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by hinaseno
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“(I Play The) Part of a Fool” was written by Jack Keller, not by Barry Man (2/2)


Berry(ベリー)のことを書こうと思っていたら、チャック・ベリーが亡くなりました。つい先日、イギリスのACEから彼の作品集が出たばかり。もし、ジャック・ケラーの作品集が出されるとしたら、やっぱりACEのようなちゃんとしたところから出してもらいたいと思い続けています。


さて、ジャック・ケラー自身が作った作品リストを見ると「(I Play The) Part of a Fool」という曲はロッキー・ハート(Rocky Hart)、ロビン・ルーク(Robin Luke)、サル・ミネオ(Sal Mineo)、メロー・キングズ(Mello-Kings)の4人のアーティストに歌われています。このうち知っているのは最後のメロー・キングスだけ。「Tonite, Tonite」だけですが。

最初に「(I Play The) Part of a Fool」を録音したのはおそらくロビン・ルーク。これがロビン・ルークのレコード。ネットの記載を見ると発売は1961年5月。

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レーベルにははっきりと(Keller - Hunter)と記載されていますね。Kellerはもちろんジャック・ケラー。Hunterはハンク・ハンター。ところでこのときの曲のタイトルは「Part of a Fool」となっています。これがその曲。




ところで、同じ年か翌年に出たのがロッキー・ハート(Rocky Hart)のこのレコード。

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曲名は「I Play The Part Of A Fool」となっていて、なんとレーベルには(Hank Hunter, Barry Mann)の名前がクレジットされています。曲は全く同じなのに。




で、前回紹介したNot Now Musicから出た『The Songs of Mann & Weil - 60 Original Classics』というCDでは、いずれもタイトルを「I Play The Part Of A Fool」にしてバリー・マン作曲の曲として収録しています。

さらに確認するとアーティスト名はRocky Hart & The Passionsなんて名前になっていますが、そんな記載のあるレコードはどこにも見当たりません。いい加減。廉価版のCDというのはそういうのはおかまいなしなんですね。

で、これを書きながら改めてネット上にアップされているロッキー・ハートのシングル盤の画像のいいもののレーベルを拡大してよくみたらなんとBarry Mann(バリー・マン)ではなくてBerry Mann(ベリー・マン)となっています。

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これをみてもこのシングルがいい加減な形で作られていることがわかります。

ちなみにサル・ミネオとメロー・キングズの歌ったものはシングル盤としては出ていなくて、CDのボーナストラックとして収録されているみたいですね。サル・ミネオのCDの方は確認できなかったんですが、メロー・キングスのほうの作曲者のクレジットは驚いたことにLevister。これ、メロー・キングスの曲をいくつも書いているマネージャーのDick Levisterのことのようです。曲としてはこのバージョンがいちばんいいですね。




ちなみにこの曲のタイトルは「I Played The Part Of A Fool」! なんと動詞が過去形になっています。


ところで、この曲について調べていたら、なんとアゲインの石川さんのサイトにぶつかりました。石川さんがアゲインを始める前にやられていた青空音楽会の第3回目の記事。これですね。イベントが行われたのは2002年10月5日。

このときのテーマは「バリー・マンVSキャロル・キング」。

そこでかかった曲のリストが掲載されているのですが、「(I Play The) Part of a Fool」に触れられているのはこの部分。


Section 6: Mystery Train
I Play the Part of a Fool/ Rocky Hart (Barry Mann-Hank Hunter, GLO 216, 1961)
N.B. The song title cannot be found on BMI song list of Barry Mann.
Part of a Fool/ Robin Luke (Jack Keller-Hank Hunter, Dot 45-16229, 1961)
N.B. The song title cannot be found on BMI song list of Barry Mann.
I Played the Part of a Fool/ the Mellokings (-, Relic 7008, 1991)
N.B. Printed only “Unreleased” on the back cover of the reissue CD album.
Part of a Fool/ Sal Mineo (-, Taragon TARCD-1092, 2002)
N.B. Printed “Unknown” at the item of composers on the liner notes of the reissue CD album.


