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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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2017年 08月 27日 ( 1 )


朝妻一郎さんのこと


アゲインの石川さんから送っていただいたのは今月の8月7日(月)から10日(木)にNHK-FMで全4回にわたって放送された特集番組『ポピュラーミュージックヒストリー ~発展の歴史と舞台裏~』を録音したものでした。

ホストを務められたのは朝妻一郎さん。朝妻さんの声を聞くのは初めて。


朝妻一郎さんの名前はこのブログでも何度も出ています。全て大瀧さんがらみですね。朝妻さんは大瀧さんと公私にわたって関係の深い人でした。ビジネスの大切なパートナー(大瀧さんが契約していたフジパシフィックミュージックという音楽出版社の偉い人。知り合ったときにはまだそんなには偉い人ではなかったかもしれないけど)であり、アメリカン・ポップスについてコアな話ができる数少ない友人(朝妻さんのほうが大瀧さんよりも5歳年上でしたが)でもあったようです。


僕が初めて朝妻さんの言葉を見たのは『All About Niagara』に掲載されたこの対談(対談が行われたのは1976年)でした。

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これを読むとお二人は本当に気の合う仲間だったんだなと。ただ、気の合う仲間とは言っても、大瀧さんは朝妻さんに対してアメリカンポップスを愛する(ただ愛するだけでなく、それを日本に広めようと努力してきた)先輩として敬意を抱き、朝妻さんも大瀧さんに対して一人のミュージシャンとして敬意を持っていたこともよくわかります。


さて、そういう朝妻さんなので、今回の番組は同じくNHK-FMの夏休み期間に放送されていた大瀧さんの『アメリカンポップス伝』を意識していたことはいうまでもありません。『アメリカンポップス伝』の続編をという要望があったのかもしれません。

で、朝妻さんがされたのは、大瀧さんの放送の続編という形ではなく、大瀧さんが多くは語らなかった舞台裏の歴史でした。中心として語られたのは朝妻さんご自身がずっとされてきた音楽出版社の歴史。

ということなのでビジネスの話がたくさん出てきます。まあ大瀧さんはビジネスの話はお好きではないのですが、音楽の歴史を考える上ではやっぱり避けて通れない部分ですね。もちろん大瀧さんはその部分をよく知っていたはずですが。


ビジネスといえば、ぱっと浮かぶエピソードがあります。それは朝妻一郎さんのこの本に収録された「『A LONG VACATION』」と題されたエッセイに書かれていること。

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 大滝君というのは、人から何かをせかされたりとか催促されることが嫌いなんだと思う。「黙っててもアルバムを作りたくなるような環境ができれば、作るよ」と彼はずっと思っていたんじゃないかな。
 これは僕の失敗談だけど、97年に久々に出したシングル「幸せな結末」が売れたときに、「大滝君、久しぶりにシングル出したんだから、これをフィーチャーしてアルバム作ろうよ」って言ったら、「朝妻さんは、すぐビジネスなんだから」と立腹させてしまったんだ。あまりにも短絡過ぎて、「もうちょっと何か言い方があるでしょ」みたいなことだったんだろうね。でも音楽業界の人だったら普通、当然そう言うでしょ。


大瀧さん、このとき本気で怒ったのかな。冗談交じりに言葉を返したような気もするけど。でも、ちょっと興味深いエピソード。


朝妻さんの話はこの後こう続きます。


 大滝君の場合は、基本的にはやるきになるのを待つしかないんだ。自分の音楽を作る上での、その美学は譲れないわけだし、それは、そもそも「ナイアガラ」ってレーベルを作りたいと考えて、実際に始めたところから続いているものだ。自分のレーベルを持つこと自体、新しい考え方だったのに、ましてはマスターを全部自分で持つという発想はさらに先を行っていた。やっぱり今、彼がマスターを持っているから、再発のたびごとにリマスターをしたりして、自分の音楽を管理することができているわけだからね。彼自身、ティン・パン・アレイ時代からのアメリカの音楽出版とレコード・ビジネスの歴史をよく勉強していたと思う。
 僕が大滝君に何か影響を与えたことはないと思う。だけど、自分でレーベルを持つというアイデアを思いついたときに、そういう話に乗りそうなやつは誰かなと思って見回したときに、たぶん、朝妻一郎だったら話が分かるかなと思ってくれたんじゃないかな。そのことは僕にとってとても大きかったと思うね。

今回の朝妻さんのラジオ番組はまさに「ティン・パン・アレイ時代からのアメリカの音楽出版とレコード・ビジネスの歴史」だったんですが、その朝妻さんははっきりと「彼(大瀧さん)自身、ティン・パン・アレイ時代からのアメリカの音楽出版とレコード・ビジネスの歴史をよく勉強していたと思う」と書いていますね。


そういえばビジネスといえば、もう一つ、例のラジオデイズの『大瀧詠一的』で平川克美さんが大瀧さんにストレートに「ビジネス、嫌いですか?」と尋ねた瞬間がありましたね。そのとき大瀧さん、どう答えたんだったっけ。あまりにストレートな問いだったので、大瀧さん、ちょっと動揺されていたような。


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by hinaseno | 2017-08-27 13:48 | 音楽 | Comments(0)