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by hinaseno
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いよいよ今日がこのシリーズの最終回。
いつものことながら、こんなに長くなるとは思ってもみませんでした。前置きが長いんですね。
で、今日も、昨日予告した曲を紹介する前に、ちょっと長い前置きを。なぜ、CDに入っているのにわざわざレコードを買いに行ったかということです。

大瀧さんの音楽に出会って、新たな何かに目覚めた(確かに目覚めました)僕は、大瀧さんの過去のものも含めて、大瀧さんの周辺の人たちのレコードをどれも聴きたくなったわけです。でも、当然それらを全部買うことなんてできません。で、当時利用したのが”貸しレコード”というものでした。そこで何枚もレコードを借りてきてはカセットテープに録音して聴く。
当時、LPを買ってたのは松田聖子とサザンオールスターズくらいで、あとは全部貸しレコードで借りてきて聴いていました。『ナイアガラ・トライアングルVol.2』も最初に聴いたのは貸しレコードでした。
もちろんその後気に入ったものはレコードを買ったり、あるいは何年かたってCDになったものを買っては、録音したテープを処分していったのですが、それでも大量のテープが残っていました(きっと僕だけではないと思います)。で、多くの人たちと同じように、それを聴くものがなくなって全て処分したという...。

大瀧さんに関するものは、ほとんどレコードやCDを買ったのですが、ある1枚のレコードだけは、きちんとした形でCDになっていないことに気づいたんです。今年、それが発売されて30周年であるにもかかわらず。
今年30周年といえば『ナイアガラ・トライアングルVol.2』ですが、同じ年にもう1枚、「Vol.2」と付されたアルバムが出ていたんですね。
a0285828_932094.jpg『Niagara CM Special Vol.2』です。僕が最高に好きな大瀧さんの一人多重コーラスが聴かれる曲はこのアルバムのB面の1曲目に収められています。このアルバムのために作られたテーマソングですね。
このアルバムに収められたCMソングは「A面で恋をして」と「風立ちぬ」以外は『ロンバケ』前夜に作られたものばかりで、『ロンバケ』の空気がいっぱいなんですね。大瀧さんの過去のアルバムよりもこれを何度も聴いていました。もちろん録音したテープで。特に「CM Special Vol.2」のテーマは大好きで、よく口ずさんでいました。
その後、何度かレコード屋さんでこのレコードを見ては、レコードを買おうかなと手にとって迷った場面を今でも鮮明に覚えています。でも、結局買いませんでした。
で、後に、『Niagara CM Special Vol.1』といっしょになった『Niagara CM Special (Special Issue)』というCDが出ます。これは出てすぐ買ったように思います。「CM Special Vol.2」のテーマももちろん収められています。
『Niagara CM Special』はその後1995年に、未発表の音源を含めたCDが出ます。それにも「CM Special Vol.2」のテーマは入っています。
ところが2007年に出た『Niagara CM Special Vol.1』の30周年記念版である『Niagara CM Special Vol.1(3rd Issue)』では、『Niagara CM Special Vol.2』のいくつもの曲がはずされます。「CM Special Vol.2」のテーマも。まあ、当たり前と言えば当たり前で、それは『Niagara CM Special Vol.1』の記念盤ですから。そこには聴いたこともないような貴重な未発表作品が収められています。たとえば最後に収められた「スパイス・ソング」(後に、ゴスペラッツによってカバーされた曲)では、Jack Tonesのコーラスを聴くことができます。
ただ、現行のアルバムでは『Niagara CM Special Vol.1(3rd Issue)』が最新ですので、これだけ聴いた人は、あの素晴らしき「Big John」も「出前一丁」も「Lemon Shower」も「レモンのキッス」も知らないことに。そして何よりも素晴らしい「CM Special Vol.2」のテーマも知らないままに。
大瀧さんの30周年アニバーサリー・シリーズは再来年の『EACH TIME』で終了することになっています。今年30周年であった『Niagara CM Special Vol.2』は、目を向けられることなくこのまま埋もれてしまうのでしょうか。それではあまりにももったいないように思います。ここには『ロンバケ』の原石のようなCMソングと、『ロンバケ』と『ナイアガラ・トライアングルVol.2』を作り終えた直後の、高揚感にあふれた作品である「CM Special Vol.2」のテーマが含まれているのですから。
そんなことを考えると、居ても立ってもいられなくなって、絶対に30周年である今年中に買っておかなくてはと、神戸まで買いに行ったんです。

というわけで、前置きが長くなりましたが「CM Special Vol.2」のテーマを。YouTubeには音源がありませんでしたので、これも作りました。
この曲の何がいいかって言えば、もちろんコーラスの素晴らしさもあるのですが、リード・ボーカルのファルセットですね。最高です!


『Niagara CM Special Vol.1(3rd Issue)』の解説によると、この曲でドラムをたたいているのは、つのだ・ひろ。例の「メリー・ジェーン」の人。先日、とんねるずの番組で久しぶりに歌ってるのを聴きました。
それから、途中で「ヴォリューム・トゥー」と叫んでいるのは、都内の英語スクールの指導員をしているガイジン女性とのこと。大瀧さんとどういう関係なんだろう? 大瀧さん、英語スクールに通っていたのかな。

ところで、このレコードのB面には小林克也さんのナレーションによるラジオ・スポットが収められているんですね。これは後に出たCDには収められていませんでしたから、とても懐かしかったです。「ハートじかけのオレンジ」を紹介する時の「大瀧詠一の不思議な世界」なんて言葉も大好きでした。

a0285828_95851.jpgそれから、このレコード、ジャケットもかわいいんですね。イラストの中山泰さんは、どちらかといえばドリーミーな男女の絵を多く描かれているのですが、これはかなり違った感じです。裏ジャケのイラストも素敵です。
もし(僕のように遅れてきた)大瀧さんのファンであれば、このレコードは絶対に持っておいた方がいいと思います。できれば30周年である今年中に。

というわけで、このシリーズはこれで終ります。楽しんでいただけたでしょうか。
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by hinaseno | 2012-11-30 09:07 | 音楽 | Comments(1)

