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by hinaseno
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Springsville in Tokyo #23 - 大瀧さんと川本さんが立ったあの場所へ(2)


川本三郎さんと大瀧さんの2ショットが載った『東京人』2009年11月号で、大瀧さんは『秋立ちぬ』と『銀座化粧』についてこんな興味深いことを語っていました。


二作品を見比べて、ひとつ思いつきました。主人公を抜いた風景を作ったらどうか……。つまり「映画カラオケ」です。カラオケに歌手がいないように、映画の場面から役者を抜いてバーチャルな世界を作り、登場人物の視線でその世界を歩く。約50年、60年前の東京を歩いた結果、この二作品は約10年という時期を経て、レコードでいうならばA面とB面、続編でもあり姉妹編でもあるということがわかりました。「母ひとり子ひとり」という同じ設定のほか、さまざまなところでシンメトリックな構造になっています。今回お話しするのは、その体験談です。


ただのロケ地めぐりとは全然違うんですね。視点というか、着眼点が独特。きっと制作スタイルが自分と重なっていたんでしょうね。だからこそいくつもの驚くような発見があったわけです。

で、この2つの映画のシンボルというべき場所が新富橋でした。2つの映画に映された風景の中で、唯一同じ場所であったということもありますが、なによりもそこが物語の重要な場所だったんですね。

とりわけ『秋立ちぬ』で少年(秀男)と少女(順子)がはじめて出会うのがまさにこの新富橋の上。

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現在の風景と重ねてみるとこうなります。

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こちら側には当時の面影は何も残っていません。新富橋という橋は残っているものの、その下には築地川の流れはなく、なんと首都高速が走っていました。なんともはや。


ところでこれは映画のワンシーンではないのですが『秋立ちぬ』のスチール写真。新富橋の上で遊ぶ秀男と順子をとらえたもの。

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この写真の向こう側、つまり新富橋の東詰に見える看板に書かれているのが「宝来園茶舗」。看板の位置は変わっているものの「宝来園茶舗」は今も残っていて、大瀧さんと川本さんはその「宝来園茶舗」の看板の前で写真を撮っていたんですね。

僕も新富橋以上にこの「宝来園茶舗」の看板が見えたときがたまらなくうれしかったです。ああ、なくなっていなかったと。

これが現在の風景と重ねたもの。ここからだと現在の「宝来園茶舗」の看板は見づらいけど。

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さて、『秋立ちぬ』では「宝来園茶舗」の看板は映っていませんが、『銀座化粧』では坊やの背後にはっきりと「宝来園茶舗」の看板が映ります。

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ただしよくみると『秋立ちぬ』のスチールに写っている看板とはちがっています。字が右から読むようになっています。

『銀座化粧』の坊や(春雄)はこのあと橋の反対側に行って、『秋立ちぬ』の少年と少女が出会ったあたりで、橋の欄干から築地川を覗き込みます。そのとき彼もある人物に出会うことになります。

これがその人物が近づいてくるところ。

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で、映ったのがこの人。

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三島雅夫という俳優。映画では藤村(ふじむら)という役名で出ているんですが、この坊やの母親である田中絹代に何度も金の無心にやってくる情けない男の役。子供にちょっとした小遣いもあげることができない。


実は、昨日ブログを書いた後でちょっとおもしろいことに気がついたんですね。思わずニンマリしまいました。

この三島雅夫は『銀座化粧』の2年前の映画である小津の『晩春』にも出演しているんですね。それがまさに、あの服部時計店で原節子と会った(昨日映画を確認したら、待ち合わせをしていたわけではなくたまたま出会ったようです)あの「きたならしい」「不潔な」おじさま。ただし、こちらの役は大学の教授。原節子に「きたならしい」「不潔」と言われたのは再婚をしたから。

笑ってしまったのは原節子と会った時の服装。『銀座化粧』での服装とほとんどいっしょなんですね。ハンチング帽は同じもの?

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まるで、原節子さんと服部時計店の近くで食事をして別れた後にそのままこの新富橋にやってきたみたい(やってきた方角は違うけど)。服部時計店の近くでは高級そうな料理屋で食事をしていたのに(もちろん原さんに食事をおごったはず)、そこからほんの10数分の間にいつの間にか貧乏になって、小さな子供のお小遣いすらあげることができない情けない男になってしまったんですね。


ところで『銀座化粧』での三島雅夫の役名の「藤村(ふじむら)」というのはあの泰明小学校出身の島崎藤村からとったのではないかと大瀧さんは考えています。成瀬が映画に島崎藤村を絡めていると。映画では『藤村詩集』についてのちょっとおもしろいやり取りが出てきます。

このあたりの分析もやはり大瀧さん自身の制作スタイルに重ね合わせて考えているんでしょうね。


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by hinaseno | 2017-06-04 12:35 | 雑記 | Comments(0)