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by hinaseno

マイクロスター@アゲイン(その8)ーー「震災を経たから、沁み方が違う」


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アゲインでのマイクロスターのトークイベントで心に残ったことをもう2回ほど書いてみようと思います。今日は佐藤さんが話されたこと、で、明日(?)は飯泉さんが話されたことを中心に。基本的にペットサウンドの特典のリーフレットに載っていることは除きます。

ところでマイクロスターの曲作りに関しては完全に曲先とのことで、佐藤さんの曲が出来上がってから飯泉さんが詞をつけるということだったのですが、そこでぜひ佐藤さんに訊いてもらいたかったのは、曲を作るときはオケ(完全な形ではないにしても)が先なのかメロディが先なのかということ。以前に書いたようにある時期から大瀧さんはオケ先の曲作りをしていたようなので、ミュージシャン兼ミキサーということから佐藤さんもオケ先をされていたのではと思っていたので。

イベントの最後にはそれぞれの「人生の1枚(1曲)」を訊かれて、まず先に飯泉さんが答えられたのは細野晴臣の『泰安洋行』。この中から選ばれた一曲は「Exotica Lullaby」。
で、次に佐藤さんが答えられたのがTestpatternというグループの『Après midi』というアルバム。知りませんでした。僕はきっと『ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ』あたりが「人生の1枚」ではないかと考えていたのでかなり意外でした。個人的には佐藤さんの作る曲のメロディラインとかコード感はロジャー・ニコルズに近いように思っていたので。
ちなみにTestpatternの『Après midi』はここで全曲聴けます。



1982年のアルバムとのこと。当時中学生だった佐藤さんは友達から借りてカセットに録音して死ぬほど聴いたそうです。「これを聴いていなければ音楽をやってなかったんじゃないか」と。
曲はテクノですね。YMOほど黒っぽくなくてオシャレだと。飯泉さんもこういうのを聴いていたそうです。
このアルバムが出た82年といえば、僕は前年に発売された『ロング・バケーション』にどっぷり浸かっていた年。でも佐藤さんたちはもっぱらYMO周辺のこんな音楽ばかりを聴いていたそうで、ナイアガラ関係は聴いていなかったとのことです。ちなみに僕はYMOもテクノも周りにいっぱい聴いている人間がいながら全く聴きませんでした。

それから飯泉さんがロマンチックな曲として紹介されたマリ・ペルセンの流れで、同じノルウェーのミュージシャンとして紹介されたのがメジャー・セブン&ザ・マイナーズ(Major Seven and the Minors)というこれまた聞いたこともない名前のグループ。でも、なかなかシャレた名前のグループですね。「ビーチ・ボーイズっぽい曲もあったりして、ペットサウンズのお客さんには絶対に気に入ってもらえるんじゃないかと」という話だったので、チェックしたら佐藤さんが手に入れたはずの日本編集のCDは廃盤になっていましたが、iTunesにそのオリジナルのアルバムが2枚アップされていたので、そのうちの『Music to Watch Nerds By』をダウンロードして、このマイクロスターの話を書くときにはずっと聴いていました。日本盤の1曲目に収録されていた「X-traordinary Mary」なんて最高ですね。他にも「Smile」とか、もろにそれっぽい曲があったりして。いちばんのお気に入りは日本盤には収録されていなかった「That's Entertainment」という曲。

最後に佐藤さんがらみで興味深かった話を後二つ。
一つは『She Got The Blues』の最後に収録された「おやすみ」という曲に関すること。『She Got The Blues』に収録された曲はもちろん新しい曲もあるけれども、かなり昔の曲もあってこの曲もそのうちの一つ。リーフレットのインタビューでは「ストックしていた曲」と書かれていましたが、実際には何度かコンペに出して「いい曲ですね」と言われたもののボツになっていた曲だそうです。他にもコンペでボツになった曲もあったようで、結局自分たちが歌ったとのことですが、やはりそれはマイクロスター自身に歌われるべき曲であったように思います。このあたりの話は大瀧さんの『ロンバケ』にもつながりますね。佐藤さんが他の人に作られた曲をいくつか聴いてみましたが、やはり僕はマイクロスターとして飯泉さんが歌われたものが最高だと思っています。
ところでこの「おやすみ」に関する話の中でも出てきましたが2011年の震災はアルバム制作にいろんな形で影響を及ぼしていたようです。震災以前と以後では空気が全く違ってしまったので、それ以前に作ったものはそのままでは使いにくくなったとか。逆にこの「おやすみ」に関しては「震災を経たから、沁み方が違う」と。深く頷けるものがありました。

佐藤さんの話では大瀧さんとの共通点をいくつか書き並べる形になりましたが、最後は全く違っているという話を。
大瀧さんはアルバムを制作するときにはたいていアルバムの1曲目に収録する曲からレコーディングを始めたようですが、『She Got The Blues』では1曲目に収録した「Chocolate Baby」が最後に作られたとのこと。
できた曲をピースをはめるように曲順を決めていたら(もちろんアナログ盤のイメージで。ちなみに「Tiny Spark」は最初からA2と決めていたそうです)最後に1曲目が残ったと。で、その一曲目のイメージとして思い描いたのがなんと初期のEverything But The Girl。テーマは”疾走感のあるネオアコ”だったそうです。
Everything But The Girlは昔とてもよく聴いたので、おおっと思ってしまいました。ただし、歌入れまでしたもののなんとなくイマイチだったようで結局ボツに。ちょっと聴いてみたかったですね。アナログBOXのボーナス盤としてどうでしょうか。

Everything But The Girlでいちばん最初に聴いたのはこの『The Language Of Life』。ずっとこればっかり聴いていた時期がありました。ジャケット最高ですね。
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プロデューサーは『ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ』と同じトミー・リピューマ。
ちなみにエンジニアはアル・シュミット。この頃にはエンジニアが誰かも気にするようになっていました。
このアルバムの1曲目が「Driving」。佐藤さんが作られたのはこんな曲だったんでしょうか。”疾走感”があるかどうかはわからないけど。


by hinaseno | 2016-10-18 12:46 | 音楽 | Comments(0)