このシリーズも佳境に入りました。
そもそも、なぜ僕が大瀧さんの一人多重コーラスであるJack Tonesに興味を持ったかという話を少し。
僕が大瀧さんをリアル・タイムで追うようになったのは『EACH TIME』というアルバムからです。その前後に発売された、大瀧さんの記事の載った雑誌は見つけられる限り買っていました。それらを今年になって読み返していたところ、ある雑誌の記事(切り抜いてとってあったので、何の雑誌かわかりません)で次のような言葉を見かけたからです。

「ボク自身、音楽をつくること、その過程を楽しむことが目的なんだ。だから、作ったものの中に、いろんなナゾやジョークをかくしているわけ。
 ただ、以前はひとりでかくれんぼしてたら結局だれも捜しにきてくれなかった。だから、今は、みんなに遊んでもらえるように、カゲくらいは見せておこうと思ってるわけさ」
『EACH TIME』というアルバム名にもナゾがあるとか。それは? ヒントは76年のLP『GO! GO! NIAGARA』のジャケットの裏に残されているそうです。ハイ。


a0285828_855285.jpgたぶん当時、これを読んで『GO! GO! NIAGARA』のジャケットの裏を見たはずですが、(といってもLPは持っていなかったので、『All About Niagara』という本に収められた写真なので、今見ても「introducing “Jack Tones」の言葉は読み取れません。で、おそらく、僕が見ていたのはその上の、おそらくはDJをしているときの大瀧さんの写った写真だったと思います)たぶん何のことかわからなくて、それっきりにしていました。
で、今年、その記事を久しぶりに読み返して気づいたんです。ああ、Jack Tonesだ!
『EACH TIME』は『GO! GO! NIAGARA』以来、Jack Tonesが大活躍していたアルバムだったんですね。
実際に『EACH TIME』のアルバムで大瀧さんの一人多重コーラスは、アルバムが発売された時の全曲数9曲のうちの4曲。でも、おそらく一人で歌っているものでも、おそらく大瀧さん的には、これは宿霧、これはちぇるしい、これは多羅尾、という感じで歌っていたのではないでしょうか。Jack Tonesのそれぞれに(each)に活躍の時間(time)を与えている。
よく『EACH TIME』は『ロング・バケイション』ほどには遊びが少ない、と言われていましたが大瀧さんなりには遊んでいたのではないかと思います。同じように聴こえて(見えて)しまうけど、実はそうではない、というのが大瀧さんの作り出した音楽の最大のポイントですからね。

では、その『EACH TIME』に収められた一人多重コーラスを、ということになりますが、アルバムの発表順ではその前に『ナイアガラ・トライアングルVol.2』がありますので、そちらの話を。
この中には「Water Color」と「ハートじかけのオレンジ」の2曲に一人多重コーラスが聴かれますが、これはJack Tonesというよりもダブル・ボーカル(ちゃるしいと多羅尾?)ですね。
興味深いのはアルバムには収められていませんが、「ハートじかけのオレンジ」のB面に収められた「Rock'n' Roll 退屈男」という曲。これはJack Tonesのメンバー全員に順番に歌わせているという感じで、大瀧さんの様々な声が出てきます。めいっぱい遊んでいますね。


さて、『EACH TIME』。僕はLPで何度も聴いたので、やはり1曲目は「魔法の瞳」。あえてLPバージョンを。


「魔法の瞳」は、その後、CDが出るたびに、まるで打順が下がるみたいに、曲順が後ろにされていったのですが(現行では、アルバムの中で最初に録音された「夏のペーパーバック」が1曲目)、僕の中では永遠に『EACH TIME』の1曲目(再来年に『EACH TIME』の30周年盤が出るときには1曲目に戻してもらいたいです)。「魔法の瞳」については、またいつか。

次は「恋のナックルボール」。


3つめは「1969年のドラッグレース」。


そして最後が「ペパーミント・ブルー」。Jack Tonesがコーラスをした最高の曲だと思います。本当に素晴らしいハーモニーが聴かれます(歌詞の中にもハーモニーが出てきます。松本隆さんにデモを渡されたときにもコーラスを入れてたんでしょうか)。詞、曲、唄、そしてコーラス、どれをとっても僕にとって最高の、永遠の一曲です。


そういえば昨夜、小西康陽さんの「これからの人生」を聴いていたら最後に子供たちのコーラスで歌った山下達郎さんの「クリスマス・イブ」がかかりました。吉永小百合さんの主演された『北のカナリアたち』で歌われた曲とのこと(西條八十が詞をかいた「かなりや」も歌われているようです)。これまで聴いた「クリスマス・イブ」の中で最も感動してしまいました。
「ペパーミント・ブルー」もあんな感じで、できれば大瀧さんの生まれた岩手の子供たちに歌ってもらえたら素敵だろうなと思いました。
2年前にはこういうのが開催されていたみたいですから。今度はできればコーラスで。


希望と言えば、再来年(来年のことを言っても鬼が笑うのですが)に出る『EACH TIME』のボーナス盤には、カラオケとともに、ビーチ・ボーイズの『PET SOUNDS SESSIONS』に収められたような「STACK-O-VOCALS」、つまりJack Tonesのボーカル部分だけを収めたものを入れてもらえたら最高にうれしいように思いました。さらにおまけに『ロンバケ』の数曲も入れてもらえればさらにうれしいです。

さて、その後は、といっても、アルバムはもうないのでシングルの曲ですね。「恋するふたり」の最後の「ダン・ドゥビ・ダン」に、Jack Tonesらしき声が。ただし、女性の声も入っています。


というわけで、長く続いた大瀧さんの一人多重コーラス特集もこれで終りにしようと思ったのですが、実は大瀧さんのいろんな音源を聴き返す中で、僕にとっては「 ペパーミント・ブルー」以上に素晴らしいJack Tonesのコーラスの入った曲を発見したんです。もちろんそれは、あるCDにひっそりと収められているのですが、それをどうしてもLPで聴いてみたくなって、でも、そのLPを持っていなかったので、先日神戸の中古レコード屋さんをめぐって見つけてきました。
明日はその最高のJack Tonesの曲を紹介します。
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by hinaseno | 2012-11-29 09:05 | 音楽 | Comments(3)

