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by hinaseno
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お先にどうぞ


昨日の朝、ネットにつないだら、かまやつひろしさん(ムッシュ)の訃報が目に飛び込んできました。体がかなりお悪いのは知っていましたが、でも残念な気持ちでいっぱいです。


考えてみたらこのブログではついひと月ほど前にかまやつさんのことを書きました。最近はずっと小泉今日子さんのことを書いていますが、例の「快盗ルビイ」の話を書いていたときに何度も紹介していたのがこのCDでした。

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英題は「EIICHI OHTAKI Song Book Ⅱ」、邦題は「大瀧詠一作品集 VOL.2 (1971-1988)」。邦題にあるように、このCDは大瀧さんが他のアーティストに提供した作品を集めたもの。1988年の、歴史的にはこの作品の最後の作品が小泉今日子さんに提供した「快盗ルビイ」でした。で、1971年の最初の作品は金延幸子さんの「時にまかせて」。ただしこれはプロデュースのみということなのでボーナストラックの扱い。実質的に最初の詞・曲を提供した曲は1975年にかまやつひろしさんが歌った「お先にどうぞ」でした。CDの曲目解説で大瀧さんはこんなことを書いています。


 ムッシュの軽いロカビリー・スタイルのボーカルは、やはりあの当時の人でなければ出ない味があり、私個人としては詞曲の〈提供曲・第一号〉という記念的なこともあり、演奏・歌・コーラスを含めてかなりの〈お気に入り〉の楽曲です。この作品集を〈歴史的〉なものにするため、この曲で始めるのパターンも考えたのですが、今回はレディー・ファーストで女性陣を先頭に持ってきました。

残念ながらこの曲はYouTubeにないのでリンクできませんが、曲調は大瀧さんお得意の、大瀧さんが大好きな〈お囃子ソング〉。♫お先にどうぞ どうぞお先に♫というお囃子が何度も繰り返されます。こんな歌詞。


 お先にどうぞ どうぞお先に
 お先にどうぞ どうぞお先に
 お先にどうぞ どうぞお先に
 お先にどうぞ

 8つの春に恋をした それがぼくの初恋さ
 だけど 破れた恋心
 それもぼくが内気なせい

 16の頃 青春を賭けて燃やしたあの恋も
 夢もはかなく 消え失せた
 それもぼくが照れ屋のせい

 先を急ぎすぎて 遅れをとったこのぼくは
 ぽつんと一人 ただただ佇むだけ

 32にもう間近 あいつもこいつも妻帯者
 ぼくはいまだに 一人者
 それもぼくが内気なせい
 お先にどうぞ どうぞお先に
 お先にどうぞ どうぞお先に

この詞に関してアルバムのプロデューサーからはもっとドラマチックな内容の詞にという要望があったようですが、大瀧さんが書いたのはコミカルなブロークン・ラブソング。で、こんな言葉。


ムッシュは「スパイダースからはマチャアキや井上順と有名になって行き、オレだけが残ったというような歌だね」などと笑っておられたのを記憶しています。皮肉にもこの後、残ったのは〈このワタシ〉だけだったという、笑うに泣けない歴史的事実が待っていようとは夢にも思っていませんでしたが。「お先にどうぞ」と言って自分が残り、「ロング・バケーション」と言ってその後長く休んでしまうという、ナント、自作のタイトルに影響を受けやすいミュージシャンなのでしょうか、ワタシは。

そういえば小泉今日子さんはかまやつひろしさん作曲の「やつらの足音のバラード」(テレビアニメ『はじめ人間ギャートルズ』のエンディングテーマ)をカバーしているんですが、これが素晴らしいんですね。


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by hinaseno | 2017-03-03 15:14 | 音楽 | Comments(0)

明後日を見て進む


最近、「明後日」(あさって)という言葉に反応するようになってしまいました。そういえばさっき、ある約束を今週の土曜日にということに決めたら「では、明後日の土曜日に」と言われて、おお、明後日! と思ってしまいました。たいした用事ではないけど。


