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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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2017年 12月 06日 ( 1 )



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塩屋に行くときに探していた本がありました。初めてある土地に行くときにガイドブックのようなものを読むことはまずしないのですが、播磨と呼ばれる地域の土地を訪ねるときには見ていた本。それがこれでした。

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『播磨古歌考』(橋本政次著 昭和45年)。万葉集から古今和歌集以下の勅撰集、勅撰外の歌集など、播磨地方の古歌を網羅的に調べたもので、播磨のいろんな地域の古歌が掲載されています。こんな場所の歌があったんだと驚くことばかり。よくぞここまで調べられたなと感心します。

この本は姫路での木山捷平を調べるために近くの図書館で郷土誌のコーナーに置かれている本をあれこれ眺めていたときに見つけました。以来、何度もこの本を借りては、どこかに行ったときなどにそこの歌を調べるようにしていました。


この本が、おひさまゆうびん舎のとなりのされど…さんにあるとき入ったんですね。でも、もうたぶんこれから先、そんなには播磨のあたりを歩くことはなくなるだろうと思ったので買わずにいたんですが、いよいよされど…さんともお別れというときに、その本を手に取って眺めていたらプレゼントしてくれたんですね。貴重な本なので決して安くはなかったけど。

でも、やはりなかなか見る機会がなかったので、どこにしまいこんだかわからなくなっていたんですね。それが先日、別の本を探していたときにひょこっと見つかったわけです。奥ではなく見やすい場所に置いていたのに、パラフィンがかかっていたために見逃していました。


『播磨古歌考』に収められた「塩屋」に関する和歌は全部で20首あるのですが見て驚きました。ほとんどの歌に「煙」が出てくるんですね。いくつか並べてみます。


ふる雪にあまの塩やも埋もれてたくものけぶりゆく方もなし
白砂のあまの塩やはうづめども煙はゆきにかくれざりけり
煙たつ塩やのすゝけ見せじとて雪のうはぶきけさはしてけり
沖津風塩屋の浦を吹くからにのぼりもやらぬ夕煙かな
常よりもふかくたく藻の煙かな塩屋をこめて霧や立つらむ
すまの蜑の塩屋も雪にうづもれてたくも煙ゆく方もなし
二見がた春のしほやのよはの月煙いとへばかすむ空かな
いかにせむあまの塩やにまがへても恋の煙はたちやまさらむ
あまのたく磯の塩やの夕けぶりおもひきゆとも人に知らすな
いつまでか立つる煙を恨みけむあるゝ塩やの秋の夜の月
霞み行く裏の塩屋の夕煙その色となく春ぞざびしき
塩やだにまれなる浦のよそめには煙の末も寂しかりかり


すごい数ですね。ただ最初の歌の解説に書かれているのですが、ここに選ばれた歌のいくつかに出てくる塩屋は単に塩を焼く小屋である場合もあって、地名の塩屋なのかそうでないのかは判断しづらいんですね。一応選者はとりあえず塩屋(塩や)とあるものをすべて収録したようです。

いずれにしても塩屋という場所は本来は煙と深く結びついていたことがよくわかります。煙のある風景こそまさに塩屋だったわけです。

塩屋で余白珈琲さんといろいろと話をしたときに、いずれは塩屋に店を持ちたいという希望を持っていることを聞きました。ただ、問題は煙。何か商売をするにも煙というものは都市化された社会においてはかなり難しい問題のようです。

「まわりに煙突がいくつもあるような場所ならいいんですけど」と言ったので、ああ、それならば三石がぴったりだねと言ってから、でもあそこはかなり過疎が進んでいるなと考え直して備前焼の里の備前でもいいかもしれないと言って、で、そういえばと、ある話を思い出したんですね。

その「そういえば」の話がタルマーリーさんのことでした。勝山でタルマーリーの渡邊格さんと話をしたときに、実は勝山に来る前に備前に店を持っていたことを教えてもらったんですね。備前といってもはずれのほうの香登(かがと)。香登って地名を聞いても普通は知らない人が多いんですが僕はよく知っていました。なぜならばそこは中学から高校にかけての頃、熊山(!)の中腹にある大好きな寺、大滝山福生寺(!!)に行くために自転車で何度も通っていた場所だったから。