さあ、いよいよ『ロング・バケイション』。

と言いつつ、いきなり関係のない話を。
最近、夢というものを全く見なくなっていたのですが、昨夜、久しぶりに夢を見ました。なんと、「ナイアガラ・トライアングルVol.1」の伊藤銀次さんに出会うという夢。初対面なので握手をしてもらいました。大瀧さんは、たぶん夢には何度も登場した気はしますが、銀次さんははじめて。ここのところ、家でも仕事場でも、ちょっと息抜きしたいとき、ギターをもっては銀次さんの「ウキウキWatching」を口ずさんでいるせいでしょうか。それだけのことですが。

さて、『ロング・バケイション』。
前に僕は、『ロンバケ』には一人多重コーラスはない、なんて書いてしまいましたがそんなことはありませんでした。Jack Tonesのクレジットはされていませんが、彼らはちゃんと歌っていました。おそらくは全部で3曲。
でも、やはりコーラスというものは意識して聴かないと、わからないものだと痛感しました。『ロンバケ』は間違いなく僕が最もよく聴いたアルバム。1万回、あるいは10万回、いやもっと聴いたかもしれません。でも、今の今まで気づいていなかったんですからね。

まず、最初に聴かれるのは「カナリア諸島にて」。「カナリアン・アイランド カナリアン・アイランド 風も動かない」とうたわれるサビの部分に大瀧さんの一人多重コーラス(Jack Tones)を聴くことができます。


このサビは曲の中で4回出てきます。全部同じように思えますが、ちょっと違います。もしかしたら1回目と3回目は同じものなのかもしれませんが、2回目と4回目のは、1回目、3回目とは違ってファルセット(裏声)のコーラスが出てきます。2度繰り返される「カナリアン・アイランド」の2度目の「カナリアン」のところ。ここはとってもいいですね。このファルセットを歌っているのは「泳げかなづち君」から金田一幸助に変わって加入して、おそらくはファルセットで歌ったはずの多羅尾伴内でしょうか。多羅尾伴内は『ロンバケ』のアルバムの全曲のアレンジもしているので大活躍ですね。
それにしても、「カナリア諸島にて」の松本隆さんの歌詞の素晴らしいことと言ったらないですね。心象風景という言葉を使われていたことがありましたが、心の中の風景が、海辺の風景に見事に重ね合わされています。「ぼくはぼくの岸辺で生きていくだけ」なんてたまらないですね。

さて、2つめは、アルバムの曲順通りではないのですが「FUN×4」。埋め込みができなかったのでリンクしました。

これはもう聴けばわかる通り、曲のはじめから大瀧さんの一人多重コーラスが聴かれます。こういうホワイト・ドゥーワップ調のコーラスはJack Tonesが最も得意とするものでしょうか。後半に少し出てくるアカペラ・コーラスも素晴らしい。曲の最後にはファルセットが出てきます。大瀧さんの(多羅尾伴内?)ファルセットは本当に魅力的な響きがあります。

最後は「恋するカレン」。まちがいなく『ロンバケ』の代表曲の1つですね。この曲でもやはりサビの部分に、女性コーラス(シンガーズ・スリー)の影に隠れてはいるのですが、大瀧さんの一人多重コーラスを聴き取ることができます。かなりゴージャスなコーラスです。


このコーラス、よく聴くとビーチ・ボーイズもカバーしている「Hushabye」という曲に聴かれるメロディが聴かれるのですが、コーラスの感触はディオンと離れたベルモンツの、特にこの「ロックンロール・ララバイ」に似ているように思いました。


「恋するカレン」は、バリー・マンという作曲家が作った「Where Have You Been (All My Life)」という曲(歌ったのはアーサー・アレキサンダーという人)を下敷きにしていて、特にサビの部分では、一部そのままのメロディが聴かれるのですが、そのバックのコーラスも、同じバリー・マンの作った「ロックンロール・ララバイ」(最初に歌ったのはB.J.Thomas)のコーラスを使って、バリー・マンつながりにしたのかもしれません。

『ロンバケ』では、Jack Tonesはクレジットもされていなく、目立たない形になっているのですが、以前よりもはるかに成長した姿を見てとることができます。
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by hinaseno | 2012-11-28 09:10 | 音楽 | Comments(1)

今日は『ロング・バケイション』の話をしようかと考えていたのですが、やはり前にさらっと流してしまったCMソングのことを抜きにしてJack Tonesは語れないと思いましたので、少しだけ前に戻ります。
『Niagara CM Special Vol.1』に収められた「解説」を見たら、Jack Tonesの名前がいくつか見ることができました。
まずは前日貼った「ムーチュ」、そして、やはり「Cider '77」にもJack Tonesの名がありました。
前にも書いたように「Cider '77」は、当時の友人と何度か口ずさんでいた記憶をはっきりと持っていますので、『ロンバケ』を受けとめる素地を作った最初の記念すべき曲のように思いました。ということで、これも作りました。本当は秋吉久美子さんのめちゃくちゃかわいい映像があったほうがいいのですが。


「Cider '77」は『GO! GO! NIAGARA』発売後に作られていますから、まさにJack Tones絶好調って感じですね。
それから、馬場こずえさんの深夜のラジオ番組のテーマソング「土曜の夜の恋人に」にもJack Tonesの名がクレジットされています。
この画像の最初にかかっているのがそうですね。


『ナイアガラ・トライアングルVol.1』のレコーディング・セッションの合間をみて録音したと書かれていますから、『GO! GO! NIAGARA』の前ということになります。「ムーチュ」の次がこれということになります。『GO! GO! NIAGARA』の「あの娘に御用心」タイプの曲で、「あの娘に御用心」の最後の方で馬場こずえさんの名前も出てきますね。

あとは『Let's Ondo Again』のアルバムが発売されるまでのまでのCMソングで大瀧さんの一人多重コーラスが聴けるのは「タマゴのタンゴ」、「スメランド」、「Good Day Nissui」の3曲。「Good Day Nissui」はかなり『ロンバケ』していますね。
でも、次に出た『Let's Ondo Again』(『ロンバケ』の1つ前のアルバム)にはJack Tonesのコーラスは1曲も確認できません。理由の一つは、かなり時間のない中でこのアルバムを作ったということ。もう一つは、Jack Tonesのさわやかなコーラスをつけられるような曲が1曲もなかったということですね。コミカルな曲という次元を超えたすごいものばかり。
『ロンバケ』で大瀧さんを知った人間としては、当然、その一つ前に作られたアルバムがどんなものなのかが気になりますよね。で、これを聴いた時の驚きといったら...。

