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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno

たとえば、星を見るとかして(その1)



「人の手が届かない部分があるんだよ。天使にまかせておいて、人は結果を見るしかない部分。人は星の配置を変えることはできないだろう。おもしろい形の星座を作るわけにはいかないんだ。だから、ぼくたちは安心して並んだ星を見るのさ」
「大熊座が、新しいクマの玩具の宣伝のために作られたわけじゃないからか」


これはある小説の中の会話の部分。この小説と出会わなければ、僕の人生はかなり違っていたのではないかと思えるような小説の一つ。つい先日、ちらっとだけ触れたのだけど。

昨日久しぶりにその文を取り出してぱらぱらとめくっていたら、「天使」という言葉を見つけておっと思い、さらに続きを読んだら「星」やら「クマ」が出てきたのでちょっとうれしくなって、つい引用したくなりました。ここのところずっと考え続けている楕縁のイメージにもつながっているし。


さて、最近は(も)いろんなことがあってどれからブログに書いていいやら困っています。中断したままの話もいくつか(も)あるし。

そのいろいろなことは一見直接には関係もなさそうなもののばかりなので、別のタイトルをつけて書いていけばいいと思ったけど、でも、僕の珈琲豆的楕縁の中ではすべてつながっているんですね。たぶん真っ赤な服を着た小さな天使が僕の手の届かないところでいろんなものをつなげてくれている。

空を見上げたら星々はただ散らばっているだけで、星座を構成する補助線の存在を知らずにぼんやりとながめているだけでは何も気づかない。でも、何かのきっかけで補助線を引かれて、改めて見たら思いもよらないつながりを発見したりする。

というわけで、最近あった出来事を一つのタイトルにまとめて書くことにします。そうした方が書きやすいので。


少し前に「セレンディピティ」という言葉を紹介しました。ほぼ日の学校長の河野通和さんが「ほぼ日の学校長だより」で紹介されていた「ふとした偶然から思いもかけない幸運にめぐりあうこと」という意味を表す言葉。

考えたらこのブログではそんなことばかり書いています。そんないくつもの「セレンディピティ」のうちでとびっきりの話といえば、やはりこの夏葉社の『昔日の客』にまつわる話。この本との出会いから、いったいどれだけの素敵な出会いが生まれただろう。

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今日書くのはこの『昔日の客』からつい最近生まれた素敵な話。


『本の雑誌』というのがあって昔から気になる記事があればときどき読んでいました。ほとんどは立ち読みだけど。最近ではまさに夏葉社の島田さんが連載している「本屋さんしか行きたいとこがない」を読んでいます。ずっと立ち読み。でも先日出た1月号は久しぶりに買ってきました。すごい記事が載っているという情報を得ていたので。

それは太田和彦さんの新連載「酔いどれ文学紀行」。太田さんが姫路に行ったときの話ですが、なんとこの中におひさまゆうびん舎が出てくるんですね。タイトルは「姫路城の『昔日の客』」。


通り角の質素な木造一軒家の黄色に塗った戸に「古本雑貨おひさまゆうびん舎」として。路上の籠で絵本などを売っている。階段を上がった二階は、大佛次郎『由井正雪』、田宮虎彦『荒海』、佐多稲子『月の宴』などの文芸書がぎっしり。……

で、こんな話が出てきます。


その奥に〈これは新刊です〉と貼紙されて並ぶ本は「第8回 夏葉社フェア」だ。


どうやら今年の9月から10月にかけて開かれていた夏葉社フェアのときに来られたようです。太田さんはそこに並ぶ本の中からある本に目を留め、そこに書かれている推薦文を読んでそれを買うことにします。それが関口良雄著『昔日の客』。


ここで僕がちょっと天使に代わって補助線を引いてみることにします。なんて冷静なふりをしていますが、本当のことを言うと、これってすごすぎる話なんですね。

それはこの日書いたブログのこと。タイトルは「縁は異なもの味なもの」ですね。こんな写真を貼っています。

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これは『太田和彦 ふらり旅 いい酒いい肴』のワンシーン。手前に映っているのが太田和彦さん。で、太田さんの向こうで酒を飲んでいるのがなんと関口直人さん。『昔日の客』の著者の関口良雄さんのご子息です。


これが放送されたのが今年の5月9日。この2日前に僕は東京で関口さんとお会いしていました。

この日の放送が収録された日には、どうやら関口さんは店長から呼ばれていたそうですが、番組でちらっと映ったシーンを始め、太田さんとは少し会話しただけのようです。太田さんは関口さんがどういう人かは知らずにいっしょに飲んでいたんですね。もしそこで『昔日の客』の話が出ていたならば、太田さんはすぐに東京のどこかの本屋に行ったはず。

結局太田さんはそれから半年後に、僕と最も縁のある本屋のおひさまゆうびん舎でそれを手に入れることになるんですね。なんとすごいというか素敵というか。縁というのは本当に不思議。

太田さんに教えたくなりますね、あの時、隣で飲んでいた人は実は…と。


さて、『昔日の客』を手にしてレジに向かった太田さん。


 その一冊を手に若い女性店主にうかがうと、夏葉社の本が好きで毎年秋にはフェアを開く。社名の如く夏葉の緑樹を切り紙で手作りしたコーナー装飾は深い愛情を感じさせた。

初めて店にやってきた見知らぬ男性が『昔日の客』を手にとってレジにやってくる。大好きな夏葉社の本のことを訊かれる。このときの窪田さんの喜びよう、眼に浮かびますね。

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by hinaseno | 2017-12-18 15:06 | 雑記 | Comments(0)