね。クレジットは作詞松本隆となっています。


外はいい天気だよ ’78

 水いろの光 さし込む
 部屋にきみは ひとりぽつん
 風にきみの 顔がにじんで
 水いろの陽に ぬれてるテーブルに
 きみにほゝづえつき 今朝の
 夢のつづき おもい出す
 さあ 頭に帽子のせて
 出かけなさいな
 ほら 外はあんなにいい天気だよ

 水いろの光 あふれる
 部屋に朝は 悲しすぎる
 風にきみの 夢がにじんで
 きみの肩のうえで やさしさが
 小さく 小さく ふるえてる
 小さく 小さく ふるえてる

一応「外はいい天気」も「外はいい天気だよ ’78」も歌詞カードをそのまま写しています。漢字・ひらがな表記だけでなくいくつか言葉も変えられていますね。ただ「外はいい天気」では歌詞カードでは「ほほづえついて」となっていますが、大瀧さんは「ほほづえつき」と歌っていたりもします。大瀧さんが松本さんの書いた通りに歌わないことがときどきあるのは以前も指摘した通り。


2つの歌詞でまず違っているのは「外はいい天気」では水色の光がさしこんでいるのは「窓」なのに「外はいい天気だよ ’78」では「部屋」になっていること。

それから「外はいい天気」では「風にきみの夢がにじんで」で終わるのに、「外はいい天気だよ ’78」ではそのあとにこんな言葉が続くんですね。


 きみの肩のうえで やさしさが
 小さく 小さく ふるえてる
 小さく 小さく ふるえてる

ちなみに僕は「外はいい天気だよ ’78」を最初に聴いて、はっぴいえんどの『HAPPY END』を手に入れたのはずいぶんあとだったので、「窓」にも「風にきみの夢がにじんで」で終わることにもずいぶん戸惑いました。その後も聴いていたのは「外はいい天気だよ ’78」の方で、耳に馴染んでいるのは断然こちらの再録音バージョン。


さてさて、タイトルも含めていろいろと気になることが多いので、いくつか確認を。まずは松本隆さんの詞(詩)を収めた『風のくわるてつと』(1972年11月刊行)を見てみました。『風のくわるてつと』は『HAPPY END』が発売される前年に出ているんですね。ということはまだ曲になる前の詞ということになります。で、タイトルはなんと「外はいい天気だよ」。「だよ」が付いているんですね。

詞はこうなっています。改行等、そのまま。


外はいい天気だよ

 水いろのひかりさしこむ窓に
 きみはひとりぽつん

 風にきみの顔がにじんで……

 水いろの陽に濡れる机に
 きみはほおづえついて
 今朝の夢のつづき思い出す

 さあ
 あたまに帽子のせて
 でかけなさいな
 ほら外はいい天気だよ

 水いろのひかりあふれる部屋に
 朝は悲しすぎる

 風にきみの夢がにじんで

 さあ
 あたまに帽子のせて
 でかけなさいな
 ほら外はあんなにいい天気だよ


詞に関していえば、ほぼ『HAPPY END』と同じ。水色の光が差し込むのは「窓」。どうやらそこは大瀧さんが(たぶん歌いやすさも考えて)変えたようです。

それから注目すべきは「外はいい天気だよ ’78」の最後に出てくる「きみの肩のうえで やさしさが…」の部分がないこと。どうやらそこは大瀧さんが書き足した可能性が高そうです。そしてこの曲の魅力の秘密もそのあたりに隠されていることがわかってきました。


[PR]
by hinaseno | 2018-01-08 10:08 | ナイアガラ | Comments(4)

あいかわらず自作の太田裕美さんのCDを聴く日々。

昨年の「今年の10曲」に選んだ「海が泣いている」と同じくらいに心に沁みるのが「煉瓦荘」という曲。冒頭はこんな歌詞。「余白」が出てくるってことで以前も紹介しましたね。


 あれからは詩を書き続けた
 哀しみにペン先ひたして
 想い出で余白をつぶした
 君の名で心を埋めた

 井の頭まで行ったついでに
 煉瓦荘まで足をのばした

詞の舞台になっている煉瓦荘があるのは井の頭。僕が人生で初めて「井の頭」という言葉を耳にしたのは間違いなくこの曲。でも、それがどこかなんて調べないまま聞き流していました。もともと歌詞カードもあまり見ない方なので「いのかしら」というのを地名として聞き取っていなかったように思います。