『Let's Ondo Again』でコロンビアとの契約(かなりハードな契約をしていまったんですね)が切れて大瀧さんは再びCMソングの制作、あるいは他のアーティストへの曲提供を活発に始めます。『ロンバケ』の制作期間ともかぶった時期ですね。この時期に作られたCMソングは素晴らしいものばかり(でも、ボツ、つまり不採用になったものも多いとのこと)。最初が例の「オシャレさん」ですね。そしてこの期間に前に触れた「がんばれば愛」も作られています。
この期間で大瀧さんの一人多重コーラスが聴けるのは「Big John」、「Hankyu Summer Gift」、「Marui Sports」、そして「悲しきWALKMAN '81」。
この中で、特に素晴らしいのは「Big John」ですね。A TypeとB Typeがあるのですが、どちらも抜群にいいです。前に貼ったCMの映像も曲に見事にマッチしています。埋もれさせておくにはあまりにもったいないので、これだけ取り出して作りました。あの画像があれば最高なんですが。

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by hinaseno | 2012-11-27 09:08 | 音楽 | Comments(1)

今日は『GO! GO! NIAGARA』に収められた、Jack Tonesがコーラスをつとめた曲、つまり大瀧さんの一人多重コーラスの曲をどんどんと紹介していきます。
「GO! GO! NIAGARA」に収められた1人多重コーラスのポイントは、爽快感のあるコーラスをはじめたことではないでしょうか。つまり、それ以前の「おもい」、「ムーチュ」はドゥーワップ調でしたが、このアルバムからサーフィン・ホットロッドやソフト・ロック系のさわやかな感じのするものにチャレンジしているんですね。ポイントは高音、裏声を使ったコーラスですね。

まず1曲目は「あの娘に御用心」。


この曲の、とくにバス・パートの使い方などは、大瀧さんの大好きな、フィル・スペクターのプロデュースしたBob B. Soxx and the Blue Jeansの「Why Do Lovers Break Each Others Hearts」に聴かれるものをそのまま使っています。「あの娘に御用心」の最後の部分に、元にしたであろう曲のタイトルが次々に出てくるのですが、 その中に「Why Do Lovers Break Each Others Hearts」も出てきます。


2曲目は「針切り男」。この曲はYouTubeになかったので作りました。
サビの部分に聴かれるコーラスは素晴らしいですね。


3曲目は「コブラ・ツイスト」。
こんなプロレスの技があったなんて、今どれくらいの人が知っているのでしょうか。
(ちなみにこのYouTubeの音源には、途中から植木等の歌った大瀧さんの曲が出てきます)

この曲にはやはりいろんな曲が元ネタとして含まれています。
最初の部分はホットロッドの名曲であるリップ・コーズの「ヘイ・リトル・コブラ」。「コブラ」は毒蛇ではなくこの画像に出てくるロードスター・タイプの車の名前です。

この曲に、60年代に数多く作られたツイストの曲をつなげているんですね。まさにタイトル通りの曲。そんなことを何にも知らないで、はじめて「ヘイ・リトル・コブラ」を聴いたときには本当にびっくりしました。

4曲目は「今宵こそ」。
この曲にどんな元ネタがあるのかは知りませんが、かなり複雑なコーラスワークが聴かれますね。とっても好きな曲です。


以上が、『GO! GO! NIAGARA』に収められた大瀧さんの一人多重コーラスが聴かれる曲です。

『GO! GO! NIAGARA』では大活躍だったJack Tonesは、大瀧さんの次のソロアルバムである『ナイアガラ・カレンダー』ではたった1曲しか登場しません。Jack Tonesのメンバー、別の仕事で忙しかったんでしょうか。で、代わりにキング・トーンズが再登場しています。「お花見メレンゲ」と「お正月」ですね。「お正月」は大好きな曲なのでJack Tonesのコーラスで聴いてみたかったです。

今日の最後は、その『ナイアガラ・カレンダー』でJack Tonesが唯一登場する「泳げカナヅチ君」。"泳げない"けど、とっても素晴らしいサーフィン・ソング。
ちなみにたくさんのサーフィン・ソングを作ったビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンも泳げません。


さっき、この曲のクレジットを見てちょっとびっくりしました。Jack Tonesのメンバーが一人交替しています。『GO! GO! NIAGARA』で2nd Tenorをつとめていた金田一幸助がいなくなって多羅尾伴内が入っています。多羅尾伴内の方が高音が出るのでしょうか。真相やいかに。ちなみにリード・ボーカルはJack Tonesのメンバーでもある宿霧十軒。
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Jack Tonesの名前はこれ以降の大瀧さんのアルバムからは見られなくなります。果たしてJack Tonesは...。
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by hinaseno | 2012-11-26 09:38 | 音楽 | Comments(1)

大瀧さんがはじめて本格的に一人多重コーラスをはじめたのは1976年10月にリリースされたアルバム、『GO! GO! NIAGARA』です。
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このアルバムで大瀧さんは完全に一人多重コーラスのノウハウを身につけたんでしょうね。
このアルバムの裏ジャケには、「introducing “Jack Tones”」という言葉とともに、4人の男性コーラスのイラストが載っています。
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「おもい」「ムーチュ」でやった一人多重コーラスにグループ名をつけて初披露というのがこのアルバムです。
それにしても自分の多重コーラスに名前をつけるというのがいかにも大瀧さんらしいですね。ジャック・トーンズという名前のもとになっているのは、「ムーチュ」の元歌である「いつも夢中」のコーラスをしたキング・トーンズですね。外国にはクイーン〜というコーラス・グループ(もちろんそれは女性ですね)もあるということで、キング→クイーン→ジャックで、ジャック・トーンズ。ジャック・ジョーンズ(Jack Jones)という名のポップ・シンガーもいますから、それにもかけているのかもしれません。シャレが効いています。
さらにおもしろいのは、グループ名をつけただけではなく、その一人多重コーラスのパートごとに名前をつけていることですね。世界広しといえどもそこまでする人は絶対にいないと思います。
アルバムのライナー・ノートのクレジットにはこんなふうに紹介されています。

Voices:”Jack Tones”
  Bass 宿霧十軒
  Baritone 我田引水
  1st Tenor ちぇるしい
  2nd Tenor 金田一幸助

