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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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「カナリア諸島にて」が生まれたとき(3)


今日の話のキーワードは「風」ということになるでしょうか(数日前に、キーワードは「夢」と言っていたのに、「夢」の話はちっとも出てこない)。


キーワードといえば、先日紹介した木崎義二さんによるインタビューの最後に「今いちばんいいたいこと」として、大瀧さんはこう答えられていました。


ぼくが出したいのは直接的な「音」そのものではなく「雰囲気」なんです。ナイアガラの旧譜に関して一線級のミキサーは「あれが音か?」という。また、一線級のディレクターは「まるで、デモ・テープをレコードにしたみたいだ」と、決して褒めた言い方はしない。確かに「音」は悪い。つくりも粗い。しかし、確実に「雰囲気」は録音されている。こんどのレコードも当然「雰囲気」中心で、また「音」もよく、つくりも丁寧な出来上がりとなっています。


考えてみたら、僕がはじめて「ロング・バケイション」に針を下ろしたときに魅了されたのは、まさにあのジャケットを含めての「雰囲気」でした。


で、その「雰囲気」が最初に大瀧さんの中でできあがったのが1979年の夏だったんですね。

ということで1979年の夏のことをもう少し考えてみたいと思います。実は大瀧さんが本がストーリーを書いた永井博さんのこの絵本が出たのがまさに1979年の夏。

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本のタイトル「A LONG VACATION」を考えたのは大瀧さん。当初僕はこの本を書店で見たときに大瀧さんの『A LONG VACATION』のアルバムが売れたので、それに便乗して、大瀧さんの名前もちゃっかりと載せて出したものとばっかり思っていたんですが(だから何度か手に取ったものの結局買わなかった)、そうじゃないことに気づいたのはずいぶん後のこと。

レコーディングが終わってアルバムのタイトルを決めるときに、この絵本のタイトルが収録された曲のイメージにぴったりということで、表紙に使った絵も含めてそのままアルバムタイトルにしたんですね。

ちなみにこの本の発行日は1979年7月25日。なんと村上春樹の『風の歌を聴け』と全く同じ。

「カナリア諸島にて」が生まれる前に、大瀧さんがこの絵本に添えられた絵を見ながら、どこか遠く離れた南の島で過ごしている物語を考えていたのは間違いありません。


「カナリア諸島にて」が生まれる前の1979年6月、大瀧さんは2曲の重要な曲を作っていました。いずれも他人への提供曲。

1曲目はアン・ルイスのために書いた「サマー・ブリーズ」。結果的にはボツになってしまうのですが、のちに松本隆さんの詞がついて「Velvet Motel」になる曲。「サマー・ブリーズ」を詞を書いたのは大瀧さん。依頼する側の要望もあったかもしれませんが、まさに永井博さんの絵本の絵に描かれた夏の海辺にふいている爽やかな風を曲全体に感じることができます。大瀧さんの中に一つの確かな「雰囲気」がつくられていたことがわかります。

で、「サマー・ブリーズ」の次に作ったのがこれ。




歌っているのはスラップスティックという声優のグループ(大瀧さんはこのグループにいくつもの重要な曲を書いています)。

一聴してわかるようにのちに「恋するカレン」になった曲ですね。これはボツになってはいないので「恋するカレン」が出たときにはこの曲の盗作だとずいぶん言われたそうです。

ちなみにこの曲は大瀧さんが曲先で作ったもので、あとで詞がつけられています。タイトルは「海辺のジュリエット」。舞台はやはり海辺(松本さんはのちにこの曲に「浜辺」という言葉が出てくるものの冬の室内の詞を付けました)。

で、次に生まれたのが「カナリア諸島にて」。一つの流れができていたというか、奇跡的とも言っていいほどの名曲がこの1979年の6~7月に立て続けに生み出されていたわけです。


ところで「カナリア諸島にて」が生まれたときに大瀧さんが村上さんの『風の歌を聴け』を読んでいたというのは、もちろん僕の希望的な要素を大量に含んだ妄想に過ぎないのですが、でもその頃、大瀧さんの体の中に(一時期の相当鬱屈した状態を通り越して)爽やかな風が吹き始めていたことは間違いありません。


「カナリア諸島にて」ができたときにはまだ詞は付いていなかったのですが、松本さんはまさに大瀧さんがイメージしていたのにぴったりの詞をつけてくれるんですね。「松本隆が『カナリア諸島にて』の歌詞を電話で読んでくれたとき、 体が震えた」と大瀧さんはのちに語っていました。

曲で何度も繰り返されるのがこのフレーズ。


カナリア・アイランド
カナリア・アイランド
風も動かない



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by hinaseno | 2017-09-17 15:18 | ナイアガラ | Comments(0)