なんとなく「井の頭」のことが気になっていたジャストタイミングで放送されたのが『ブラタモリ』の「東京・吉祥寺」でした。そう、井の頭は吉祥寺の近く。井の頭公園も吉祥寺駅からすぐのところにあるんですね。


実は昨年、東京に行ったときに吉祥寺にも行けないだろうかと考えたんです。井の頭公園にも行ってみたかったし、なによりも吉祥寺にある夏葉社を訪ねてみたかったんですね。でも、時間的なことから(どうせ行くのならたっぷりと時間を取って、あのあたりの本屋や木山捷平の家にも行きたかったので)結局あきらめました。

そういえばおひさまゆうびん舎さん一行が世田谷ピンポンズさんの5周年ライブのために東京に行ったときに確か夏葉社にも行ったんですね。そのおひさまゆうびん舎の窪田さんが大好きな小山清も吉祥寺に住んでいました。というわけで井の頭公園にもよく行ってたんですね。世田谷ピンポンズさんの「早春」という曲の歌詞の下敷きになった「春」という随筆にも井の頭公園が出てきます。


 三月に入ったらいっぺんに春になった。窮屈な冬の上衣をぬぎ捨てたら身も心も軽くなった。ホッとした。ひさしぶりで洗濯をした。私が洗濯をやるなんてのはめずらしい。洗濯をするのはいいことだと思った。これからもときどき洗濯をしたり部屋の障子をはりかえたりして気を変えようと思う。こないだ井の頭公園へ行ったら紅梅、白梅、臘梅が咲いていた。白梅と臘梅の区別はそのとき一しょに散歩した友人から初めて教えられたのである。友人はとある家の門口に咲いていた沈丁花を見てその家の人に一枝無心した。その家の人は気持よく、わざわざ莟のついている枝をえらんで手折ってくれた。四五日して友人の家に遊びに行ったらコップに挿してあって莟は開いていた。友人は最近上京して新居を営んでいる人である。私はいま信州から出てきた若い友人と同居している。私も貧しいがその人も貧しい。その人はこれで歩くのだと云って買ってきた新しい朴歯の下駄を私に見せた。希望を見失わずにやって行きたい。

ピンポンズさんは「井の頭公園」を「近くの公園」と変えて歌っています。おひさまゆうびん舎という場がなければ絶対に生まれなかった曲なので、「近くの公園」は大手前公園や、あるいは動物園のあるお城近くの公園をイメージしても構わないし。それにしてもひさしぶりに「早春」を聴いたら、やっぱりいい曲ですね。少しずつ「早春」が近づいているので、これから何度も聞くことになりそうです。


そういえば夏葉社の島田さんは高知新聞のK+という情報誌に「読む時間、向き合う時間」というのを連載しています。これがいいんですね。ネットでも読めるのでそれを印刷したり、印刷しそびれたものはおひさまさん経由でいただいて読んでいます。

今まで書かれた中で一番好きなのは『ことばのしっぽ』という本の話。冒頭が泣けるんですね。


 近所の公園で、娘が眠るベビーを押したり戻したりしながら考え事をしていると、砂場で遊んでいた二歳半の息子が駆け寄ってきて、ぼくに「どした?」といいました。そんなふうに話しかけられたことはこれまでありませんでしたから、ぼくは仕事の憂いのこともすっかり忘れてしまい、笑ってしまいました。
 家に帰り、妻にこんなことがあったと話をすると、妻も破顔一笑して喜びます。ぼくも思い返すたびにうれしくなります。

島田さんの自宅がどこなのかは知らないのですが、これを読んだときにすぐに頭に浮かべたのが井の頭公園でした。まあ、たぶんもっと小さな公園なんでしょうけど。


ところで吉祥寺からそう遠くないところに住んでいた木山さんも吉祥寺には何度も来ています。もちろん井の頭公園にも。たとえば昭和14年2月13日の日記。この日は芥川賞の発表の日。このとき木山さんの「現実図絵」が候補の一つに入っていました。でも受賞したのは中里恒子の『乗合馬車』。というわけで、木山さんはこんなことを書いています。


何となくさびしさ身にしむる日。家を午後四時出て井の頭公園の鯉でも見たき心あり。電車にのりて吉祥寺に降りる。田畑君訪問。田畑松子夫人の家始めてなり。不在。亀井を訪問。この家も始めて。夕飯の馳走になり、将棋をさす。彼は弱し、十戦位さしたが、二度敗けた。午後九時頃辞去。