大瀧さんの変名に関して話を始めるととてもとても長くなってしまいますので今日はあまり触れないことにします。それぞれにいわれがあり、個々に様々な活動しています...って全部、大瀧さんなんですけど。ああ、ややこしいなあ。でも、考えてみると、大瀧さんは本当にいろんなことができてしまうのですが、その大きな理由はこの変名にあるのかもしれません。
いろんなことをやるにしても、一人の人間がやっていると思うのと、この作業をする俺は〇〇、この作業をする俺は□□、この作業をする俺は△△と名前を与えた方が、全く違ったアプローチができるように思います。一人多重コーラスも、ただパートごとに録音するよりも、そのパートに名前を与えて歌う方が、自分から離れられる気がします。大瀧さんの一人多重コーラスの魅力はそこにあるのかもしれません。同じ人間が出した声でありながら、別々の人格をもっている。それが一人多重コーラスの技術を「ムーチュ」から、たった1年で、格段に進歩させた理由のように思います。

さて、 Bass の宿霧十軒のことについて。
この人は『ナイアガラ・カレンダー』の「泳げカナヅチ君」と、それをパロディにした『レッツ・オンド・オゲイン』の「空飛ぶカナヅチ君」でリード・ボーカルを務めています。
ところで、宿霧十軒という名前のいわれは何だろうと調べたら、なんと伊藤銀次さんがブログで説明されていました。宿霧十軒は「やどぎりじゅうけん」と読むんですね。僕は「じゅっけん」と読んでいました。銀次さんはこう書いています。

名前の「十軒」をひっくり返すと「軒十(けんじゅう)」。名字の「宿霧」をひっくり返すと「霧宿(むしゅく)」。合わせて「軒十霧宿」。
これはスティーヴ・マックイーンが若い頃主演していたTV映画「拳銃無宿」(原題 Wanted : Dead Or Alive)を文字って逆さにしたものだったのです。

「拳銃無宿」からとっていたとは驚きました。ときどき宿霧さんには”Borris”というミドルネームがついているのですが、これはどういう意味なんでしょうか。

次に、 1st Tenorの「ちぇるしい」について。ときどきはChelseaと英語表記されることもあります。
この「ちぇるしい」というのは大瀧さんの最も古い変名ではないでしょうか。
昔、はっぴいえんどを結成する前に、細野晴臣さんとあるライブに出ていて、そこで歌ったのがジョニ・ミッチェルの「チェルシー・モーニング」。これをたまたま見ていたおばさんたち(ラヴィン・スウーンフル・ファンクラブの人たち)が、ファンがいなさそうだから応援してあげると言って、その時につけられた大瀧さんの愛称がちぇるしい。名前のついたいきさつとしてはかなりイージーな感じがしますが、でも、どうやら大瀧さんはこの名前が気に入ったみたいで、このちぇるしいという名前を以後ずっと使い続けます。
印象的なのは『ナイアガラ・カレンダー』の「Blue Valentine’s Day」というとってもロマンティックな曲を歌っているのが、ちぇるしい。

『ナイアガラ・カレンダー』のクレジットには「ちぇるしい(18才―精神年令)」と書かれています。少年の心を忘れない存在でしょうか。はっぴいえんどの前に細野さんと組んでいたグループ名が「バレンタイン・ブルー」なので、この曲にはその時代の思い出も含まれているのかもしれません。
ちなみに、ちぇるしい(Chelsea)は、「ナイアガラ・トライアングルVol.2」の大瀧さんの作った曲のアレンジをしている他、先日特集した渡辺満里奈さんの『Ring-a-Bell』の「うれしい予感」のアレンジもしています。同じアルバムでも「ダンスが終る前に」と「あなたから遠くへ」は多羅尾伴内(『ロンバケ』をはじめ、大瀧さんの楽曲のほとんどのアレンジを担当している人。もちろん大瀧さんの変名)。
同じアーティストのアルバムの中に、大瀧さんの2種類の変名があるっていうのもおもしろいですね。「うれしい予感」は、精神年齢を下げて作ったということでしょうか。興味深いのは、この多羅尾伴内とChelseaは『ナイアガラ・ムーン』の「楽しい夜更し」という曲をデュエットしています。といいつつ、全部大瀧さんなんですが。

でも、大瀧さんが変名を使って何かをするというのは、冗談を超えて、学ぶべきことがあるような気がします。

今日は結局、Jack Tonesのメンバーの紹介(つまりは大瀧さんの変名)の話だけで終ってしまいました(更新の時間も遅くなってしまいました)。
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by hinaseno | 2012-11-25 18:22 | 音楽 | Comments(1)

「おもい」の次の大瀧さんの一人多重コーラス(ヴォーカル)は「ムーチュ」というCMソングです。1975年の作品です。曲は完全なドゥーワップ。


これは大瀧さんが自分のレーベルであるナイアガラをスタートさせて、自宅に”福生45スタジオ”を作って録音したはじめてのアルバム『ナイアガラ・ムーン』に収められた「いつも夢中」(ときどき「君に夢中」というタイトルになっていることもあります)と同じ曲です。「夢中」が「ムチュー」ではなく「ムーチュ」と歌われているんですね。
「いつも夢中」のコーラスをしているのはキング・トーンズというプロのコーラス・グループ。このコーラスの譜面を書いたのが大瀧さんなのか、あるいはキング・トーンズの人なのかはわかりません。CMでは、そのキング・トーンズの歌った部分を全くそのまま大瀧さんが多重録音して歌っています。
正直、ぼんやりと聴くと、ほとんど違いはわかりません。でも、やはりキング・トーンズの歌う方がこなれた感じはします。あたりまえですね。ただ、やはりどこかムード歌謡になっていますけど。
大瀧さんの一人多重コーラスは、「チニジニバ」の部分がかなり元気ありすぎて、リードボーカルを喰ってしまっている感じがなきにしもあらずです。まあ、これは音のバランスの関係なのかもしれませんが。でも、そこにプロのこなれたボーカルとは違う肌触りがあることは確かです。
上手、下手とかの意味とは違ってアマチュア的な感触をもっているところが大瀧さんの一人多重コーラス(ボーカル)の最大の魅力ではないかと考えています。これ以後の作品で、録音技術を含めて一人多重コーラスをさらに洗練させていくのですが、でもアマチュア的な感触だけは残し続けています。
つい先日見た小津安二郎の映画『お茶漬の味』の佐分利信の言葉で言えば、「intimate(親密な)でprimitive(原初的で、理性にとらわれない)な感じ」を大事にされているように思います。コーラスの部分に限ったことではありませんが。

