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by hinaseno
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動き出した甲板(デッキ)は 君の人生運び去る


東京行きの準備が一段落したときに、ふと、あるきっかけで(内緒)『大瀧詠一Writing & Talking』に収められた「Eiichi Ohtaki: Return of the Giant」と題された渋谷陽一インタビュー(『ロッキング・オン・ジャパン』1987年4月号掲載)を久しぶりに読み返しました。このインタビューは渋谷さんの遠慮のない(遠慮なさすぎ)質問のおかげで、大瀧さんの興味深い発言をいくつも引き出しています。

中でもオッと思える話があったので東京行きの前に急遽書くことにしました。戻ってからはきっと書けないだろうと思ったので。


先月末に、おひさまゆうびん舎で行われた益田ミリさんの『今日の人生』を語り合うイベントのために作ったCDで、「今日」の曲と「人生」の曲を7曲ずつ入れたのですが、それについてこんなことを書きました。


「今日(today)」の中には「今日」という言葉のついた日本人の曲を2曲いれましたが、「人生(life)」のほうは「人生」という言葉のついた日本人の曲は1曲も入れていません。ちょっと”重い”曲が多いなという判断。ただしバートン・クレーンが日本語で歌った「人生はかない」は入れました。

日本語で「人生」と歌われるものには”重い”曲が多いと。もう少し言えば、「人生」という言葉が曲の中で歌われるときの言葉の響きにちょっと、いや、かなり抵抗があるんですね。でも、不思議なことに外国人であるバートン・クレーンさんが片言の日本語で歌った「人生」という言葉には全然抵抗がない。

で、選曲をしているときに、大瀧さんの曲の中に「人生」と歌っているものがあるんだろうかと考えたんですね。でも、全然浮かばなかったので、きっと1曲もないんだろうと思っていたら、なんとあったんですね。まさに『ロング・バケイション』の中に。B面2曲目に収録された「スピーチ・バルーン」という曲。


動き出した甲板(デッキ)は
君の人生運び去る


と。詞はもちろん松本隆さん。

この「スピーチ・バルーン」の「人生」について大瀧さんがこんなことを語っていました。大瀧さんも相当抵抗があったみたいです。


「スピーチ・バルーン」じゃ、「人生」まで出てくるんだよ。俺もう嫌でさあ。「君の人生」だよ。カンベンしてよって思ったけどね。自分の中のプロデューサー的部分としては、そんなの歌えばいいじゃない、って思ってんだけど、歌手として嫌なの。だから1人でブツブツ言ってんの。でも後で聞くとねえ、ちょっと他の人が歌う「人生」や「お前」とは違うっていう風に自分では思うんだよね。嫌な言葉ほど表現のしかたが上手いんじゃないかと思うんだよ。

ということで改めて「スピーチ・バルーン」のその部分を聴いてみたら、確かに日本語の歌にありがちな”重さ”とか”湿り気”が全くないですね。気がつかないはず。「じんせい」の「せい」にあたりの息の抜き方はさすが、という感じです。


でも、改めて考えてみると、松本さんって大瀧さんが「人生」なんて言葉を嫌いだってことはきっと知っていたはず。そこをあえて入れているんでしょうね。大滝はどう歌うかって。


ところで益田ミリさんの「今日の人生」のタイトルがときどきこんなふうに「人生」という字が白抜きの言葉にされているの気づいてました? ほかにも「の」が白抜きになっていたり「今日」が白抜きになっていたりと、いろんなパターンがあります。

この白抜きの人生にはどんな意味があるんだろう。

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by hinaseno | 2017-05-07 08:00 | ナイアガラ | Comments(0)