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by hinaseno
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くまくまトーンズ


おひさまゆうびん舎の5周年のイベントのときに、高橋和枝さんが描かれたくまくまちゃんをバックに世田谷ピンポンズさんが歌う姿を眺めながら、なんとなくくまくまちゃんがバックコーラスをしているイメージを抱いて、で、高橋和枝さんのワークショップが行なわれるということで、ぜひ、そのイメージを実際の絵で描いてみたいと考えました。名前は早くから決めていました。

「くまくまトーンズ」

でも、いうまでもなく超難航。悪戦苦闘の日々。高橋さんの描かれた絵を下に敷いて描いたってうまく描けないのだから。
かわいく描こうとすればするほど、どんどんと本来のくまくまちゃんが持っているかわいさから離れてしまう…、ということを、梶井基次郎の「桜の樹の下には」ふうに書いてみようかと思って、でもさすがに「くまくまちゃんの下には屍体が埋まっている」とは書けなくて、昨日、あんなふうに書いちゃったのですが、やっぱり誤解されてしまうどころかくまくまちゃんを愛する人たちを傷付けてしまったようにも思うので、タイトルも含めてカットしました。
でも、僕は本当に美しいもの、本当にかわいいものの下には屍体が埋まっていると思っています。

「くまくまトーンズ」の下敷きにしたのは何度も紹介しているこのジャック・トーンズの絵。これをくまくまちゃんにかえてくまくまトーンズにする。
くまくまトーンズ_a0285828_1117335.jpg

絵を描きながらずっと聴いていたのは、くまの曲の中ではいちばん好きなこの「Simon Smith And The Amazing Dancing Bear(サイモン・スミスと踊る熊)」。



歌っているのはランディ・ニューマン。もちろん大好きなミュージシャンのひとり。これは最近の映像だけど、なんだかくまさんに見えてきます。
曲を書いたのもランディ・ニューマン。最近ではディズニーのいくつもの映画の曲を作曲しています。
今、『GUILTY: 30 YEARS』の解説をみたら、この曲についてランディ・ニューマン自身がこんなことを書いていました。

キャロル・キングになろうとせずに書いた最初の曲だったと思う。自分で書いて私らしく聴こえた最初の曲だ。

なるほど! でした。

ところでくまくまちゃんはもちろん音楽が好きで、以前紹介したギターの弾き語りをしているものもあれば、こんなふうに音楽を聴きながら踊っているものもあります。まさにダンシング・ベア。
くまくまトーンズ_a0285828_1124197.jpg

ということで、この曲を聴きながら試行錯誤をしつつ、ようやく仕上がったのがこの「くまくまトーンズ」。かわいいかどうかはわからないけど。
くまくまトーンズ_a0285828_11244573.jpg

ところで、昨日、おひさまゆうびん舎のブログに、くまくまちゃんの絵の横に飾られていた「『くまくまちゃん』の展示にあたって」という高橋和枝さんの言葉の写真がアップされていました。
素敵な言葉なのでここに貼っておきます。

『くまくまちゃん』は2001年に出版した絵本ですが、前身であるキャラクター「くまちゃん」ができたのはそのもうすこし前です。
当時わたしはステーショナリーの会社でデザイナーとして働いていて、若い女性向けの可愛い便箋やグリーティングカードを制作していました。

出来る限りの最高に可愛いキャラクターをつくってみよう…と思って描いたのが「くまちゃん」です。描くときは、特に目や口を描きこむときは、息をとめて「可愛くなれ、可愛くなれ」と念じながら祈るような気持ちで描いていました。
そのうちふと、描こうとしているくまと自分が同じ表情をうかべていることに気がつきました。
笑っているくまを描くときは自分も微笑み、眠っているくまを描くときは私自身も糸のような細目になる…といった具合に。
同じ表情を浮かべることで、くまの気持ちに同化しようとしていたのだと思います。
とても可愛く描けると、自分の綺麗じゃない心がくまを通して浄化されていくような気がしました。

可愛いものは、強い。その存在は、人の気持ちを浄化し、癒すのだと思いました。

たくさん描くうちに自然と、自分の心の中にこのくまが住んでいることを想像するようになりました。
わたしの中のどこかに森のような場所があって、そこに一軒家を構えてくまが住んでいるのです。
くまのことを想うと、小さなあかりがぽっと胸に灯るのを感じました。

その後、6年間勤めた会社を辞めてイラストレーターとして仕事をはじめたときに、ポプラ社の編集のNさんが「くまちゃん」を見て「絵本を作りませんか」と提案してくださり、そうして『くまくまちゃん』が出来上がりました。

『くまくまちゃん』はわたしの作った絵本の中ではダントツに売り上げのよい本で(あくまでも当社比 ですが)。「また続編を」と言っていただいていたのに、うまく続けられませんでした。
『くまくまちゃん』は物語ではなく、単に自分の中のくまのことを描いただけの本なので、そこから紡がれる新たなストーリーなんて何も無かったからです。

…ってことは、それはもしかしたら『くまくまちゃん』はある意味わたしにとって特別な本ってことだったのかもしれないなと、最近、たまに考えたりします。

おひさまゆうびん舎さんの大切な5周年を記念する展示に『くまくまちゃん』を選んでいただいて感謝の気持ちでいっぱい…というか、とても光栄です。

5周年おめでとうございます。
                              高橋和枝

特に印象に残ったのはこの言葉。

とても可愛く描けると、自分の綺麗じゃない心がくまを通して浄化されていくような気がしました。

可愛いものは、強い。その存在は、人の気持ちを浄化し、癒すのだと思いました。

僕もくまくまトーンズを描くのに結構苦労したけれども(結局、高橋さんとは比べものにならないほどの綺麗じゃない僕の心が大いに邪魔をしていたわけです)、描き上がったときにはなんだか少し心が浄化されたような気がしました。

ぜひ、大人の男の人にも『くまくまちゃん』を手に取ってもらいたいです。
そして「可愛いものは、強い。その存在は、人の気持ちを浄化し、癒すのだ」ということを知ってもらえたらと。
by hinaseno | 2016-05-02 11:27 | 雑記 | Comments(0)