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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno

ロス・バグダサリアンとリバティ・レコードの3人の経営者


大瀧詠一アメリカン・ポップス伝パート4第5夜(文字起こし)


映画といいますとヒッチコックに『裏窓』という作品があります。


Rear Window Main Title / FRANZ WAXMAN


中庭に面した四方のアパートの窓から室内が見えるという設定ですが、あの中に作曲家が登場しているんですね。あれは本物の作曲家ロス・バグダサリアン(Ross Bagdasarian)なんです。ローズマリー・クルーニーの♫カモナ・マイ・ハウス・マイ・ハウス・カモ~ン♫(Come On-A My House)の、それを書いた人なんですが、リバティ社長のサイモン・ワロンカー(Simon Waronker)と仲が良く、彼もリバティからレコードを出すことになりました。タイトルは「トラブル・ウィズ・ハリー(ハリーの災難)」。


The Trouble with Harry / ALFI AND HARRY


え~(笑)、ハリウッド版「猫の災難」というとこでしょうかね。

(注)「猫の災難」というのは古典落語の演目の一つ。僕はよく知らないのですが。


ご存知ヒッチコックの映画のタイトルからいただいたものですが、アーティスト名はアルフィー・アンド・ハリーで、このシングルはこれでも42位にランクされました。このようなコミカル・ソングはウェストコーストの専売特許なんですね。


St. George and the Dragonet / STAN FREBERG


これは53年のナンバーワン・ソング、「セント・ジョージとドラゴネット」というやつですけれども、当時大ヒットしていた警察ドラマ『ドラグネット(DRAGNET)』をセント・ジョージのドラゴン退治に仕立て上げたパロディ・ソングなんですが、これを作ったのがパサディナ生まれのスタン・フリバーグ。54年にはドゥーワップの「シュ・ブーム」もからかっておりました。


Sh-Boom / STAN FREBERG


まあ(笑)、この人はいつも最後はカオス状態になあって終わるというのがパターンなんですけれども、このような悪ふざけでも14位にランクされました。このタイプのユーモアはアメリカの方々、特に西海岸の人は好むようですね。

ウェストコーストがノベルティ・ソングの専売特許と申し上げましたが、元祖がここの出身なんですね。ノベルティ・ソングの大御所スパイク・ジョーンズはカリフォルニアのロングビーチ出身でした。


William Tell Overture / SPIKE JONES


元祖を生んだ土地ですからね、次々に後輩が登場してくるわけですね。やはりハリウッドという土地柄なんでしょうかね。音楽もハリウッド的でサウンドにいろいろな仕掛けがあります。

さて、デヴィッド・セヴィル(David Seville)こと、このロス・バグダサリアンは以前からテープ・レコーダーなどの機械をいじるのが好きだったんですね。また、リバティ・レコードには共同経営者の中にエンジニアがいたんです。テッド・キープ(Ted Keep)。彼は録音技師です。エンジニアが経営者にいるというのは非常に珍しいケースです。

(注)自身エンジニアでもあった大瀧さんにとって、エンジニアでありながら経営者のひとりになっていたテッド・キープというのは相当に気になる存在であったはず。


で、デヴィッド・セヴィルとエンジニアのテッド・キープは合同でテープの早回しサウンドを作り上げました。


Witch Doctor / DAVID SEVILLE


デヴィッド・セヴィルで「ウィッチ・ドクター」。58年、POPでもR&Bでもナンバーワンに輝きました。で、ケロケロ声ですけども、あれはデヴィッド・セヴィルの本人の声をスピードアップしたものです。これで味をしめたセヴィルとリバティ・レコードはこの路線をさらに拡大します。マルチトラック・レコーディングを駆使して架空のグループを作ります。ザ・チップマンクス。


The Chipmunk Song (Christmas Don't Be Late) / THE CHIPMUNKS


出だしの「オーケー、サイモン?」というのは社長のサイモン・ワロンカー、「オーケー、セオドア?」というのは技師のテッド・キープ、それで最後に怒鳴られる「アルヴィン!」というのはもう一人の経営者アルヴィン・ベネットのことで、この曲もクリスマス・シーズンということもあってPOPで再び1位、R&Bでも5位にランクされて、この早回しサウンドは爆発的なヒットになったんですね。

特におわかりの通り、子供に大人気で、これがリバティ・レコードのドル箱路線となって、ついにはこの怒られていた「アルヴィン!」を主人公にして「アルヴィンのハーモニカ」とかですね、「アルヴィンのオーケストラ」「(アルヴィンの)大統領」「(アルヴィンの)ツイスト」と延々とシリーズが作り続けられました。


by hinaseno | 2016-12-16 11:19 | Comments(0)