で、さらにそういえばって話をしたんですが、数日後に、その「そういえば」話がなんだかまるで瓢箪から駒みたいな感じでつながるような、あっと驚くイベントがあることを知ったんですね。しかもその日は…、実際にはその前日は(!)、とか、いろんな縁がつながっていくようなことになっていたので、こうなったらあの方(!)もお呼びしてみようとか、今いろいろと考えているところです。

それにしてもすごい縁だなと思っているんですが、もしかしたら余白珈琲さんが着ていた服の胸に描かれていたビートルズが呼び寄せたのかもしれないと思ったりもしています。なんのこっちゃ、ですね。


それはさておき、余白珈琲さんの店は、やはり塩屋という場所が似合っていると思います。あの谷に煙が流れている風景は素敵だと思うので。そして潜水艦のロゴを考えるとやっぱり海が近くにないとね。


都市化が進んだ、平川さんの楕円思想の中の言葉を使えば無縁化が進んだ塩屋にもきっと煙を許してくれるような有縁の場所、スキマのような場所があるはず…、と、今、これを入力していたら「無縁」は最初は「無煙」に変換されてびっくり。

そうか、「縁」は「煙」にもつながっているんだ。とすれば「有縁(うえん)」は「有煙」でもありますね。煙草のお好きな平川さんにとっても、これは!のはず。


余白珈琲さんと別れた後、僕は塩屋の街を2時間ほど歩きました。もちろん例の旧グッゲンハイム邸や他の異人館にも行きましたが、やはり塩屋の魅力を感じたのは駅前近くの路地でした。

そんな中でもとりわけ惹かれたのがこの路地でした。

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この路地に入った瞬間にこれはって感じで写真を何枚も撮りました。

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で、足を止めたのがこの場所。

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前を歩いた親子連れが店の前に立ち止まったら店の中から女性が出てきて話しかけている。どうやら親子連れはスタンプラリーをしていたようで、その説明をしてあげていたのかもしれないけど、店の雰囲気も含めてなんともいい感じだったんですね。松村さんの言葉を使えば、まさにここはスキマだと思いました。

実は写真の右端の方に写っていますが、この店の横には本棚があって古い本が並んでいるんですね。売っているのか、どうぞご自由にお読みくださいということなのかよくわからなかったけど、でも、ずっとそこにいたいような場所でした。

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で、この店の前には坂を登るもう一本細い路地がありました。「とうふ田仲」と書かれた看板?が見えます。

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もうちょっと下がって見たら…。

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実はこの写真はちゃんと見ていなくて今日これを貼るときに気がついたんですが、なんと「とうふ田仲」と書かれていたのは煙突ですね。たぶん。


この「田仲とうふ店」のこと、もしかしたら、と思って森本アリさんの『旧グッゲンハイム邸物語』を見たらやはり載っていました。この店の田仲さん(僕の撮った写真に写っている人でしょうか?)は”町のレジェンド”の一人として森本さんはとても尊敬していて、なにかあれば田仲さんに頼んでいたようです。ちょっと引用。


「田仲とうふ店」の裏手には、ありとあらゆるものが蓄積されているのですが、自転車や家電が故障した、大工道具が足りない……そんなとき、とりあえず田仲さんに聞けば、修理してくれたり道具を貸してくれたりします。そして、店の前を通り過ぎるすべての子どもたちに「いってらっしゃい」「おかえり」と声をかけ、店の前には小さなジャングルのような自然とともにベンチや本棚があり、それがしっかり機能しているのです。彼らは自分たちが住む町のために、無償でさまざまなことを、自ら率先して楽しんで行っています。

自分の「スキマ」発見力を証明したみたいでなんだかうれしくなりました。

どうやらこの「田仲とうふ店」さんに相談すればいろんなことが解決しそうです。きっと煙のことも。塩屋には本来、煙のある風景があちこちに見られたことを知っているはずだから。


ということで余白珈琲さんの店が塩屋にできることを心から願っています。珈琲豆を焼くために立ち上る煙を見て、心和む気持ちになる人が必ずいるはず。


有煙は有縁。

煙がなければ珈琲豆的楕縁の世界をつくることはできません。


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by hinaseno | 2017-12-06 12:51 | 雑記 | Comments(0)