ところで、大瀧さんとCMソングとの関係を少し。
a0285828_882790.jpg1972年にはっぴいえんどを解散してから大瀧さんはたくさんのCMソングを作るようになります。CMソングだけを集めたアルバムも出しています。
最初に大瀧さんに声をかけたのはONアソシエイツというCM制作会社。関口直人さんがいらっしゃった会社ですね。最初に作ったのが三ツ矢サイダーのCM。1973年のこと。そこから大瀧さんはサイダーのCMを77年まで作ります。ただし76年だけは山下達郎さんが作っています。それから数年空いて83年にもう一度サイダーのCMを作っています。
サイダーのCMが最もよく使われたのが、例の『スター誕生』でしたから、僕も当然耳に入れていました。いちばん覚えているのは「サイダー77」です。「つめたくするからいいんです」は口ずさんでいた記憶があります。もちろんそれを歌っていたのが大瀧さんだなんて知る由もなく。この「サイダー77」もおそらくは大瀧さんの一人多重コーラス(ボーカル)。

YouTubeに大瀧さんがCMソングを手がけたものを集めたすごい映像があります。これの26分くらいまではほぼ全て大瀧さんが曲を書いています(途中、トライアングルVol.2の佐野元春さんと杉真理さんの曲がそれぞれ1曲だけ入っています)。きっと、ああ、あのCMの曲も大瀧さんだったのかということになると思います。ただひとつ残念なのは、大瀧さんが作ったCMソングで一番好きだった(確かモデルも可愛かった)「日立のオシャレさん」のCMがないこと。本当におしいです。
この映像に出てくるCMソングには大瀧さんが一人多重コーラス(ボーカル)をしているものがいくつもあります。意識して聴いてもらえれば、きっとわかると思います。


そういえば、このYouTubeの映像、実はかなり長くて最後まで見ていなかったのですが、昨日チェックしたら、なんと35分あたりから1985年にはっぴいえんどが再結成されたときの映像があって腰が抜けてしまいました。"動く"大瀧さんが見られます。"あの映画"以来の動く大瀧さんが見れて感激しました。
ついでですので"あの映画"を。これです。YouTubeに、その場面だけの映像がありました。10年くらい前にこの映画のことを知って、初めて見たときは、いろんな意味で感動しました。

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by hinaseno | 2012-11-24 08:12 | 音楽 | Comments(0)

今日からしばらくは、このブログを始めたときからやってみたかった大瀧さんの一人多重コーラス特集です。大瀧さんの楽曲をとりあげたブログはそれこそ山とありますが、大瀧さんの一人多重コーラスに焦点をあてたものはたぶんはじめてではないかと思います。とにかく好きなんです。大瀧さんの一人多重コーラスが。
ただ、残念ながらYouTube上に音源のないもの(特にCM用に作られた曲)が多くて、全部僕が作るのも大変ですので、どうしても聞いてもらいたいという曲を数曲だけ作ることにしました。これをきっかけにして、やはりできればCDを買って、大瀧さんの解説を読んで、曲を聴いてみてくれるのが一番だと考えています。

さて、その前に一人多重コーラスというものについて。
普通はコーラスといえば、何人かの人が集まっていっしょに歌うわけですが、それを一人でやるんですね。でも、どうやって録音をって思いますが、それができる機械があるんですね。名前は忘れましたが。パートごとに自分の声を録音してそれを重ねることができる機械が。
僕が「一人多重コーラス」なんて言葉を知ったのは、1986年に出た山下達郎さんの『ON THE STREET CORNER』というアルバムの解説を読んでのことでした。そのアルバムがまさに達郎さん一人で多重録音された曲を集めたものだったんですね。ただ実際にはこのCDは再発で、最初にそのアルバムが出たのは1980年の12月。確かその前に『ライド・オン・タイム』がヒットして、今しかないということで作ったとどこかで発言されていたように思います。もちろん僕は1980年という年にそんなアルバムが出たなんて知る由もありません。

1995年に大瀧さんの過去のアルバムが、大瀧さんの詳しい解説付きで、どっと再発された時、僕ははじめて大瀧さんも一人多重コーラスをされていたことを知ります。まさに、「聞いてみたから、わかったよ」でした。コーラスって意識して聴かないと、聴き流してしまうんですね。言われてみれば確かにそうだなと確認はできるんですが、気づきませんでした。しかも、大瀧さんは達郎さんが『ON THE STREET CORNER』のレコードを出す、かなり前から一人多重コーラスをやっていたんですね。これには驚きました。
一人多重録音のできる機械がいつ頃できたのか、それを使って最初に録音したのが誰かは知りませんが、大瀧さんはそれをやった最初の一人であったことは間違いないのではと思います。少なくとも日本のロック(ポップス)の分野では。達郎さん以後は、何人もの人がそれを普通にやるようになりましたが。

でも、なぜ一人多重コーラスをやるのでしょうか。達郎さんはかつて一緒にコーラスをやる友達がいないから、と冗談まじりに言っていたことがありましたが、大瀧さんも達郎さんもまわりにコーラスのできる人は何人もいましたから、そんな人たちがコーラスをやっている曲はいくつもあります。大瀧さんであれば、まさに達郎さんがバックコーラスをしている曲もあります。あるいはキング・トーンズというボーカル・グループがバックコーラスをつとめている曲も。でも、大瀧さんも達郎さんも一人多重コーラスを数多くするようになります。
おそらくそれぞれに一人多重録音の技術を高められたのが大きなポイントであると思いますが、何よりも声質の要素が大きかったように思います。どんなにコーラスの技術を持った人でも、あまりに違った声質だと、どうしても綺麗な響きを持ったコーラスになりません。でも、その一方で同じような声を重ねるだけでは、まるでつまらないものになる可能性もあります。やったこともないくせに偉そうなことを言っていますが、あくまでいろんな人のコーラスを聴いてきての感想なのですが。

