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by hinaseno
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2017年 01月 28日 ( 1 )



「快盗ルビイ」の「Each Timeヴァージョン」という言葉をネット上のサイトで見つけたものの、それが収録されているのは非売品のプロモーション用のレコードのB面だと書かれているのに同じサイトのそのレコードの説明にはEach Timeヴァージョンのことは一言も触れておらず、B面は「On Air Version」というもので『大瀧詠一SONG BOOK VOL.2』に収録されているものと同じとの記載があるだけ。なんだかわけがわからない。

ってことでそのサイトを運営している方に事の真相を尋ねてみようかと思ったけれど、運よくその非売品のプロモーション用のレコードを手に入れることができたので、ジャケットやらレコード盤を目を皿のようにしてくまなく見てみました。でも残念ながらどこにも「Each Timeヴァージョン」なんて記載はありません。書かれているのは「On Air Version」だけ。曲は『大瀧詠一SONG BOOK VOL.2』に収録されているエンディング付きのヴァージョンとまったく同じ。なんだかな~と思っていたときにハッと気がついたことがあったんですね。実際には1週間ほど前に「快盗ルビイ」のカラオケ・ヴァージョンを聴き続けていたときに気がついたことでしたが。それにつながったんですね。

もしかしたら、僕が聴いていないラジオ番組、あるいは僕が読んでいない本のインタビューで、大瀧さんは「ボール・ルーム・ヴァージョン」に対して便宜上「Each Timeヴァージョン」という言葉をぽろっと使っていたのかもしれなと。そして僕が気がついたことはまさにその確かな証拠ではないかと。なんだか『銀座二十四帖』のあの場所を見つけたときと同じ気分になってしまいました。

これを説明するためには非売品のプロモーション用のレコードのA面に収録された「ボール・ルーム・ヴァージョン」のことから話を始める必要があります。


僕が初めて「快盗ルビイ」の「ボール・ルーム・ヴァージョン」を聴いたのは1989年1月5日放送の「新春放談」でした。この頃の新春放談は萩原健太さんの番組で放送されていたので、萩原健太さんが司会をする形での大瀧さん、山下達郎さん、そして健太さんの3人の対談になっています。その「快盗ルビイ」に関する話から。