「亀井」というのはもちろん亀井勝一郎。吉祥寺に行ったときに訪ねた「田畑君」ってだれだろうと思っていたときに、たまたまやはり昨年暮れに手に入れたまま読んでいなかった上林暁さんの『晩春日記』の最初の作品「風致区」(昭和20年)を読んでいたらびっくり。なんと吉祥寺の駅を降りた場面から話が始まって井の頭公園にも行って、そして「田端君」という名前の人物が登場するんですね。田端君は3年前に亡くなったと。

「田畑君」と「田端君」。漢字は違っているけど同一人物のような気がしてちょっと調べてみました。どうやら木山さんの日記に何度も登場する田畑修一郎という人。仲の良い友人の一人だったようですね。『鳥羽家の子供』という作品は芥川賞の候補になったこともあって、かなり将来を嘱望されたようですが、昭和18年7月24日の木山さんの日記に「田畑修一郎急逝」と書かれていました。亡くなったのは前日の7月23日。取材のために行っていた岩手県の盛岡市で急性盲腸炎になって亡くなったんですね。享年39歳。


こういうのも縁なので、機会があったら田畑修一郎の作品を読んでみようと思います。


[PR]
by hinaseno | 2018-01-06 11:48 | 雑記 | Comments(0)

雨と小雨と雨崎と


今年最初に読んだのは昨年暮れに出た内田先生の『ローカリズム宣言』でしたが、その本と同じ日に買ったのが小泉今日子さんの『小泉放談』でした。『小泉放談』のことはこの日のブログに書いていますね。本が出るのを楽しみにしていたらようやく。こちらは年末から少しずつ読んでいます。

対談相手はすべて女性。50歳を迎える小泉さんが、一足先に50歳を迎えた女性に50歳を迎えた時の話を聞くという趣向ですね。全部で25人。今は8人目を読み終えたところ。

読んだ中で一番面白かったのは樹木希林さんとの対談でしょうか。樹木希林さん、改めてすごい人だなと思いました。


江國香織さんとの対談では小泉さんと江國さんのちょっとした縁の話が。

小泉さんが飼っていた猫に「小雨」という名前をつけていたのは有名ですが、実は江國さんの飼っていた犬の名前がなんと「雨」。江國さんがその犬を店で見つけた日がちょうど雨の日だったので「雨」にしたと。

小泉さんもやはりペットショップに行った帰りに、パラパラっと優しい小雨が降ってきたので小雨にしたそうです。こういうのっていいですね。


雨といえば。

最近は本が本当に読めなくなってきて、まあ原因はいろいろ考えられるけど、一番の原因がネットであることはまちがいがありません。そろそろどうにかしなければと考えているんですが、何か調べようと思ったらネットって便利なんですね。本を読んでいたときに気になる言葉や、とりわけ知らない地名なんかが出てくると、読むのを中断してネットでググったりしてしまうんですね。便利といえば便利ですが、そのついでにいろいろと読んでしまったりするうちにあっという間に時間が経ってしまう。想像の世界だけでとどめておくほうが正しい読み方なんだろうと思いつつ、ついつい。


そういえば河野さんのトークイベントがきっかけで久しぶりに池澤夏樹の『スティル・ライフ』を読み返したんですが、わからない言葉が出てくるとついつい調べてしまいました。たとえばチェレンコフ光とか。こんな光だったんだと初めて知りました。

それから主人公が毎年春になると行っていた雨崎という場所。小説では主人公がある日、たまたま地図を見ていたときにこの地名を見つけて興味を持ったのがきっかけ。県名は書かれていなくて、海に沿って南の方に走る電車に乗って、で、電車を降りてバスに乗ってしばらく行ったところから海に沿って歩いた場所にあると。

想像上の場所かもしれないと思って調べたら、雨崎は実在したんですね。神奈川県の三浦半島の先の方。電車は京急久里浜線のようです。

残念ながらGoogleマップで海岸をバーチャルウォークすることはできなかったけど、写真を見たら『スティル・ライフ』で描写しているとおりでした。池澤さん、雨崎に行ったことがあるんでしょうね。


というわけで、こういうのを調べるだけで30分はかけてしまうことになりました。う~ん、どっちがいいんだろう。


[PR]
by hinaseno | 2018-01-05 14:59 | 文学 | Comments(0)