とりあえず、今日は大瀧さんのおそらくは一番最初の一人多重コーラスの曲を。
はっぴいえんどに在籍していたときに出した最初のソロ・アルバムに収められた「おもい
」。


a0285828_20535046.jpg曲が作られたのは、なんと1972年。こんな時代に、こんなことをやっていた人は絶対に他にいなかったはず。ただ、このコーラスのアレンジは大瀧さん本人ではなく、大瀧さんと細野さんが知り合う仲介をした、細野さんと同じ立教大学にいた中田佳彦さん。ちなみに中田さんの叔父は、かの有名な中田喜直さんです。「ちいさい秋みつけた」(大好きな曲です)など数々のすばらしい童謡を作った人ですね。
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by hinaseno | 2012-11-23 09:09 | 音楽 | Comments(1)

これからの人生と冬の本


昨日、夏葉社という出版社のことに触れましたが、もう間もなく、その夏葉社から新刊が出ます。タイトルは『冬の本』。
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夏葉社のブログにはこんなふうに紹介されています。

冬と1冊の本について、弊社が書いてほしいと願う人たちに、
それぞれ約千字で、エッセイを書き下ろしてもらいました。
冬に読んだ本や、冬に出会った本。
冬になったら思い出す本や、まるで冬のような本。
そんな「本の話」が、84本。


装幀が何と和田誠さん。
僕と夏葉社との出会いも和田誠さんが装幀した夏葉社の1冊目の『レンブラントの帽子』でした。夏葉社としては、久しぶりの和田さんです。




楽しみなのは装幀だけでなく、その執筆者。僕にとって気になる人がずらっとならんでいます。誰から読もうかと悩んでしまいますが、でも、きっと僕はこの人のページから見るだろうなと思う人がいます。
小西康陽さんですね。元ピチカート・ファイヴ。
大瀧さんがレコードを出してくれなくなった後のある時期、一番良く聴いたのがピチカート・ファイヴでした。
小西さんには彼の作り出す音楽だけでなく、彼が紹介する音楽(ときどきは本や写真集)にも多大な影響を受けました。小西さんの出した本は大体持っていますし、小西さんが好きな音楽などを紹介した雑誌などもいくつも持っています。

小西さんと言えば、一番楽しみにしているのが、年末にレコード・ショップ(現在はハイ・ファイ・レコード)と提携してここ数年毎年作っている『これからの人生』というCD。数年前から同じタイトルで月1回のラジオ番組が始まっています。ラジオの方は番組のサイトから、その日かかった曲をすべてチェックすることができますが、CDの方は曲目を言わないでほとんどの曲がかかります。それがとびっきり素敵な曲だったりすると、どうしてもそれが、だれの何という曲なのかを知りたくなります。歌詞を聴いてタイトルの可能性のありそうな言葉から類推したり、あるいはわからないままでいた曲にある日突然であったりとか、楽しみがつきません。いまだにわからないままでいる曲もいくつかあるので、またいつかここに貼っておいて、わかった人に教えてもらいましょうか?
いずれにしても年末が近づくとハイ・ファイ・レコードのサイトを見る回数が増えてきます。あのレコードはその日まで売れないで残っていてほしいと考えながら、その日を待っています。

さて、そのCD盤『これからの人生』で知った、とっても素敵な曲をここに貼っておきます。ずっと前からYouTubeでチェックしていたけどなかったので、今朝、自分で作ろうかと思って今朝改めてチェックしたらありました。しかも、映像付きで!
残念ながら埋め込みができないのでリンクします。
「口笛とバレエ」

これは劇団四季の『壁抜け男』というミュージカルの一場面に使われた「口笛とバレエ」という曲です。曲を作ったのは、かのミッシェル・ルグラン。本当に気に入ってしまって、ずっとこの曲の最初の口笛を吹いていた時期もありました(今でも時々)。
CDが出ていることもわかったので購入して聴いてみたら、いい曲だらけ。
「口笛とバレエ」に続くこの「イザベルとデュティユルのデュエット」という曲もロマンティックです。
他にも好きな曲を。
「二人の警官」
「タイプを打つデュティユル」
「デュブール医師の診断」
「どうかしちゃった」
「イザベルのソロ」

言うまでもないことですがCDを聴いていたら当然、映像を見たくなります。でも、DVDは出ていなくて、以前に出たビデオがあったのですが当然廃盤。ネットで探すと、2本組みということもあってかなりの高額。でも、欲しかったので確かオークションかなんかで買いました。今、見たけどすごい値段がついていますね。そこまではしませんでしたが、たぶん僕がオークションで買ったものでは最高額でした。
劇団四季のミュージカルを見るのは初めてでしたが、最高に良かったです。YouTubeの画像はそのビデオからのものですね。うれしいです。
その後、テレビで放映された劇団四季の「思い出を売る男」なんかもすごく気に入りました。
でも、『壁抜け男』は本当に好きになってしまって原作のマルセル・エイメの本も買いました。

さて、その高い値段を出して買ったビデオ。しばらくしてビデオデッキ(DVD一体型)が故障して、時代はDVDからブルーレイへ。ビデオが再生できるデッキがほとんど市場から消えていたんですね。で、新しく買ったのはDVDだけが再生できるもの。というわけで、ビデオはそれ以来見えていません。DVDに買い替えたもの、あるいはもう絶対に見ないなと思ったビデオは全て処分しましたが、『壁抜け男』だけは残しています。

ところで、小西さんは間もなく出る『冬の本』でいったいどんな本を紹介しているのでしょうか。
今、手元に去年買った『IN THE CITY』という雑誌があります。小西さんを特集しているのですが、そこに特別付録として「小西康陽の本棚から」と題していくつか小西さんの愛読書を紹介しています。吉行淳之介が2冊。鏡明(知らない)という人の本。安藤鶴夫の『雪まろげ』(これはいつか探して読もうと思って忘れてました)。それから谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』(これは読みました)。
小西さんが『冬の本』で選んだ可能性のあるのは、『雪まろげ』か『陰翳礼讃』かなと思っています。
もう1冊、小西さんが最後に紹介している本があります。
石原慎太郎の『わが人生の時の人々』。びっくりでした。「嫌いな人こそ読んでもらいたい。僕も好きじゃないですけど」と書いています。残念ながら(ちっとも残念ではありませんが)、とても読む気になりません。まさか、先(?)を見越して、これを『冬の本』の1冊として選んでいなければいいのですが。

