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by hinaseno
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「こ〜いんぬんぐあふしんぐいんぬあ〜むえをして〜」


『DEBUT AGAIN』が手に入る2日前の3月19日の夜に放送された『SONGS』の話に戻ります。

大瀧さんが愛用していたマイクをスタジオの鈴木雅之さんの横にセットしていよいよ「Tシャツに口紅」。
ラッツ&スターに提供された曲ということで1番はそのリード・ボーカルの鈴木雅之さんがすべて歌いました。

そして2番。
初めて聴く大瀧さんの歌う「Tシャツに口紅」が流れ始めました。

感無量。

これを何年待っていたことだろう。気持ちが高ぶるのを抑えることができませんでした。
でも、感極まりつつもその音源の分析をしてしまうんですね。ナイアガラー(大瀧さんによって素晴らしい音楽と、音楽の聴き方を教えてもらった人間という意味)の悲しい性(さが)です。不幸というか何というか。

2番の最初の「つきあって」を聴いてすぐに、これはデモではないんだと気がつきました。大瀧さんの歌った「Tシャツに口紅」はデモ音源という話を聴いていたのですが、そうではなく、後できちんと歌い直されて録音されたものだと。

『DEBUT AGAIN』で改めて「Tシャツに口紅」を聴いてみて、これは『EACH TIME』に収録された曲ほどではないにしても、相当に歌い込まれたものであることがわかりました。ラッツ&スターのオケを使ってただ歌ってみましたというのとはわけがちがうなと。
一つの大瀧詠一の歌った作品として、ラッツ&スターの歌ったものとは差別化をはかっていたんですね。メロディ・ラインもオケもかなり変えていました。

最も特徴的だったのはラッツ&スターの歌ったものではすべて同じように歌われていた1番から3番の最初のフレーズが全部違っていたこと。デモではない証拠です。
1番の「夜明けだね」の「だ〜ね〜」の部分。以前紹介した大瀧さんの作り出すメロディに特徴的な”ゆらぎ”が聴かれるところですね。
ラッツ&スターのバージョンは2番の「つきあって」の「あ〜て〜」も、転調後の3番の「これ以上」の「い〜じょ〜」もすべて同じメロディ。でも、大瀧さんはそのメロディで歌ったのは1番だけ。2番、3番はそれぞれにまったく違うメロディで歌っています。特に3番の「これ以上」の「い〜じょ〜」の部分の歌い方のすごいこと。誰も真似できないような歌い方。本当に歌のうまい人だと思いました。

でも、そんな風に随所にかなり過激な歌い方をしているのにも関わらず、それを気づかせないような優しい肌触りを感じてしまう。これが大瀧さんの歌のすごいところ。その理由はやはり鼻音を多用しているからでしょうね。

例えば、この日のブログで紹介した「仔犬が不思議な眼をして」の部分。例の1オクターブ下げて歌う「不思議な〜」のところで鼻音を見事に使っているんですね。
ラッツ&スターの鈴木雅之さんは鼻音を使わずに普通に歌っていますが、大瀧さんは「ぬ」と「な」と「め」を鼻音で、「が」と「ぎ」を鼻濁音で歌っているので、ここだけ聴き比べても曲の感触が全く違っています。
大瀧さんのはこんな感じに聴こえますね。
「こ〜いんぬんぐあふしんぐいんぬあ〜んむえをして〜」

そういえば「探偵物語」の「身動きも」の「も」と「出来ないの」の「の」も鼻音を強調した歌い方をしています。大瀧さんの鼻音は本当に魅力的。
ただし、そういう大瀧さんの歌い方に馴れていない人がはじめて大瀧さんの歌を聴いたときにはかなり戸惑うようで、「餅を食べながら歌っているのか」と言われたこともあるそうです。

というわけで感動しつつも、いろんな発見があって何度も驚かずにはいられない大瀧さんの「Tシャツに口紅」ですが、一番驚いたのは何といってもアレでした。
そう、以前めいっぱい書いたアレです。
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by hinaseno | 2016-04-04 12:10 | ナイアガラ | Comments(0)