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by hinaseno
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Springsville in Tokyo #16 - 縁は異なもの味なもの


昨日、最後に鷲田清一先生の「折々のことば」を紹介したら今朝はなんと小関智弘さんの言葉。


「野に雑草という名の草がないように、工場には雑用という名の仕事はない」

小関さんは大田区で長い間旋盤工として働いていた作家。大田区の工場で働く職人を描いた作品が多く、今日の言葉も『どっこい大田の工匠たち』から引用されています。

そういえばと思って調べたら、小関さんは馬込文学圏(馬込文士村)の生まれ。ということは間違いなく山王書房にも通っていたはず。小関さんの何かのエッセイに山王書房や関口良雄さんのことが書かれているかもしれません。ちなみに僕が小関智弘という作家のことを知ったのは、平川克美さんでした。平川さんは小関さんにお会いされているんですね。


さて、『森崎書店の日々』のことをもう少し。この喫茶店のシーンで向こうの方にちらっと写っているのが岡崎武志さん。

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実は関口直人さんにお会いした前日に関口さんは岡崎さんの還暦を祝うイベントに行かれたようです。そのパーティは岡崎さんの新刊の『風来坊ふたたび』の出版を祝う会もかねていたようで、世田谷ピンポンズさんがその詩集をもとにした歌を歌っていたんですね。おひさまゆうびん舎の常連さんもこのイベントに行っていたみたいだけど、関口さんのこと気づいたでしょうか。

それにしても関口さんの話は興味深い話ばかり。

一番興味深かったのはこのレコードにまつわる話でしょうか。まさに秘話。

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関口さんが作曲した「海の底でうたう唄」。歌っているのは当時、テレビですごく人気のあったモコ・ビーバー・オリーブという3人組のグループ。この真ん中にいるオリーブことシリア・ポールをのちに大瀧さんがプロデュースするんですね。いや、ほんとうに縁は異なものです。

このレコードのジャケットの上の方に「ヤングが選んだ、ヤングの歌!!」なんて言葉がありますね。これはどういうことかというとレコードの解説にも書かれていますが、実はこの曲はサンケイ新聞のヤング面で募集していた「サンケイ・ヤング・ヒット・チューン」の第1回の優勝曲なんですね。これにまつわる話がおもしろすぎたんですが、残念ながらいろいろと問題がありそうなのでここには書けません。

この曲もいくつもの偶然から生まれていたんですね。少し切なくなるような話も含まれていて。これが聞けただけでも本当にお会いできてよかったです。でも正直言えばもっと時間がほしかった。今度は関口さんのお好きなお酒をいっしょに飲みながら(僕はビールしか飲めないけど)。

酒といえば関口さんとお会いした2日後に、なんと関口さんがテレビに映ったんですね。『太田和彦ふらり旅いい酒いい肴』という番組。

関口さんがよく行く三軒茶屋の居酒屋が映るんですが太田和彦のとなりで楽しそうに酒を飲まれているのが関口直人さんです。これはたまたまではなく店の人からぜひということだったようです。

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この番組では直人さんが話す場面はあまり映りませんでしたが、実際に目の前で愉快そうに話をされる直人さんの姿を見ていたら、いろんな本で読んでいたお父さんの良雄さんの姿が重なってきて、なんともいえない嬉しい気持ちになりました。

そういえば夏葉社の新刊『東京の編集者 山高登さんに話を聞く』では関口良雄さんの話が何度か出てくるんですが「宇野千代さん」の章にこんな話が。それは宇野千代さんの『薄墨の桜』という作品を担当していた時のこと。


原稿がなかなかあがってこなくて、催促のために那須にある宇野さんの別荘に伺ったんです。「お友だちがいたら連れていらっしゃい」とおっしゃるから尾崎士郎先生と親しかった関口良雄さんを連れて、そうしたら宇野さん、とても喜んでくださって。
 あの日は本当に楽しかったですね。宇野さんが「健康のためにみんなで民謡を踊るのだから、あなた方も参加しなくては駄目よ」とおっしゃるから、食事のあとにみんなで民謡のレコードに合わせて踊ったんです。そうしたら、関口さんが宇野さんのお弟子さんのワンピースを着て踊りはじめたものですから、みんなでお腹をかかえて笑いました。

関口良雄さんのエピソードってこんなのばっかり。本当にいろんな人から愛されていたんだなと思います。その『東京の編集者』の「宇野千代さん」に収録されているこの写真。

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向こう側で何かを覗き込んでいるのが関口良雄さんですね。直人さんに教えられて初めて気づきました。なんだか宇野さんをはじめその場にいる人がみんな良雄さんに注目しているようで、なんとも微笑ましい写真です。

で、直人さんもそんな良雄さんの人柄をそのまま引き継がれているんですね。「ゴー!ゴー!ナイアガラ」のシリア・ポール特集のときに大瀧さんが直人さんのことを話される語り口からも、大瀧さんが直人さんをいかに愛していたかがよくわかります。


そういえば関口さんから聞いて知ったんですが「海の底でうたう唄」はLe Couple(ル・クプル)というグループがカバーしていたんですね。調べたらデビューシングル。これですね。




Le Coupleといえばテレビ番組の主題歌だったこの曲が大好きで、CDも買いました。




タイトルは「縁は異なもの」。

関口直人さんとのことを考えると、まさに「縁は異なもの味なもの」。もう一度是非お会いしたいです。


by hinaseno | 2017-05-27 12:28 | 雑記 | Comments(0)