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by hinaseno
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小さな箱に描かれていた銀河鉄道


おひさまゆうびん舎では先月「小さな町」という企画展が開かれていました。小さな店の中に、小さな町ができあがって、その町の中にいくつもの小さな店が作られていたようです。
残念ながらこれを見に来ることはできませんでしたが、店のあちこちには小さな店の名残りがあって、企画展は終わっても、おひさまゆうびん舎は小さな町でありつづけていました。きっとこれからも。

で、今、開かれているのが『月夜とめがね』展。高橋和枝さんが絵を描かれた小川未明の『月夜とめがね』という絵本の原画を展示しています。
高橋和枝さんのことは夏葉社の『さよならのあとで』の絵を書かれていたことで知りました。僕の手元にある『さよならのあとで』には、おひさまゆうびん舎、夏葉社つながりで高橋さんのサインと絵をかいていただきました。
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原画とともに、というか原画以上に見てみたいと思っていたのが、おひさまゆうびん舎と高橋さんのブログでもアップされていた高橋さん手製の箱。いくつか作られていた箱の中でひとつどうしても欲しい物がありました。箱はすでにいくつか売れていたみたいだったので、それが残っていない可能性もあったのですが、縁があればきっと残っているだろうと。
で、それは残っていました。小さな箱の中では一番大きな箱。といっても一辺が10センチ足らずの小さな箱です。
絵は蓋だけでなく箱の底にも描かれていました。どういう素材で作られたのかはわかりませんが、キラキラした小さな粒がちりばめられています。
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表紙に描かれていたのは汽車。
どこか幻想的。この絵を見てぱっと思い浮かべたのは以前このブログで紹介した岩手軽便鉄道のこの写真。宮沢賢治の「銀河鉄道」のもとになったといわれる汽車ですね。
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実は絵本ではもう少し車輛が描かれています。
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で、先程の絵葉書の写真に写っている車輛を反転させて色を変えたら結構似た感じがしますね。
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高橋さんが汽車の絵を描かれるときに、ふと(無意識にせよ)宮沢賢治の銀河鉄道をイメージされてこんな絵が出てきたとするならばなんとも素敵なこと。

ところで小川未明の『月夜とめがね』もやはり小さな町が舞台なのですが、この物語の中では、実は汽車は登場しません。ただこんな言葉が出てくるだけ。
汽車のゆく音のような、かすかなとどろきが聞こえてくるばかりであります。

だから本当は汽車が走っていたかどうかもわからないんですね。でも、高橋さんはあえてこの汽車の絵を描かれたわけです。存在しなかったかもしれないものが描いたんですね。

存在しなかったかもしれないものを描いたといえばもう一つ。主人公のおばあさんの家をある日の夜遅くに訪ねて来たひとりの少女が働いているという「香水製造場」の絵。実は彼女は「こちょう」。本当は花の蜜を集めていただけだったのかもしれないけれど、この場面を高橋さんはこう描いているんですね。窓の向こうにはちょうが飛んでいます。絵本の中ではこの場面がいちばん好きです。この場面の原画も飾られていました。
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話はころっと変わりますが、今、川本三郎さんの新刊『ひとり居の記』を毎晩読んでいます。昨日読んだところに岩手県の花巻と釜石を結ぶ釜石線に乗った話が出てきました。
釜石線の前身は岩手軽便鉄道。このあたりは宮沢賢治の童話の原風景でもあり、同時に大瀧さんが子供の頃に過ごしていた場所でもあります。
川本さんが書かれていた文章の中にこんな話が出てきました。

そう、来る時、釜石線の車両でいい光景を見た。一両だけの汽動車で、客は私を入れて五人ほど。ほとんど老人だが、一人だけ女学生が乗っていて、この子が静かにレースの編物をしていた。なんだか宮沢賢治の童話から出てきたような女の子だった。

川本さんが見たのはもしかしたら「こちょう」だったのかもしれません。
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by hinaseno | 2016-01-09 13:03 | 雑記 | Comments(0)