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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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2017年 12月 01日 ( 1 )



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最初に、今朝、うれしいものが同時に届きました。

ひとつはこれ。

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1999年に発売された『太田裕美の軌跡~First Quarter』というボックス。これが出ているのを知ったのはずいぶん前なんですが、なかなか手が出せないような値段ばかりで。それが先日いいタイミングでひょこっと安いものを見つけて。競合もなし。オークションってときどき、まさにスキマのような瞬間があるんですね。最近はそのスキマ探しのコツを覚えました。基本的には待てば海路の日和ありです。コンディションも最高でした。ブックレットもしわひとつない。

このボックスにはこれにしか収められていない貴重な未発表音源がいくつも収録されているんですが(あの「振り向けばイエスタディ/海が泣いている」のシングルに当初A面として収録される予定だった「雪待夜」という曲も)、何よりも見たかったのはブックレット。大瀧さんと松本さんのインタビューが掲載されているんですね。大瀧さんのインタビューってちょこっとかなと思ったらなんと1ページにわたって掲載。いや~うれしい。これを書いた後でゆっくり読みます。

それにしても今年はいろんな意味で太田裕美イヤーになりました。


もう一つ届いたのはこれ。

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毎朝ブログを読んでいる林哲夫さんの『喫茶店の時代 あのとき こんな店があった』(編集工房ノア 2002年)。これも前から欲しかったものでした。


喫茶店といえば…。

再開されていることがわかった余白珈琲さんのInstagram(あるいはリンクされていたホームページ)にはいくつかのイベント情報のことが書かれていました。余白珈琲さんと縁のあった店で珈琲を淹れるイベントを定期的にやっていたんですね。

ちょうど僕が見たときには直近のイベントのことが紹介されていました。その場所が驚きだったんですね。

まず目に飛び込んできたのが神戸の元町のM&M。そして次が塩屋。僕の縁の端のようなところにある店や場所に彼も縁をつないでいることに、ちょっと運命的なものすら感じました。あんまり運命的なんて堅くるしい言葉は、スキマが感じられなくて好きではないけれど。


塩屋の縁のことはすでに書きましたが、僕がとりわけびっくりしたのはM&Mというジャズ喫茶のことでした。ここに僕がどれだけ通っていたか。ツイッターを始めた一番はじめの頃のツイートもM&Mでしました。確かその前に立ち寄った海文堂書店での出来事のことをツイートしました。


初めてM&Mに行ったのは30年ほど前のこと。その日ある喫茶店を探していたんですね。それはこの日ブログに書いた中に登場するビルボードという名の喫茶店。そう、大瀧さんや達郎さんと親しい助川さんが大瀧さんのアドバイスを聞いて行ったというフォーシーズンズ・フリークの経営する店。

今から考えるとあらかじめもう少し調べる方法はあったはずですが(でもまだインターネットなんかはない時代)、このときは神戸の三宮から元町のあたりまで、あっちこち歩いて探しました。電話帳なんかも調べたりして。でも、どうやらすでになくなってしまっているようでした。


で、夕方、かなり疲れて元町あたりを歩いていたときに、ぱっと目に入ったのがM&MとJAZZという文字の書かれた看板でした。手作り感のあるいい看板。ちょうどジャズに興味を持ち始めていた時期で、一度はジャズ喫茶みたいなところに入ってみたいと思っていたので、これはって思ってはいることにしました。

幅が狭くて少し急な木の階段を上って扉を押して中に入ったら、これぞまさにという感じの店。いっぺんで気に入りました。正面の壁にはずらりと並んだジャズのレコード。壁のいたるところにもレコードのジャケットが何枚も貼られていました。貴重なものは額に入れられていたり。

何よりも驚いたのは窓際に置かれていた巨大なスピーカー。たぶん行ったのは日曜日だったので人はいっぱいいて、スピーカー近くの一つだけ空いていたテーブルに座りました。その日、昼食をとっていなかったのでケーキと珈琲を注文しました。どちらもとても美味しかった。


