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by hinaseno
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”秘密の”『EACH TIME』のこと


『DEBUT AGAIN』が発売されてから10日ほど経ちました。でも、僕が毎日聴いているのは先日紹介したこの”秘密の”『EACH TIME』。
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実は『DEBUT AGAIN』を全部通しで聴いたのは5回ほど。編集された方がよく曲順を考えられているなと思いつつ、大瀧さんの声によってすべての曲が歌われているとはいえ、それぞれがかなり違う目的のために歌われている曲が混じっているために、その違いの方が気になってひとつひとつの曲を味わいきれないなと。
これではいけないと、通して聴くことはやめて気になる曲から1曲1曲を取り出して聴いた方がいいなと考えました。
昔、45回転のシングル盤をすりきれるまで何度も何度も聴いたように。

さて、その最初に取り出した1曲はもちろん「Tシャツに口紅」。
この曲のクオリティが高すぎて他の曲がかすんでしまうんですね。とすると、取り出すしかありません。
最初は家でも車の中でも「Tシャツに口紅」だけリピートして聴き続けていました。で、聴きながら思ったのは、これは同時期に録音していた『EACH TIME』の中に置かれるべきだなと。入れて聴いてみたらどうなるんだろうかと。
これは僕の勝手な思い付きではなく、もともと「Tシャツに口紅」は『EACH TIME』制作中に(正確にいえば制作中断中に)作られたもので、曲の肌触りは『EACH TIME』そのもの。いや、肌触りどころか...。

大瀧さんは『EACH TIME』の20周年盤を出されたときに、こんな発言をされていました。

「(ラッツ&スターの「め組のひと」の)つぎの「Tシャツに口紅」はやらしてもらったんだけど、ああいうタイプのが『EACH TIME』に入っててもよかった。そうするともうちょっと目鼻があるものに...。わかりやすい歌謡のものがまったく入っていないからね。難しいものだけになってしまったんだけども」

でも、あれほどにクオリティの高い自ら歌う「Tシャツに口紅」を録音していながら、結局それを『EACH TIME』の20周年盤にも30周年盤にも入れませんでした。その理由もわからないでわけではありませんが。

というわけで””final”でも”complete”でもなくあくまで”my”『EACH TIME』を作成することにしました。
とはいうものの、『EACH TIME』は最初に出たLPのときから、大瀧さんが亡くなる寸前まで制作されていた『EACH TIME 30th Anniversary Edition』まで、収録曲も違えば、曲順も違うし、さらにはバージョン違いの曲も何種類かあって、そんな中にどうやって「Tシャツに口紅」をどういう形で入れたらいいのか、正直途方に暮れそうになります。
でも、結論的にはシンプルに。大瀧さんが亡くなったことを知った日のブログで書いた「勝手な希望」通りにしようと。

基本的には最初に出たLPの曲順で。1曲目は絶対に「魔法の瞳」。あの「眼が逢うたびに」のヴァースが僕にとっての『EACH TIME』の始まりです。後で付け加えられた曲はあくまでボーナストラック、つまり”my”『EACH TIME』からは外す。
それからバージョン違いのものがある「魔法の瞳」「夏のペーパーバック」「レイクサイド・ストーリー」もすべて最初のLPバージョンのものを。
LPのときには収録曲は全部で9曲という中途半端な数字だったので、「Tシャツに口紅」を入れればちょうど10曲。『ロング・バケイション』と同じ曲数、というか当時のアルバムの標準的な曲数になります。

ちなみにLPのときの曲順はこうなっています。

A面
1. 魔法の瞳
2. 夏のペーパーバック
3. 木の葉のスケッチ
4. 恋のナックルボール
5. 銀色のジェット

B面
1. 1969年のドラッグレース
2. ガラス壜の中の船
3. ペパーミント・ブルー
4. レイクサイド ストーリー

さて、「Tシャツに口紅」をこのどこに入れるかということですが、これも決まっていました。

A面3曲目。

そのアルバムを代表し、なおかつ親しみやすい曲が置かれる場所。『ロング・バケイション』では「カナリア諸島にて」が置かれた場所です。
もともとの『EACH TIME』ではここに「木の葉のスケッチ」が置かれていましたが、A面3曲目という位置に来るタイプの曲ではないと思っていました。もちろん大好きな曲ですが。

といいつつCDの時代になってはA面もB面もありません。
でも、やはり最初のLPのことを考えて最初の5曲がA面、そのあとの5曲をB面としようと。
ところがこんな条件も作ったために新たな問題が。