この「Mystery Train」というタイトルで紹介されている曲はどうやらバリー・マンの作曲リストには載っていない曲を集めたようで、「(I Play The) Part of a Fool」もロッキー・ハートのシングルにはバリー・マン(実際にはベリー・マンですが)と記載されているけれども、リストには見当たらないとの但し書きが付けられています。

バリー・マンの作品リストがどういうものなのかわかりませんが、それに載っていないのは当然。なぜならばこの曲は間違いなくジャック・ケラーが書いたものだから。


ところで、以前、ジャック・ケラーの「Beats There A Heart So True」という曲にまつわる話をしたときに紹介したRich Podolsky 著『Don Kirshner: The Man with the Golden Ear』には章のタイトルとしてジャック・ケラーの曲が3曲使われていると以前書きました。ボビー・ヴィーの「Run To Him」、ペリー・コモの「Beats There A Heart So True」、そしてもう1曲が「The Part of a Fool」。実は章のタイトルとして使われた全部で28曲の中で、知らなかったのはこの曲だけ。

自分のパソコンにある曲をチェックしたら『Barry Mann Masterpiece Vol. 1』に収録されたロビン・ルークの歌った曲があったので、バリー・マンの曲かとそのままスルーしていました。

で、ジャック・ケラー自身が作った自作の曲目リストを細かくチェックしていた時に「The Part of a Fool」があって、あっと気がついたんですね。その章に書かれていることをかいつまんで紹介します。ジャック・ケラーの証言をはさみながらの話。


1961年頃、ジャック・ケラーは「One Way Ticket (To The Blues)」などの曲を共作したハンク・ハンターと「The Part of a Fool」という曲を作ります。ジャック・ケラーにとっては自信作だったようできっと大ヒットするだろうと考えていました。そのデモを歌っていたのがバリー・マン。バリー・マンは「Venus In Blue Jeans」をはじめとしてジャック・ケラーのデモをいくつも歌っていて、中にはそのままシングルにしてもいいような素晴らしいものがいくつもあります。

「The Part of a Fool」のデモを聞いた”黄金の耳を持つ男”ドン・カーシュナーはジャック・ケラーを連れて、いちばん高く買ってくれそうな人のところに曲の売り込みに向かいます。

会いに行ったのはアトランティック・レコードのジェリー・ウェクスラーとアーメット・アーティガン。ウェクスラーとアーティガンはドン・カーシュナーのことを友人というよりも競争相手と考えていたので、もともとあんまりいい関係ではなかったようです。でも、曲を聴くや、ウェクスラーとアーティガンはその曲にはヒットする可能性があることを認めます。ただ、そこで生じたのがお金の問題。どうやらカーシュナーはそれがヒットするはずだと考えてかなり高い値段をふっかけたみたいです。ウェクスラーとアーティガンは拒否。するとカーシュナーはじゃあ売らないとそのデモテープを持って立ち上がって帰ろうとすると、ウェクスラーとアーティガンがそのデモを奪い取ろうとして、なんとジャック・ケラーの前で3人がデモテープの奪い合いを始めたとのこと。結局カーシュナーがデモテープを奪い返して、結局ドット・レコードに所属していたロビン・ルークというシンガーによってレコーディングされます。でもチャートには入ることはありませんでした。


実は「The Part of a Fool」についての話はここまで。この話は基本的にはジャック・ケラーの証言をもとにして書かれていますが、ジャック・ケラーが嘘を言うはずもなく、このインタビューが行われていた時には「The Part of a Fool」がバリー・マンの曲としてCDに収録されているなんて知る由もありません。きっとこの本の著者も。


ここで僕なりに推測すると、「The Part of a Fool」は一応正式な形としてはドット・レコードが買い取ってロビン・ルークに歌わせたんだろうと思います。ところが何らかの形でこのデモが散逸して、それが出回ったのではないかと。ロビン・ルークの歌ったもののカバーだったらこんな混乱はおきなかったはず。ロッキー・ハートのシングルのクレジットがバリー・マン(ベリー・マンだけど)となっているのは、歌っているシンガーがバリー・マンと知っている人がいたんでしょうね。

もしバリー・マンの歌ったデモがきちんと保管されていたら、「Venus In Blue Jeans」などジャック・ケラーが書いた曲のデモがいくつか収録された『Inside the Brill Building - Complete Recordings 1959-1964』に収められたはずだから。

ということで長くなりましたが最後にジャック・ケラー(右)とバリー・マン(左)の写真を。二人はもちろん仲良しです。

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by hinaseno | 2017-03-19 12:48 | 音楽 | Comments(0)