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by hinaseno
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「早春」から「風」に


世田谷ピンポンズさんのライブがあった日の帰りの車ではずっと「早春」を聴いていましたが、三石の町を通るときに、ふと思い立って久しぶりに三石駅に立ち寄ってみることにしました。
駅舎には駅員が一人いたのでホームに入ってもいいですかと訊ねたら、次の列車が来る時間はまだ先なので、どうぞと。
ということで改札口を通って中に。
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これはホーム側から撮った三石駅の駅舎。この辺に見える建物の作りは昔のままなんでしょうね。

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そしてこれはホームに上がって西の方を見た風景。すでに太陽は向う側の山に沈んでいます。時間は夕方の6時頃。5月の後半ではありますが、山にかこまれたこの町では太陽が沈むのは早く、町全体はすでにかなり薄暗くなっています。

で、この写真の右の方に見える2本の煙突こそが、まさに小津安二郎の『早春』のこのシーンの、池部良の後ろに見える煙突なんですね。
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映画を撮影した当時は何十本も立っていた煙突が今はほんの数本になってしまっているのに、その今残っている数少ない煙突の2本が映画のこのシーンに映っているものだとわかったときは本当に驚きました。
4年前の3月(まさに早春でした)に、なんのあてもなく三石の町を歩いたときに、ちょっと道に迷いかけていたら突然この場所に出たんですね。このときの驚きといったら。
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ところで、小津が初めて三石の町を見たはずの日のこと。この日のブログで書いたことの続きです。
『東京物語』に映ったものと同じ時刻表ではありませんが、同じ昭和28年3月15日改正の特急・急行・準急の時刻表が手に入って、また少しわかったことがあるのでそれを書いておきます。

小津が『東京物語』の撮影のために尾道に出発したのは昭和28年6月23日。野田高梧とともに大船駅で列車に乗ったんですね。例の厚田カメラマンの撮影日程表には大船発21時50分となっています。
ということから、おそらく小津たちが乗ったのは『東京物語』で笠智衆夫婦が乗り込んだ東京発21:00の急行安芸ではないかと考えました。
で、手に入れた時刻表を見たら21:00東京発広島行の急行がありました。
a0285828_13524932.jpg

この急行、大船発は21:52となっていて撮影日程表に記載された時間よりは2分遅い。でも、日程表を書いた厚田がその列車に乗ったわけではないので、だいたいの時間を書いた可能性もあります。

さて、この列車が三石をいつ頃通過したか、ということでこちらの方を。
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姫路着が9:45、岡山着が11:16、広島着が15:25。
残念ながら尾道や、三石に近い相生駅の到着時間が記載されていないのでやはり推測ということになりますが、前回は11:20くらいに三石を通過したのではと考えましたがもう少し早いですね。三石は姫路と岡山のちょうど真ん中くらいなので三石通過は10:30頃になりそうです。朝食も終えていちばんゆっくりできる時間ですね。外も明るい。

ゆっくりと窓の外を眺めることのできる時間であったこと、三石を通過する前にかなり長いトンネルがあったこと、そして進行方向の右側の座席に座っていたこと。いろんな偶然が重なって二人は三石の町に気づくことができたわけです。

ところで、小津の『早春』に主演した池部良は1990年代以降はエッセイストとして活躍します。あの2枚目ぶりからは想像もできないような、人を喰ったようなエッセイばかり。どこまでがホントでどこまでがウソなのかちっともわからない。教訓らしきものも何もないのですが、とにかく面白い。

実はそのタイトルには「風」がずらりと並んでいるんですね。池部良のエッセイを集めることは「風」を集めることでもありました。
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by hinaseno | 2016-06-18 13:54 | 映画 | Comments(0)