店には2人の女性が働いていました。僕は勝手にきっとその2人の名前の最初のイニシャルがMだったんだろうなと考えました。ちょっと歳の差があったので姉妹だったのかな。あるいは歳の離れた友人だったのかもしれないけど。若い方の女性はとても綺麗な人でした。

僕はテーブルのそばの窓から、秋か冬の暮れゆく街並みをぼんやりと眺めながら、珈琲を飲み、大音量で流れてくるジャズを聴きました。今まで経験したことがないような甘美な時間でした。


それから何度か神戸に行くようになり、少しずつ行く店が増えていきましたが、神戸に行ったときにはいつも必ず夕方にはM&Mを訪ねるようになりました。店の混み具合によるけど、たいていはスピーカー近くの窓際の席に座り、毎回、ケーキと珈琲を注文して。

いろんな店が生まれ、なくなり、震災があったりしたけど、一番多かったのは元町で下りてハックルベリーと海文堂書店に立ち寄った後でM&Mに行くというルート。わざわざ神戸まで行ったのにこの3つの店だけ立ち寄って帰ることもしばしば。でも、それだけで十分満足。ハックルベリーで買った中古レコードとか海文堂で買った本を眺めながら、M&Mで珈琲を飲みジャズを聴くというのは至福の時でした。


M&Mは最初は女性が2人いたんですが(ときどきはどちらか一人だけということもありました)、ある時期からカウンターには年配の方の女性一人だけになり、若い方の女性は見なくなりました。

で、確か海文堂が閉店する前日に行った時、見たこともない若い夫婦がカウンターに立っていました。内装は何も変わっていないけど、ちょっと空気が変わっていました。僕がその店に求めていたものとは違うアットホームすぎる雰囲気。なんだか居場所がなくなってしまったような感じになってしまいました。

いろんなことが海文堂書店の閉店とともに終わってしまって、もう元町にはそんなに来ることはないだろうと思いました。


昨年の暮れ、元町のバーで松本隆さんの曲をかけるというイベントがあって、どうしても行きたくなって久しぶりに元町を歩きました。元町に行くのは3年ぶりくらいだったでしょうか。もちろんイベントの前にハックルベリーをはじめ、元町の高架下の中古レコード屋さんや古本屋にも行きました。いろいろと評判を聞いていた1003という本屋にも行きました。

そして夕方、ちょっとだけ考えましたが、久しぶりにM&Mに立ち寄ることにしました。

階段を上がる時の木の軋む音も、扉を開ける時の感触も、開けた時になる音も昔のまま。店内にはクリスマスツリーが飾られていたほかは以前のままで、スピーカーも、置かれている場所も以前のまま。ただ、カウンターには見たことのない若い男性が立っていました。

奥のテーブルに若いカップルが1組座っていたので、僕はその反対側のいつものテーブルに座り、いつものようにケーキと珈琲を注文しました。雰囲気は以前に戻っているようで、居場所は回復していました。

運ばれてきた珈琲を飲み、大音量で流れるジャズを聴きながら、店の変化のことをいろいろと想像していました。でも、そこで思ったのは、今度また元町を訪ねることがあったら、やっぱりこの店を訪ねるだろうなということでした。いろんなものがなくなってしまった元町に残っている数少ない居場所だったので。


という歴史があったので、余白珈琲さんがM&Mでイベントをされているというのはとにかく驚きました。

ただ、残念ながらその日は都合が悪くて行けないことがわかったので、翌週の塩屋でのイベントに行くことにしました。でも、いつか機会があればぜひM&Mのイベントにも行ってみようと思っています。


ところで、これは昨年12月に僕が行った松本隆さんの曲をかけまくるというイベントをやった元町のバーの店内の写真。目の前には太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」のレコードが置かれていますね(となりは大瀧さん作曲の2枚)。

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by hinaseno | 2017-12-01 15:19 | 雑記 | Comments(0)