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あなたの一番大切なものは何ですか? と訊かれたら、私は迷わず「記憶」と答える


今読んでいるのは『小泉今日子 書評集』。2005年から2014年にかけて読売新聞の書評欄に書いたものをまとめたもの。全部で97冊の本を紹介しています。

その「はじめに」の最初にこんなことを書かれています。


本を読むのが好きになったのは、本を読んでいる人には声を掛けにくいのではと思ったからだった。

「本を読むのが好きになる」というきっかけにはいろんな理由があるとは思うけど、こんな理由をきいたのは初めて。小泉さんなりの事情があったようです。

で、小泉さんが読書好きだということがちょっとずつ広まっていた頃に書評の話が舞い込んでくる。それを引き受けるときのエピソードもおもしろい。仲介したのは久世光彦。でも、小泉さんはすぐには引き受けない。「女優とかタレントとしての名前が欲しいだけだったら嫌だ」、さらに「文章の書き方などについて分かっていないことがいろいろあるので、原稿にきちんとした評価をしてくれるのか」と考えて、依頼に来た人に「私の原稿に対して、『これはボツだ』とか『書き直せ』だとか、そういうことがしっかり言えますか」と言う。でも相手は「ボツは絶対ありません」と答える。小泉さんは「じゃあやらない」。こんなやりとりがしばらく続く。で、小泉さんが席を外したときに、久世さんが読売の人にボツにするといておけ、と言ったようで、戻ってきた小泉さんにその人が「ボツにします」と言ったら小泉さんがパッと右手を差し出して握手をしたと。いいエピソードですね。


小泉さんの書評は連載されていたときから何度かは読んでいました。かなり評判になっていたので。紹介された本は結構多岐にわたっていて、こんな本を読んでいたのかというものもあります。ベストセラーも多いけど小泉さんが取り上げたことでベストセラーになったものもかなりありそうです。中には映画化されたものも。ちなみに小泉さんが紹介された97冊のうちで僕が読んだことのあった本は3冊。小川洋子の『ミーナの行進』、益田ミリ『ほしいものはなんですか』、そして中村弦の『ロストトレイン』。

というわけでほとんどが読んでいないのですが、読んでみたくなる本がいくつもあります。また、取り上げられた本にからめた話というのもとても興味深いものばかり。はっとさせられる話も多い。例えばこんな話。


 あなたの一番大切なものは何ですか? と訊かれたら、私は迷わず「記憶」と答える。私の心の中に詰まっている様々な記憶は過去からの優しい風のように、今の私を慰め、励まし、奮い立たせてくれる。良い事も、悪い事も全部が愛しい大切な思い出。私の記憶は私が私であることの証明みたいなものなのだ。

そんな小泉さんの「記憶」の中で、最も大切にされているのが久世光彦さんと仕事をされていたときの記憶ではないかと思います。小泉さんと久世さんとの関わりについてはこちらに音楽ディレクターの佐藤剛さんが素晴らしい文章を書かれているのでそれを読んでみてください。

なんども紹介している『東京人』という雑誌の「久世光彦 向田邦子 昭和の記憶」という特集(2009年9月号)で小泉さんがインタビューに答えられているのですが、こんなことを話されています。


久世さんのことを見てきたひとりとして、後輩たちにもちゃんと伝えていかなければと思います。
去年(2008年)、久世さんの『マイ・ラスト・ソング』を浜田真理子さんの歌と私の朗読で再現したのも、そういう意味合いが大きかったんです。

そう、小泉さんは2008年から久世さんを偲んで『マイ・ラスト・ソング』という舞台を続けられているんですね。小泉さんが朗読をして浜田真理子さんが歌を歌う。

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これを知ったのは昨年5月に行われた舞台に平川克美さんが行かれたというツイートを読んでのことでした。そのことはこの日のブログでちょっと触れていますね。浜田真理子さんというミュージシャンを知ったきっかけはもう忘れましたが、彼女のことを意識するようになって、ある日開いた夏葉社の『冬の本』に彼女の名前を見つけてびっくりして、それから平川さんとこんな対談までされて(かなり親しい間柄)、すっかり身近な存在になっていたんですが、その浜田さんが小泉さんとこんな素晴らしいイベントをされているとはでした。

ちなみにこのイベントの構成・演出を手掛けられるのが先ほどの文章を書かれた音楽プロデューサーの佐藤剛さんなんですが、その佐藤さんのインタビューで「なぜ浜田さんがピアノ弾き語りで、小泉さんが朗読されるという組み合わせになったのでしょうか?」という問いに対してこんな答えをされていました。


最初からこの2人の組み合わせしかないと思っていました。久世さんのエッセイ『マイ・ラスト・ソング』には約120くらいの歌がとりあげられていますが、童謡・軍歌・讃美歌・歌謡曲・ポップス・演歌など非常に多岐にわたっているんですね。外国の曲もあるし、それらを一人で歌いこなすのは普通ではちょっと考えられない。だけど、浜田真理子さんならそれができると直感したんです。小泉さんも「浜田さんがいれば全部歌えるね」と言われていた。つまりは浜田さんがいなければこの企画は誰も考えることができなかったんです。小泉さんは小泉さんで「私は久世さんの文学者としての一面を朗読で表現することならできるよね」と言われていた。で、僕がどのエッセイを読んでもらうか、また全体をどうするかを考えれば…。もうこの段階でライブ「マイ・ラスト・ソング」のスタイルはできていたんですよ。

浜田真理子さんは今月15日に『タウン・ガール・ブルー』という新しいアルバムを出されます。小泉さんも紹介文を書かれているようでとっても楽しみ。


『マイ・ラスト・ソング』はぜひ一度行ってみたい。一番聴いてみたいのは平野愛子の「港の見える丘」。そういえば昨年5月に行われた舞台には、もちろん平川さんも行かれたのですが、あの能年玲奈さんも行かれたことがわかりました。彼女のブログにこんな写真も載っていました。

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小泉さんとの写真にはこんな言葉も添えられています。


「ママとツーショットおさしん!きゃー。」
「ママの歌も聴きたかったーー。それではまたっ」

能年玲奈という名前でのオフィシャルブログの最後に更新された日の最後の言葉。


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by hinaseno | 2017-02-03 12:33 | 雑記 | Comments(0)