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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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2017年 07月 30日 ( 1 )



佐野元春さんの新作『MANIJU』が発売されました。オリジナルアルバムのしては2年ぶり。まだ4~5回しか聴いていませんがとてもいいアルバムです。なによりも60歳を超えた佐野さんが今なおロックンロールをやっていることに心から励まされます。

本当は伊藤銀次さんの『POP FILE RETURNS』での対談で、次はランディ・ニューマンみたいな感じのものをやりたいと言っていたので、そういうのを期待する気持ちもあったんですが、佐野さんはこんな時代だからこそロックンロールを選んだようです。ただ、ロックンロールといえば何かを壊すイメージがありますが、このアルバムで佐野さんが出しているメッセージは寄り添うこと。無力だと感じながらも声を上げている人たちに寄り添って、手を差し伸べてあげること。

今のクレージーとしか言いようのない時代がいつまで続くかわからないけど、それが終わって(必ず終わりは来ます)、やすらぎのときが訪れたときに、きっと佐野さんはピアノだけでランディ・ニューマンのようなやさしい、ユーモアあふれた曲を歌ってくれるんだろうと思います。


ところで、『MANIJU』のブックレットを見ていたらおっと思う文字が。


Recorded at Onkio Haus Studio

佐野さん、あの音響ハウスでレコーディングをしていたんですね。ひょっとしたら僕が5月の初めに音響ハウスのそばを通ったときに、そこのスタジオで佐野さんが新しいアルバムに向けてレコーディングをしていたかもしれません。


さて、今日で大村雅朗さんの話は最後。大村雅朗に関して忘れてはならないのが佐野元春さんのデビュー当時の楽曲ことです。

『ナイアガラ・トライアングルVOL.2』で佐野元春さんのことを知って、佐野さんの『SOMEDAY』を聴いてノックアウトされて、それから後追いで佐野さんのそれ以前の2枚のアルバム『BACK TO THE STREET』と『HEART BEAT』を聴きました。その時期には大瀧さんの『ロンバケ』以前のアルバムも後追いで聴いていたわけですが、実は佐野さんの2枚のアルバムの方ばかり聴いていました。そちらの方がはるかに共感を覚えるものが多かったので。大瀧さんのはハードルが高すぎました。

で、佐野さんのインタビュー記事の載った雑誌なんかもいろいろと買ったんですが、それを読んで気がついたことがあったんですね。僕が好きな佐野さんの曲を佐野さん自身はあまり好きではないということを。佐野さんが好きではない理由の最も大きな要因はアレンジのようでした。実はそのアレンジをしていたのが大村雅朗だったんですね。

大村さんをアレンジャーとして起用したのはEPICソニーのディレクターの小坂洋二さん。佐野さんは小坂さんがEPICで手がけた最初のアーティスト。その後、大沢誉志幸、大江千里、小室哲哉、渡辺美里と、彼が手がけたアーティストのほぼすべてアレンジは大村雅朗に任せます。

大村さんは佐野さんのアレンジをする際、おそらくディレクターからの指示があったんだろうとは思いますが、当時、洋楽でヒットしていた曲っぽいアレンジをしたんですね。ロックンロールを現代にと考えていた佐野さんにはそういうのが耐えられなかったもののようです。で、佐野さんはいくつかの曲のアレンジをロックンロールのことをよくわかっている伊藤銀次さんに任せることにします。

というわけで佐野さんの最初の2枚のアルバムには大村雅朗アレンジの曲と伊藤銀次アレンジの曲が混在することになります。で、実は僕の好きな曲の多くは大村雅朗アレンジの方だったんですね。そちらの方がポップでメランコリックな曲が多かったので。「アンジェリーナ」「情けない週末」「グッドタイムス&バッドタイムス」「さよならベイブ」「バッド・ガール」「バルセロナの夜」「彼女」「GOOD VIBRATION」。

佐野さんはこれらの曲について、後のライブではアレンジを大幅に変えて演奏するようになるんですが、僕はやはりオリジナルの、大村雅朗によってアレンジされたバージョンを愛しています。とりわけデビューシングルの「アンジェリーナ」は絶対にこれじゃないとダメです。


「アンジェリーナ」といえば、大瀧さんが佐野元春というアーティストに目をとめたのがまさにこの曲でした。『ナイアガラ・トライアングルVOL.2』の30周年記念盤が出たときの、大瀧さん、佐野さん、杉真理さんのインタビュー(2012年2月)で、この「アンジェリーナ」に関してちょっと興味深いやりとりが大瀧さんと佐野さんの間で交わされています。聞き手は萩原健太さん。


