人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Nearest Faraway Place nearestfar.exblog.jp

好きなリンク先を入れてください

Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno

THE DOO WOP QUIZ:Bomp ba-ba bomp, ba bomp ba bomp bomp, ba-ba bomp ba-ba bomp...


前回のブログでアール・ジーンはディメンジョン(Dimensionの発音はディメンションとディメンジョンのどちらでしょうか)なんて書きましたが、アール・ジーンはシェリー・フェブレーと同じコルピックスでした(ということで『ワーナー・ガール・グループ・ナゲッツ』ではシェリー・フェブレーと同じ『Vol.5』に収録)。クッキーズのメンバーなので当然ディメンジョンかと思っていたら違っていました。思い込みって怖いですね。
思い込みといえば、コルピックスはシェリー・フェブレー&ポール・ピーターセン&ジェイムス・ダーレンの『ティーンエイジ・トライアングル』のイメージが強くて、何となく白人ミュージシャンのレーベルのイメージを持っていましたが、実際にはアール・ジーンや、あのニーナ・シモンも60年代初期にコルピックスに在籍していたんですね。

ということで、今日もコルピックスの話の続きを。つい先日、コルピックスだとわかった曲で話です。

一昨日は仲秋の名月。一日、いろんな月の歌を聴いていました。
考えてみると去年は「In The Chapel In The Moonlight」という月の曲にどっぷりとハマりましたが、そのきっかけとなったのが1975年11月3日に放送された「ゴー!ゴー!ナイアガラ」。その日の放送でかかった別の月の曲に今、ハマっています。
それはマーセルズ(The Marcels)の「ブルー・ムーン」。
プロデューサーはシェリー・フェブレーと同じくステュ・フィリップス。というわけでマーセルズもコルピックス。ちなみにマーセルズは最初は白人が2人いたようですが、途中でその白人が抜けて後は全員黒人になったようです。

「ゴー!ゴー!ナイアガラ」ではマーセルズの「ブルー・ムーン」はこの後、2度かかります。まず3週間後のリクエスト特集の日に、『CRUISIN' 1961』というレコードがかかるのですが、このレコードの1曲目にかかるのがマーセルズの「ブルー・ムーン」。さらに翌1976年の11月23日に放送された「ブルー(がタイトルにつく曲の)特集」でもマーセルズの「ブルー・ムーン」がかかります。「ゴー!ゴー!ナイアガラ」で同じ曲が3回もかかるのは本当にめずらしいこと。

この日の「ブルー特集」では「ブルー・ムーン」について興味深い話が語られます。まず、曲がかかる前の大瀧さんの言葉。ちなみにこの前にかかった曲はファッツ・ドミノの「ブルーベリー・ヒル」。

さて、次の曲もスタンダード・ナンバーですが、こういう風にアレンジされるとは、ちょっと考えてもみませんでした。

で、曲がかかった後の言葉。

元はすごいバラードでね、「ブルー・ムーン」って非常にそういう(バラードの)曲なんですけど、こういう風になっちゃうんです。この辺がアレンジの面白味で。その辺をいつか番組で突いてみたいなと思っています。

ということでしたが、残念ながらこの後、そういった特集はされませんでした。もちろんいろんな曲のカバーはたくさんかかって、カバーの面白さは折りに触れて語られてはいましたが。

というわけで「あとは各自で」ということでもあるので、「ブルー・ムーン」の聴き比べを。曲を書いたのは数々のスタンダードナンバーを世に送り出したロジャーズ=ハートのコンビ。曲が生まれたのは1934年。
まずは「ブルー・ムーン」が生まれた翌年の1935年時期に録音されたコニー・ボズウェル(Connie Boswell)が歌ったものを。バックはヴィクター・ヤング・オーケストラ。



次はメル・トーメが1949年に歌ったもの。これはチャートで20位まで上がったようです。



で、次の有名なカバーがエルヴィス・プレスリー。録音は1954年。プロデューサーはサム・フィリップス。



このエルヴィスの「ブルー・ムーン」は大瀧さんの「アメリカン・ポップス伝パート1 第3夜」でかかっています。聴き比べをするためにメル・トーメの歌ったものも。大瀧さんは子供の頃からエルヴィスのファンでしたが、エルヴィスの歌う「ブルー・ムーン」を聴いたのはずっと後のことだったそうです。そのときに驚いたのはエルヴィスが裏声で歌っていたこと。
「エルヴィスは裏声、ファルセットのない人かと思っていましたが、あるんですよね」と。ただ、曲自体は本来のバラードを踏襲していますね。

この7年後の1961年にカバーしたのがマーセルズ。プロデューサーはエルヴィスのプロデューサーのサム・フィリップスとは(たぶん)何の血のつながりもないステュ・フィリップス。ステュ・フィリップスはマーセルズのメンバーにキャディラックスの「Zoom」という曲の最初の部分のようなコーラスを「ブルー・ムーン」で使ってみてはと提案したようです。
というわけでキャディラックスの「Zoom」を。この曲、一昨日のサンソンでもかかりましたが、イントロのコーラスはナイアガラ・ファンにはたまらないものがあります。



これをヒントにして、マーセルズ・スタイルのコーラスを生み出したのが「ブルー・ムーン」。



カバーで、別の曲のコーラスを参考にしたとはいえ、このオリジナリティはすごいですね。
特にこのコーラス。とてもじゃないけど歌えません。

Bomp ba-ba bomp, ba bomp ba bomp bomp, ba-ba bomp ba-ba bomp, da dang da-dang dang, da ding-a-dong ding

ちなみにこの言葉、紹介したライノの『Doo Wop Box』のドゥー・ワップ・クイズの2問めの問題でした。

マーセルズの「ブルー・ムーン」は全米チャート1位、R&Bでの1位、UKのシングルチャートでも1位の大ヒット。「ブルー・ムーン」は僕に限らずマーセルズの歌ったもののイメージが強くて、本来のバラードの方が違和感があるはず。

ところでマーセルズの「ブルー・ムーン」のB面はバリー・マン作曲の「Find Another Fool」だったんですね。ちょっとびっくり。
ネット上で拾った言葉ですが、『サウンド&レコーディング・マガジン』1988年7月号で「ソングライター研究 バリー・マン&シンシア・ウェイル」といいうタイトルで大瀧さんと達郎さんが対談していたようで、こんな会話がなされていました。

大瀧「(バリー・マンは) バス・ヴォイスをうまく生かした曲作りをしてる。マーセルズのB面をやったりするところも、やっぱり…」 
山下「嬉しいんでしょうね、単純に」 
大瀧「嬉しいんだよ。ドゥーワップが好きだから」 
山下「わかるわ、それ」

この対談、全文読んでみたくてこの雑誌を探しているのですが見つかりません。
おそらくこの後、バリー・マンの「Who Put The Bomp」の話になっていくのではないかと思いますが、「Who Put The Bomp」がマーセルズの「ブルー・ムーン」の影響を受けて作られていることは一目瞭然。

1961年のシングルチャートで1位になった曲のリストをみると、マーセルズの「ブルー・ムーン」は(B面にバリー・マンの曲を収録していることを含めて)まさにポップスの時代の幕開けを示しているような気がします。

もしも「アメリカン・ポップス伝」が続いていたら、まちがいなく出てきたはずのマーセルズの「ブルー・ムーン」。いったい大瀧さんは、そこにどんな物語を用意したでしょうか。
by hinaseno | 2015-09-29 11:07 | 音楽 | Comments(0)