CDの時代になってもきっと意識されていたはずの『EACH TIME』の仮想B面は1曲目から3曲目を大瀧さんは固定しているんですね。「1969年のドラッグレース」「ガラス壜の中の船」「ペパーミント・ブルー」。この並びのことについてはこの日のブログでも書いています。
いかにもレコード盤をひっくり返した最初の曲らしい「1969年のドラッグレース」、以前書いたB2理論として大瀧さんが絶対にここに置くべきと考えていたはずの「ガラス壜の中の船」、そしてこの曲の余韻があるからこそさらに輝きを増す「ペパーミント・ブルー」。これは崩しようがありません。
で、「Tシャツに口紅」をそのままA面3曲目に入れるとA面が6曲ということになってしまいます。何かをB面にまわさなければなりません。

ちなみに『EACH TIME』の最後の曲は、あの大エンディングバージョンをもった「レイクサイド ストーリー」以外考えられないので、A面からまわす曲が入る場所は「ペパーミント・ブルー」と「レイクサイド ストーリー」の間しかありません。
いちばんすんなりしているのは「Tシャツに口紅」を入れたA面3曲目にあった「木の葉のスケッチ」をB面4曲目にまわすこと。
でも、どうもしっくりこない。と同時に、やはり当初大瀧さんがA面の3曲目に置いていただけのことはあって、この曲は独自の輝きを持っていることを改めて知ることとなりました。
「木の葉のスケッチ」はやはりある程度目立つ場所に置かなければ、ということでA面のラストに置くことに。その前のA面4曲目は『A LONG VACATION』の「Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語」的な「恋のナックルボール」を。結構いい流れです。
で、もともとA面のラストだった「銀色のジェット」をB面の4曲目に。これは苦渋の選択。でも、不自然な感じではありません。

というわけでこんな曲順になりました。1枚のCDに収まっているのでA面もB面もありませんが、一応振り分けています。

A面
1. 魔法の瞳
2. 夏のペーパーバック
3. Tシャツに口紅
4. 恋のナックルボール
5. 木の葉のスケッチ

B面
1. 1969年のドラッグレース
2. ガラス壜の中の船
3. ペパーミント・ブルー
4. 銀色のジェット
5. レイクサイド ストーリー

ということで、かなり個人的な好みによる『EACH TIME』ができあがったので、やはりジャケットも独自のものにしようと。

本来のアルバムのジャケットはこれですね。
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真ん中に描かれているのは都会の風景。
イラストレーターの河田久雄さんが描かれた絵を大瀧さんが何枚か見られて最終的にこれに決められたそうです。
『EACH TIME』の松本隆さんが書いた詞にはいろんな場所が出てくるのですが、都会が舞台になっているのは、まさに当初A面3曲目に置かれていた「木の葉のスケッチ」でした。
昔、付き合っていたけれども別れた二人が街の中で出会うという話。こんな歌詞が出てきます。
都会(まち)がくれた粋なはからいさ

『EACH TIME』を代表する曲といえば、後にシングルカットされた「ペパーミント・ブルー」と、『EACH TIME』に収録された曲の中で一番最初に録音され(『A LONG VACAITON』でいえば「君は天然色」)、後に『アメリカン・ポップス伝』などのいろんな特番のテーマソングに使い続けた「夏のペーパーバック」。いずれも「夏」の「海」を舞台にした曲ですが、それを押しのけて「都会」の風景を描いたものを採用したんですね。

でも、僕が作ったCDはそのA面3曲目に「Tシャツに口紅」という海を舞台にした曲を置いたので、やはり海が描かれた絵の方がいいなと。
で、河田久雄さんといえば、楽譜付きの画集『NIAGARA SONGBOOK2』にたくさんのイラストを描いていたので、改めてパラパラと眺めてみました。
その絵の中で、海を描いたものとしていちばんよかったのが上で紹介したものでした。この絵は『EACH TIME』のジャケットのかなり有力な候補だったのではないかと思っています。

ちなみに前々回に紹介したバージョンは、その画集に入っていないけど、河田さんの描かれた絵をチェックしていたときに見つけたもの。
文字のロゴは同じものがなかったので似たものを。左上のナイアガラのロゴは本当はちょっといじったものを作っていれようかと思いましたが、結局外しました。

というわけでこの『EACH TIME』が僕にとっては最高の最終形ということで、ず〜っと聴いています。A面3曲目に入った「Tシャツに口紅」も違和感がないどころか、ようやく収まるべきところに収まったという感じです。
次回はその「Tシャツに口紅」の話を。

最後に、今回のCDを作る過程で、改めて曲の魅力を再発見することになった「木の葉のスケッチ」を貼っておきます。


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Commented by galaxybus at 2017-12-03 15:06
おもしろくも難しい試みご苦労さまです。
EACHのジャケット、最初のリリースニュースでは
ペパーミントグリーンの部分が白かったんですよね。
Commented by hinaseno at 2017-12-03 18:17
galaxybusさま
ペパーミントグリーンの部分が白かったというニュースは知りませんでした。当初、83年7月28日に発売予定だったものに使う予定だったジャケットは全然違ってるんですね。『レココレ』に掲載されていたのを見てびっくりしました。
by hinaseno | 2016-03-30 12:32 | ナイアガラ | Comments(2)