萩原:大瀧さん久々のアイドルもの、アイドル・ポップですね。今回は映画音楽ということで結構…
大瀧:和田誠さんということで、映画を見るようになったのも小林信彦さんとか和田誠さんとか、そういう本を読んで古い映画とかを見て、それで理解がいっそう深まったというかね。だからそういうことがあるんで、そういうお話をいただいて、一度そういう話であればね、これはまたとない機会だと思って。
萩原:今回も結構凝ってますよね。
大瀧:でしょうかね。普通にやったんですけどもね。
萩原:面白かったのは、もうすでにベストテン番組とか歌番組とかに出てきてて、その流れの中で聴いたときのこの曲っていうのはおもしろい響き方をしてますね。
大瀧:本当は映画の中だけで使われてもらえればホントによかったんだけどね。本当は。
萩原:まあ、そうですよね。その辺、両立させるの難しかったでしょ、ある意味じゃ。
大瀧:両立も考えなきゃいけないでしょ。たとえばだから映画だからっていうことでぐっと強引に押そうと思えば押せるわけなんだけども、テレビとか出て歌ったりもしなきゃいけないし、なんかすごく難しかったですよね、そういう意味ではね。
萩原:まあ、でもその折衷のところに…
大瀧:折衷のところでしたね、ちょうど。
山下:大瀧さんの作る音はテレビで再現するのが難しいでしょ。
大瀧:音自体は、前からここ7、8年ぐらいは。それは歌う人が気の毒でね。それはまあ山下君も同じことで、よくわかってると思うんだけれども、とびっきりの音をレコーディングで作っちゃって、そのカラオケで気持ちよく歌うわけだから、それと同じオケには絶対になり得ないわけなんですよね。そういうライブというのは。歌う人がいつも、あっ、こういうのじゃない、こういうのじゃないっというふうに思ったりするからね。歌う人が大変なんですよね。そう意味では。ライブはね。レコードはよく、彼女(小泉今日子さん)は歌っていると思いますよ。
萩原:でも、ホントに久しぶりのレコーディングで…
大瀧:レコーディングはクレージーキャッツ以来でしたからね。
萩原:(笑)
大瀧:3年ぶりぐらい。
山下:トニー谷以来ですかね?
萩原:スタジオにこもったのは。
大瀧:一応はね。昨年はトニー谷のダンス・ミックスというのでスタートしましたから、ずっとお笑いの路線で行ってましたけれども。
萩原:今年はキュートなポップスものにきたわけですけども、今日はちょっとあの「ボール・ルーム・ヴァージョン」というのをね。
大瀧:これ、シングルでいつもラジオとかでかかっているのじゃなくて、特別なヴァージョン。
萩原:これの方がね、途中のサビなんかのところの遊び心の部分。結構色々聴かれてきたりして。
山下:どう違うんですか?
大瀧:「ボール・ルーム・ヴァージョン」はですね、一発録りの音なんですよ。で、シングルで出したのはドラム以外を全部少しクリアにしようということで全部ダビングして、少し、ほんのちょっとビートを少しつけたという。で、こっち(「ボール・ルーム・ヴァージョン」)はゆったりめに、聴いてるとのんびりしちゃうというか。これをだから、あれなんですよね、ちょっと長くなって申し訳ないんだけど。
萩原:いえいえ。
大瀧:映画館なんかでレコード・ヴァージョンをそのまま聴くとシラケるんですよ。
山下:確かにね。
大瀧:で、それから外向きのテンポっていうのはちょっと速くて、一時間半くらい座ってて聴いてると速いテンポをやられると落ち着かないんですよ。で、映画館で聴いてちょうどいいテンポというのをテレビとかそういうところで聴くとホントに遅いんです。
山下・萩原:(笑)
大瀧:何年か前の、ってうふうにどうしてもなっちゃうんです。
山下:確かにね。
大瀧:で、同じテンポで、ノリを変えてやってみたんです。ゆったりしたのと、ちょっとアップテンポと。そういうことができるのかどうかっていうのをちょっとやってみたんですけども。
山下:深い!

改めてこれを聴いてそうだったのかということばかり。いくつも目からウロコが落ちてしまいました。

大瀧さんが「快盗ルビイ」として最初にレコーディングしたのがまさに「ボール・ルーム・ヴァージョン」だったんですね。例によって一発録り。大瀧さんの話の中にあるように「映画の中だけで使われ」るものとして作ったようですね。でも、ラジオでもオン・エアーするためのシングル盤も出し、さらにテレビでも歌うのにそれをそのまま使うのはどうかと考えて、で、テンポは代えないけれどもアップテンポに感じられるようにダビングをして作ったのが「オン・エアー・ヴァージョン」。

さらに、よく聴けばわかるのですが、実際にシングルカットされたヴァージョンは、その「オン・エアー・ヴァージョン」の最後の♫ルビ・ドゥビ・ドゥビ・ドゥビ、ジャジャジャジャン♫の部分が出てくる前にフェードアウトさせたもの。

ところが、どうやら映画では(実は見ていません)大瀧さんとしては最初に映画に使われることを考えて作った「ボール・ルーム・ヴァージョン」ではなく、「オン・エアー・ヴァージョン」をさらにフェードアウトした「シングル・ヴァージョン」を使ったようですね。

ということで「ボール・ルーム・ヴァージョン」も「オン・エアー・ヴァージョン」もボツになったようです。ただしそれらをオクラ入りさせてしまうのはもったいないと考えた小泉さんのディレクターの田村さんがそれをいろんな形で公にしていったんですね。でも、なんの説明もないから、まるでそれらがあとで別個に作られたように思ってしまっていたわけです。


さて、それではなぜ、そのエンディング付きの「オン・エアー・ヴァージョン」が「Each Timeヴァージョン」と呼べるものなのか。

これに関してはまた次回に。

それにしても「快盗ルビイ」は深い! 深すぎる!


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by hinaseno | 2017-01-28 12:26 | Comments(0)