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by hinaseno
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牛窓、白い港、白い貝のブローチ、そして白い猫(3)


久しぶりに想田和弘の『観察する男』(ミシマ社)を読み返しています。それにしてもミシマ社は僕にとってうれしくなるような本をいっぱい出してくれていますね。


想田さんが初めて牛窓にやって来たのは2012年の夏。奥さんの母親が牛窓出身という縁で、たまたま空き家となった牛窓の海岸近くの家を借りてその夏を過ごされたんですね。で、牛窓に興味を持った想田さんは翌年2013年の夏休みも牛窓で過ごすことにします。

想田さんに興味を持ち始めてツイッターなどで想田さんをチェックするようになったのがその少し前のことだったので、想田さんが牛窓にいるというツイートを読んだときにはびっくりでした。でも、まさかそこで映画を撮影するなんて思いもよりませんでした。


牛窓で過ごしていたある日、想田さんは「やっぱり、ここで映画を撮っておいたほうがいいんじゃないかな」と漠然と思うんですね。で、その年の秋に再び牛窓にやって来て撮影を開始します。

撮影を開始したのが2013年11月4日。その日のツイッターに「今日から早速撮影を始めました~。」と書き込んでいます。

翌11月5日にはこうツイートしています。


僕の映画は常に「とりあえず撮っておこう」で始まります。

そう、想田さんの観察映画はこういうものを撮ろうという計画がないところから始めるんですね。

その後、こんなツイートが続きます。


2013年11月7日
今日は朝から晩までカメラをまわしっぱなし。さすがに死んだ。
2013年11月11日
牛窓での新作撮影、続行中です。映画の輪郭もおぼろげながらみえてきました。でもそれが何なのか今は言えない。

で、撮影が終了したのが11月20日。合計17日間の撮影。


ところで『観察する男』によると、想田さんは「観察映画の十戒」というものを持っているんですね。非常に興味深いのでここに列挙しておきます。


①被写体や題材に関するリサーチは行わない。
②被写体との撮影内容に関する打ち合わせは、(待ち合わせの時間と場所など以外は)原則行わない。
③台本は書かない。作品のテーマや落としどころも、撮影前やその最中に設定しない。行き当たりばったりでカメラを回し、予定調和を求めない。
④機動性を高め臨機応変に状況に即応するため、カメラは原則僕が一人で回し、録音も自分で行う。
⑤必要ないかも? と思っても、カメラはなるべく長時間、あらゆる場面で回す。
⑥撮影は、「広く浅く」ではなく、「狭く深く」を心がける。「多角的な取材をしている」という幻想を演出するだけのアリバイ的な取材は慎む。
⑦編集作業でも、あらかじめテーマを設定しない。
⑧ナレーション、説明テロップ、音楽を原則として使わない。
⑨観客が十分に映像や音を観察できるよう、カットは長めに編集し、余白を残す。その場に居合わせたかのような臨場感や、時間の流れを大切にする。
⑩制作費は基本的に自社で出す。作品の内容に干渉を受けない助成金を受けるのはアリ。

③の「行き当たりばったり」というのがいいですね。「行き当たりばったり」というのは大瀧さんの好きな言葉でもあります。

『観察する男』にはこんな言葉もありました。


観察映画の場合、「行ったらたまたまそうだった」というだけのこと。状況をファインドアウトしただけですからね。僕がアレンジしたわけでも、探していたわけでもない。そこにあったものをそのまま撮っただけ。

そういう形で2週間あまり牛窓を取り続けたわけですが、それを編集しているときに想田さんはあることを考え始めるんですね。撮影から1年近く経った2014年10月5日にしたツイートにこんなことを書いています。


牛窓で撮影したドキュメンタリー映画を編集している。まだ分かんないけど、もしかしたら撮った素材から1本ではなく2本の映画ができるかも? なんとなくそんな予感。


ということでたくさん撮影した中から「牡蠣工場」の素材だけ集めて作ったのが『牡蠣工場』。つまり『牡蠣工場』には、牛窓に暮らす人々の生活の風景や、牛窓の街並みがほぼすべてカットされたんですね。

『観察する男』でこの話を読んだときにはまだ『牡蠣工場』を観ていなかったけど、『牡蠣工場』以上にもう一つの牛窓の物語を観たくなってしまったんですね。

で、なんと今、どうやら想田さんはそのもうひとつの牛窓の物語の編集を進めているみたいです。いや~、楽しみですね。「シロ」はきっと、そのもう一つの牛窓の物語にも登場しているはず。

ああ、また「シロ」に会いに行きたくなりました。

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by hinaseno | 2017-08-16 14:13 | 雑記 | Comments(0)