ところで、僕がもし『冬の本』を1冊選ぶとしたら、何にするだろうかと、今、考えています。
昨日、触れた新美南吉の『手ぶくろを買いに』なんか、まさに冬の本ですが。
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by hinaseno | 2012-11-22 09:44 | 全体 | Comments(3)

今まで何度か『木山捷平 父の手紙』という本のことに触れました。一昨日は「鰆」のことについて。この本の装幀をしているのが山高登という人です。実は一昨日、美しい晩秋のいなかの風景を見ながら、山高登さんの絵のことをずっと思い浮かべていました。
山高登という人を知ったきっかけは、夏葉社から出た関口良雄(関口直人さんのお父さんですね)著『昔日の客』でした。ここの口絵と裏表紙に、山高さんの絵が収められています。版画絵ですね。色のついたものと、ついていないもの。
直人さんの書かれたあとがきを読むと、最初、三茶書房から出たものは、その装幀とともにかなりの数の版画絵が収められていたようです。ぜひ見てみたいと思って、以前アマゾンを覗いてみたら、うっ、でした。

a0285828_9435427.jpg僕が持っている山高さんが装幀された本は、調べてみると小沼丹の『藁屋根』と『緑色のバス』の2冊がありました。『藁屋根』の方の函の表の絵はいかにも山高さんらしい農家の風景を描いたもの。もう一つ、口絵も描かれています。

で、先日、日曜日に岡山に戻った時、いつも立ち寄る万歩書店に行って、山高さんの装幀された本を探してきました(実際には店長の中川さんに探してもらいました)。小一時間で十冊の本を見つけてもらいました。いろんなタイプの絵がありますが、やはりこんな版画絵が素敵ですね。
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そういえば、先日、関口直人さんから、山高さんの版画絵展が神奈川県の藤沢市で開催されていることを知らせていただきました。先日の日曜日はその最終日でした。残念ながら行くことはできませんでしたが、版画展の開かれているときに山高さんの装幀された本を買っておきたいと思い立ったんですね。でも、実はこの本は知り合いの人に頼まれてのものではあったのですが(その方が山高さんご本人からいただいていた山高さんの装幀された本のリストがあったから探すことができたわけです)。ですから、これらの本は間もなく僕の手からは離れていくことになります。ちょっと悲しいです。

さて、その万歩さんで購入した本で最も素晴らしかったのは新美南吉の『百姓の足、坊さんの足』という童話集でした。万歩の中川さんがこれを見つけてきてくれたときに、「これはすごいですよ」って言われたのですが、まさにそのとおり。山高さんの版画絵が満載なんですね。山高さんの顔写真も載っています。
新美南吉といえば教科書に載り続けている「ごんぎつね」が有名ですが、僕は同じくきつねの物語である「手ぶくろを買いに」が好きです。小川洋子さんがエッセイでこの童話のことを書かれていたのがきっかけです。子狐が手袋屋さんの扉を少しだけ開けて、そっと手を差し出す瞬間は何とも言えないですね。

ところで、前に僕は川本三郎さんの『小説を、映画を、鉄道が走る』という本をずっと読み続けているってことを書きました。もう読んでいる僕の方が脱線に次ぐ脱線、というか途中下車をし続けていてちっとも前に進まないのですが、また脱線、いや途中下車をしてしまいました。
ちょうど木山捷平の「斜里の白雪」のあとに新美南吉の「おじいさんのランプ」の話が少し出てきたんです。そこを読んだのが一昨日の晩でしたから、すぐに万歩さんで買ってきたばかりの新美南吉の童話集を見たら載っていました。もちろん山高さんの絵もいっぱい。口絵にも素敵な絵がありました。小説の中で最も印象的な場面を描いたものですね。

で、昨夜これを読みました。とってもいい話。でも、少し切なくなる話。
最後におじいさんの孫に向けたこんなことばがあります。電気というものができてランプ屋をやめて本屋をするようになったおじいさんのことば。
「わしの、しょうばいのやめかたは、じぶんでいうのもなんだが、なかなかりっぱだったと思うよ。わしのいいたいのはこうさ。日本が進んで、じぶんの古いしょうばいがお役にたたなくなったら、すっぽりとそいつをすてるのだ。いつまでもきたなく、古いしょうばいにかじりついていたり、じぶんのしょうばいがはやっていたむかしのほうがよかったといったり、世の中の進んだことをうらんだり、そんな意気地のねえことは、けっしてしないということだ」

ちょっとぐっと来ます。この小説が世に出たのは昭和17年(1942年)。まさに戦争中ですね。
でも、新美さんはこれを書いたときに、電気を作るためのダムを造るために自然が破壊されたりとか、石油がたくさん燃やされて二酸化炭素がどんどん空気中にまかれてさまざまな自然破壊が起きたりとか、あるいはいうまでもなくもっとも電気を効率よく作る原発事故が起きたりしたことも知りません。確か原発事故の後、ランプが見直されるようになったんですね。
果たしておじいさんの判断は正しかったんでしょうか。

おじいさんがランプ屋をやめるきっかけとなった出来事があります。電気をおじいさんの村にもひくことが決まったので、おじいさんは村長のことを恨んで村長の家を燃やそうとします。普段ならマッチを持っていくのに、そのときには火打ち道具を持っていきます。そしていざ火をつけようとすると、なかなか火がつきません。カチカチと大きな音もして寝ている人を起こしてしまう気がする。そのときにふと気づきます。

「古くせえもなァ、いざというときにはまにあわねえ」

そしておじいさんは店にあったランプを全部捨てようと決心して、池のところまでもっていって全部のランプに灯をともします。これがその場面を描いた山高さんの絵です。
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でも、おじいさん、ちょっと待って、ですね。
そのとき、もしおじいさんがマッチを持っていってたらどうなったか。言うまでもなくおじいさんは放火殺人犯で捕まってしまって、一生牢屋に入れられるどころか、その時代であればすぐに死刑になってしまっていたように思います。
本当はおじいさんは「古くさいもの」に、つまり、いろいろと手間がかかって時間がかかるものに助けられたんですよね。

と、この文章を書きながら、CDという便利なものを処分して買ったナット・キング・コールの古いレコードを聞いています。CDが出て多くのレコードを処分したのですが、最近はその逆のことをしています。手間がかかったっていいんです。いや、その手間があるからこそ音楽は何倍も素敵に聴こえるんです。
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by hinaseno | 2012-11-21 09:49 | 文学 | Comments(2)