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by hinaseno

「気まぐれ お日様 雲の隙間から 片目をつぶって ごあいさつ」


木山捷平の未刊行短編集『暢気な電報』収録の「赤い酸漿」の話が続いていますが、今日はやはり昨夜で放送されたNHKの『SONGS』の話をしないわけにはいきません。
特集は大瀧詠一。
間もなく発売される、というか東京などのショップではすでに発売されている大瀧さんの他人に提供した曲を自らが歌った驚愕の未発表作品集『DEBUT AGAIN』に収録されている音源をかけながら、大瀧さんのレコーディングに関わったミュージシャンを集めての当時の録音風景を再現するというもの。

演奏されたのは「夢で逢えたら」、「探偵物語」そして「Tシャツに口紅」。
大瀧さんが亡くなられたことを知った日の夕方に書いたブログで、大瀧さんが亡くなられる直前までマスタリング、選曲の作業をしていたはずの『EACH TIME』の30周年記念盤について僕はこんなことを書きました。

できれば『EACH TIME』制作休止中にラッツ&スターのために作った「Tシャツに口紅」の大瀧さんの歌われたものも(収録してほしい)

と。
僕が大瀧さんの作った曲の中で最も好きな曲の一つであり、カラオケを含めて最も多く口ずさんだ曲である「Tシャツに口紅」の大瀧さん自身が歌ったものが存在するということは、ずいぶん前に風の便りで聞いていました。
結局この時の夢はかなわなかったんのですが、でも、まさにそれが『DEBUT AGAIN』に収録されたんですね。それが昨夜の番組で披露されたんです。テレビで最初にその音源を聞くことになろうとは。
泣けました。
『DEBUT AGAIN』は明日家に届くはず。この3月の幸せな日々はもうしばらく続くことになりそうです。

そういえばおひさまゆうびん舎の5周年記念冊子に窪田さんから何か書いてほしいという依頼が来たときに、そのお題である「おひさま」という言葉を聞いて真先に頭に浮かんだのは、大瀧さん作詞作曲の「青空のように」のこのフレーズでした。
気まぐれ お日様 雲の隙間から  片目をつぶって ごあいさつ

曲の中の重要な場所(ブリッジ)で、このフレーズが出てきます。大瀧さんが歌っているのを聴くと「お日様」は「おひさん」に聴こえるんですが。



この「青空のように」は曲全体が「おひさま」にぴったりだったので、「おひさま」と題したファイルを作って、まず最初にこの言葉を書きつけて、この曲を流しながら文章を書き始めました。
でも、おひさまゆうびん舎との出会いなどをいろいろと書いているうちに、文章がかなり長くなってしまって、この言葉が文章から浮いてしまったので、最終的にはカットしました。

ところで、さっきのブログを久しぶりに読み返したらでこんなことを書いていました。

ここに書いてきたすべてのことは(小津のことはいうまでもなく、荷風や木山捷平のことであっても)、大瀧さんなくしては開くことのなかった扉のむこうにあったことばかり。で、大瀧さんに納得してもらえるように、とまではいかないにしても、大瀧さんににっこりくらいはしてもらえたらということだけを考えて書き続けてきました。

かなり感傷的な気分で書いていたとはいえ、この気持ちは今も変わらないものがあります。

昨夜の番組で最後に演奏されたのは「夢で逢えたら」。
「夢で逢えたら」といえばこの日のブログでも紹介した浜口茂外也さんもパーカッションで出演されていました。
「気まぐれ お日様 雲の隙間から 片目をつぶって ごあいさつ」_a0285828_14443667.jpg

ただし演奏されたのは、浜口さんのアイデアで生まれたあのフルートのフレーズが聞かれるバージョンではなくてチェンバロとストリングスで演奏されるバージョン。
このバージョンは昨年発売されたCDの特典で当選した人だけがもらえたCDに収録されていたものですが、その後ネットで期間限定でこっそりとアップされていたのでちゃっかりダウンロードさせてもらいました(内緒だな)。

僕はチェンバロという楽器が大好きなので、このバージョンにはびっくりしてしまって、どういういきさつでこのバージョンが録音されたのか全くわからないのですが、それが昨夜再現されたわけです。チェンバロは2台置かれて井上鑑さんと難波弘之さんが演奏していました。
大瀧さんもチェンバロが好きだったんですね。
「気まぐれ お日様 雲の隙間から 片目をつぶって ごあいさつ」_a0285828_14422134.jpg

ところで、昨夜の番組で最も印象的だったのは「Tシャツに口紅」のセッション終了直後にバンドマスターである井上鑑さんのピアノの上に置かれた楽譜がぱさっと落ちたこと。
こんな不思議なことが起こっても誰も不思議に思わない。
「大瀧さんのいたずら」だねって言っていたように、あの演奏のときに大瀧さんが下の写真のように井上鑑さんのそばに立って楽譜を眺めていたことだけは確かなようです。
いじわるそうに片目をつぶってにっこりと。
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by hinaseno | 2016-03-20 14:46 | ナイアガラ | Comments(0)