大瀧:そうこうする中、佐野くんの「アンジェリーナ」が出た。林美雄さんの番組でじゃんじゃんかかる。『ユア・ヒットしないパレード』で。いや、これはいい曲だなと思ったわけ。特に追っかけのリフね。あの曲、アレンジは…。
佐野:僕のアイデアを大村雅朗さんがまとめてくれました。ただ、大村さんは編曲家としてもちろん素晴らしいのですが、僕がやろうとしていたラフなロックンロール・サウンドには向かなかった。そこで小坂ディレクターから紹介されたのが伊藤銀次だったんです。
大瀧:で、「アンジェリーナ」のリフは? 佐野くんのアイデアですか?
佐野:あれは僕です。
大瀧:あれを聞いて思い出した曲があるの。ジャニー・グラント。
萩原:あ、ずばり「トライアングル」ですか。61年の。
大瀧:うん。僕もシリア・ポールの「こんな時」で同じリフを使っているんだけど、この曲に通じるものを感じて。当然、佐野くんは「トライアングル」にもシリア・ポールにも深い影響を受けているわけじゃないだろうけども、このリフを想起させてくれる人だから共通項があるに違いないと注目してたの。まさに”トライアングル”つながり。

大瀧さんが佐野さんの曲に注目するポイントとなった「アンジェリーナ」のリフってどこの部分のことなんでしょうか。

ちなみにジャニー・グラントの「トライアングル」というのはこの曲。




この曲の特にイントロの部分を大瀧さんは「こんな時」でほぼそのまま引用しているんですが、でも、その部分が佐野さんの「アンジェリーナ」にはなかなかつながりませんね。

いろいろ考えてどうやら大瀧さんが言っているのは「今夜も愛をさがして」が繰り返されるところでしょうか。「今夜も愛をさがして」と歌った後に出てくるフレーズ。

ちなみに佐野さんは後年ライブで歌う時も、そこのフレーズは変えていないですね。


さて、佐野さんは自分の意思に反して用意された大村さんのアレンジにかなり不満を抱いていたような話がいくつか残っているので、佐野さんは大村さんと確執があったかのような内容の話がネット上にもあります。でも、佐野さんは自らプロデュースするようになってからも、アレンジャーに大村さんを使っているんですね。かの名作『SOMEDAY』のアルバムに収録されたいくつもの曲のストリングス・アレンジのところに大村雅朗の名を見ることができます。その事実からも佐野さんが大村さんのアレンジを高く評価していたことがわかります。「麗しのドンナ・アンナ」や「真夜中に清めて」でのロマンチックな弦はたまらないですね。

気になるのは「サムデイ」。これはクレジットされていないけど、やはり大村さんがストリングス・アレンジをしているんでしょうか。


そのアルバム『SOMEDAY』と並行してレコーディングしていたのが『ナイアガラ・トライアングルVOL.2』。このアルバムのクレジットを見るとSANO’s sideのところに大村雅朗の名前を見ることができます。やはりストリングス・アレンジ。

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『ナイアガラ・トライアングルVOL.2』に収録されている佐野さんの曲でストリングスを最もよく聴くことができるのはB面2曲目の「週末の恋人たち」ですね。大好きな曲です。

エンディングで長くひっぱられるストリングスの音をバックにしてピアノの同じフレーズが繰り返されて曲がフェードアウトして、次の大瀧さんの「オリーブの午后」が始まるところは何度聴いても鳥肌が立ちます。僕にとっては「週末の恋人たち」は「オリーブの午后」の前になくてはならない曲になっているんですね。

そういえばと思って『ナイアガラ・トライアングルVOL.2』30周年記念盤のボーナストラックに収められたカラオケを聴いたら、大村さんの弦をさらにはっきりと聴くことができました。ということで今日の文章はそれを延々とリピートしながら書いています。

大村さんの弦のアレンジは奇をてらうことなくとてもオーソドックス。でも最高にロマンチックなんですね。次の「オリーブの午后」の後の「白い港」の、井上鑑さんの華麗なアレンジとは対照的です。井上さんのアレンジももちろんロマンチックだけど。


今となってはという話になりますが、1曲だけでも大瀧さんの作曲した曲を大瀧さんのプロデュースのもとで大村雅朗さんがストリングスアレンジした曲を聴いてみたかったですね。


ということで長かった大村雅朗さんの話も今日で終わり。明日からちょっとバタバタとした日が続くので、しばらくブログを休むことになりそうです。また気持ちのゆとりができたら書きます。


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by hinaseno | 2017-07-30 14:45 | ナイアガラ | Comments(0)