きっかけは小泉今日子さんでした。以前、武蔵新田の話の最後だったか小泉さんの「未来」のことを書きましたがそれにつながる話。

実は彼女、昨年、舞台、映像、 音楽、出版などを企画製作するプロジェクトを立ち上げて、その組織名が明後日(あさって)。付けたのはもちろん小泉さん。実際には小泉さんといっしょにプロジェクトを運営している女性の名前が明日子ということで、今日子、明日子ならば明後日になったみたいですが、でもいい名前ですね。

ここのほぼ日に載っている糸井重里さんとの対談で、糸井さんがそれに触れています。


糸井:小泉さんが新しく作った組織の名前が「明後日」(あさって)というらしいですね。
小泉:はい。偶然、今日と明日、で揃ったから、名前は「明後日」がいいかなと思ってつけたんです。「今日子」は、2人ほど会ったことあるんですよ。岸田今日子さんとか宮下今日子ちゃんとか。でも「明日子」は、はじめて会った! と思って。
糸井:ぼくは、小泉さんが演出もやるという話と、それから、組織名が「明後日」だというのを前にちらっと聞いたときに、えらく感激しちゃってさ。
小泉:本当?
糸井:うん。つまり、明後日が見えない明日ってないんだよね。それに最近気づいたんです。みんな明日のことは考えられるんですよ。でも、ひとつ先の明後日が目に入ってこないと、明日のことにつながらないんですよね。
小泉:ねぇ。あまり遠すぎる未来はまた違うし。だから、明後日くらいを見ているのがいいかなと思ってつけました。それと、音もいいなって。音だけ聞くと何語かわからない感じが。
糸井:センスがいいなあと思いました。あと、悪口として通用するのもいい。
小泉:そう、「明後日の方向を向いてる」とかね。なんか自分を卑下する感じもあって。
糸井:そうそう。本当に見事だなと思ってます。
小泉:ありがたい。

「未来」「未来」とか声高に語っているくせに、目先のことばっかり考えている(考えさせようとしている)人たちが多くてうんざりしているときに、小泉さんの「あまり遠すぎる未来はまた違うし。だから、明後日くらいを見ているのがいいかな」という視点はとても新鮮でした。「音もいい」というのも同感です。先のことはよくわからないことだらけですが、明日よりももう一日伸ばした明後日くらいのことを見すえて物事を考えるのがいいかなと。


話はころっと変わりますが、今読んでいるのは中村明さんの『小津映画 粋な日本語』(ちくま文庫)という本。中村明さんといえばなんといっても小沼丹の研究者の第一人者で、講談社文芸文庫から出ている小沼丹の本の解説をすべて書かれています。中村明さんのことは日本でいちばんの小沼丹ファンだと思っているたつののYさんから教えてもらって、中村さんのラジオの放送を聞いたり『名文』を読んだりしていました。その中村さんが実は小津の映画の大ファンで、『小津の魔法つかい』という本を出されていることを知ったのはつい最近のことでした。で、その『小津の魔法つかい』を加筆修正して文庫本となったのが『小津映画 粋な日本語』。川本三郎さん以外、あまり映画評論は読みませんが、これは楽しく読んでいます。

で、一昨日読んだところに「明後日」が出てきて思わず反応してしまいました。それは『秋日和』のワンシーンのセリフ。しゃべるのは岡田茉莉子さん。この映画の岡田茉莉子さんはとにかく最高。友人の司葉子にこんな言葉をぶつけます。


「ナンダ、まだおこってンの? おこってろおこってろ。今日も明日も明後日も」


ああ、あのシーンとすぐに思い起こすことができます。言葉のリズムもいいですね。悩んでいる友人を突き放すような言葉ですが、けっしてそうじゃない。言われた側も、明後日まで怒り続けている自分のことを考えると、怒っているのがばからしくなってくるような言葉。


ところでこの言葉を見つけた一昨日の3月1日は姫路のおひさまゆうびん舎の6周年の日。ということで、この言葉をちょっと借りて、明日も明後日もおひさまが続くことを願っています、とのメッセージを送りました。明後日来る人のために頑張ってください。明後日のことと考えたら、ちょっとくらい手を抜けるしね。


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by hinaseno | 2017-03-02 15:09 | 雑記 | Comments(0)