「ほっ」と。キャンペーン

Nearest Faraway Place nearestfar.exblog.jp

好きなリンク先を入れてください

「Beats There A Heart So True」#6


a0285828_12081808.jpg

今、手元に置いている一冊の洋書。

a0285828_12153151.jpg

タイトルは『Don Kirshner: The Man with the Golden Ear』。日本語に直したら「ドン・カーシュナー:黄金の耳を持つ男」。ドン・カーシュナーというのはアメリカン・ポップスのアイドル歌謡の作品を一手に引き受けて大成功を収めたアルドン・ミュージックを設立したアルさんとドンさんの2人のうちのドンさんのほう。その評伝ですね。彼は「黄金の耳を持つ男」と呼ばれていました。本の筆者はRich Podolskyという人。出版されたのは2012年。「アメリカン・ポップス伝」の資料として大瀧さんは間違いなくこの本を読んでいただろうと思います。

この本、できあがるまでにかなり長い年月をかけて関係者にインタビューをしたようなのですが、中でもとりわけ多いのがジャック・ケラーでした。ジャック・ケラーは「Beats There A Heart So True」を出した翌年の1959年にアルドン・ミュージックと契約。ドン・カーシュナーは会社のオーナーとはいえ年が近かったので結構親しい関係にあったんですね。

ドン・カーシュナーと親しい関係があったとはいえ、これだけ多く彼のインタビューがなされているということは筆者がジャック・ケラーのことを信頼していた証ですね。インタビュイーとして信頼する条件をあげるならば、まず第一に記憶が正確であること。嘘や大げさなことを言わないことでしょうか。あるいはある種の成功を収めた人にありがちな自慢話、手柄話のようなことも言わない。

そういえば山下達郎さんがジャック・ケラー特集のときに、いろいろとジャック・ケラーに関する資料を読んで知った彼の人柄をこんな風に語っていました。


「ジャック・ケラーという人はあまり欲がないといいますか、ガツガツしたところもなく、自分がヒットソングライターであるということをそれほど声高にアピールもしていない」

さらにこんなことも。


「自分の成功とか、身の丈に満足していた感じがします」

実際に会ったことはないけれども、なんとなくそんな感じがします。で、もう一つ、彼が積極的にインタビューに応じていたのは、何かを伝えようとする気持ちが人一倍強かったからにちがいありません。

でも、彼はこの本が出版される前の2005年に彼は亡くなります。筆者はまだ本の出版に向けてのインタビューを重ねている中での死だったようです。

この本は全部で28の章から成り立っています。面白いのは章のタイトルがすべて曲のタイトルからとられているんですね。作曲家別に見てみると28章のうち最も多いのがキャロル・キングの9曲。ヒット曲の多さからいって当然ですね。一応挙げておくと「Will You Love Me Tomorrow」「Halfway To Paradise」「Take Good Care Of My Baby」「Some Kind Of Wonderful」「The Loco-Motion」「Go Away Little Girl」「Up On The Roof」「It Might As Well Rain Until September」「One Fine Day」。

次がニール・セダカの7曲。「The Hungry Years」「Stupid Cupid」「Oh Carol」「Where The Boys Are」「Next Door To An Angel」「Breaking Up Is Hard To Do」「Love Will Keep Us Together」。

その次がジャック・ケラーの4曲なんですね。で、それに続いてバリー・マンの3曲となっています。あのバリー・マンよりも多いというところに筆者の思いが感じられます。ちなみにバリー・マンは「On Broadway」「Who Put The Bomp」「I Love How You Love Me」。


さて、ジャック・ケラーの書いた曲から取られたタイトルはまず「Everybody's Somebody's Fool」。コニー・フランシスが歌ったナンバー・ワン・ソングですね。で、ボビー・ヴィーの「Run To Him」。次はちょっと意外な曲ですが、ロビン・ルークという歌手が歌った「The Part Of A Fool」。この曲、なぜかよくバリー・マンの曲と間違えられていて、バリー・マンの作品集に収められたりしています。どうもバリー・マンと間違ってクレジットされているレコードがあるみたいですね。

そして最後が、そうペリー・コモの「Beats There A Heart So True」。本では最後から2つめの27章。

この章はジャック・ケラーが亡くなった後に書かれているんですね。ジャック・ケラーを追悼するために書かれた文章で、この本の主役であるドン・カーシュナーとはほとんど関係のない内容になっています。そのタイトルとしてとられたのが「Beats There A Heart So True」なんですね。

実は今回、ずっと「Beats There A Heart So True」という曲の話をしてきたのはこれを紹介したかったためでもありました。


ところでつい最近気がついたのですが、この本の扉にこんな言葉が記されていました。

a0285828_12163732.jpg

本の献辞として二人の名前が記されています。一人は筆者の奥さんのダイアナさん。そして、もう一人がジャック・ケラーなんですね。「この本を作ることができたのは、ジャック・ケラーの精神と音楽への深い愛情のおかげだった」と。


この本、とにかく素晴らしい本で、できればだれかが訳してくれないかなと思っているのですが、誰も訳してくれそうもないので、ではということでその「Beats There A Heart So True」の章を少しずつ訳していこうと思います。「Beats There A Heart So True」にまつわる話はさらに長くなりますが、ジャック・ケラーと、ジャック・ケラーにも負けないくらいの音楽に対する深い愛情をお持ちの石川さんに捧げます。アゲイン10周年おめでとうございますという気持ちをこめて。


[PR]
by hinaseno | 2017-02-16 12:17 | 音楽 | Comments(0)