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もしも「半径3メートル」のなかにその本がなかったならば(その4)


あの十二月の雪の日から1週間経つか経たないかの、年が明けて間もない日にまたまたツリーハウスとおひさまゆうびん舎に行きました。買いたいと思う本があるなしにかかわらず、そこがとても居心地のいい場所であることを知ったので。

たぶんその日に買った絵本がこれです。
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新美南吉の『手ぶくろを買いに』。
小川洋子さんが大好きな絵本として紹介していて読んでみたいと思っていたらお店にあったんですね。黒井健さんの絵もすばらしいです(考えたらそこに描かれているのは雪の風景)。
この本を読んで以来、帽子屋さんにすごく惹かれるようになりました。

年明けにたずねたときに、少し前にツリーハウスで小山清展が開かれていたことを聞きました。はずかしながら小山清という作家の名前を聞いたのはそのときがはじめて。展示会のときにつくられた冊子もいただいて、ツリーハウスの清水さんよりもおひさまゆうびん舎の窪田さんのほうが小山清のことを愛されていて、その展示会も窪田さんの強い意向で実現したことを知りました。
絵本だけでなく、文学ももたれているんだなと。

改めて言うほどのことではありませんが、僕は文学が上で絵本が下とかといった気持ちはさらさら持っていません。絵本の中には大人が読んでも心を震わせるような上質なものがあることも知っていますし、好きな絵本もいっぱいあります。児童文学というジャンルでくくられるものもいくつも読んでいました。
それから僕自身、ごく数人の好きな作家はいても、とても文学にくわしいとはいえません。たぶん文学の世界では常識に属しているような作家でも知らない人が多いし、太宰治もろくに読んでいません。常識的な知識を持っていなくて唖然とされたことも何度も。
だから、文学に関する知識が豊富なことよりも、たったひとりであれ大好きな作家がいるということのほうが僕にとって近しいように思いました。
そして、今振り返れば、窪田さんが小山清展をされていたというのはとても大きなことでした。

さて、『さよならのあとで』が発売されましたが、僕はそれをどこで買うべきか悩んでしまい、結局、夏葉社の島田さんにどこで買ったらいいかを聞きました。島田さんから教えてもらったのが倉敷の蟲文庫。
たぶん何かで蟲文庫や店主の田中美穂さんのことは目にしていたような気がしますが、行ったことはありませんでした。
お店に行ったのは2月12日。記録が残っていました。
美観地区から一本北の通りに店があることを確認して店に向かいました。
驚いたのは蟲文庫のすぐ近くに、まるで『手ぶくろを買いに』の絵本そのままのメルヘンチックな帽子屋さんがあったこと。
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僕は思わず、あの子狐のように扉から手を差し伸べようかと思いましたが、休日の店内には人がいっぱいだったのでやめました。

蟲文庫では取り置きをお願いしていた『さよならのあとで』と田中美穂さんの出されたばかりの本『わたしの小さな古本屋』を買いました。興味深いのは田中さんの本の中に小山清の『落穂拾い』の話や木山捷平の話が出て来るんですね。田中さんは木山さんの大ファンでいらっしゃったのですが、そのときには僕はまだ木山捷平とは出会っていませんでした。でも、ここにも不思議な縁がいっぱい。

僕は美観地区の一画にあった喫茶店に立ち寄って『さよならのあとで』を読むことにしました。
でも、途中から胸がいっぱいになってきて読むのを中断。店内は人でいっぱいだったので涙を流すわけにはいかなかったし、言葉をゆっくりとひろうには少し賑やかすぎたので。

で、言葉は読まずにところどころに添えられた絵をひとつひとつ見ることにしました。そして、そのモノクロで描いた静謐な絵にも激しく心を打たれました。
そこに描かれていたのは、さりげない日常の風景ばかり。どれも一見、死とはかけはなれた世界のように見えます。
でも、よく見るとひとつひとつの絵に「不在」を感じさせる。決定的な不在というよりも、ふっといなくなって何かがあればそこに戻って来きてくれるような不思議な不在感。
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本を閉じて改めて絵を描いた人の名前を確認しました。

高橋和枝

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by hinaseno | 2016-04-26 13:16 | 雑記 | Comments(0)