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by hinaseno
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加東大介のこと


久しぶりに映画の話。
今、最も気になっているのが加東大介という俳優です。先日、ネットでようやく見ることができた成瀬巳喜男の『おかあさん』と『秋立ちぬ』(今は削除されていますね)、さらに今井正の『ここに泉あり』に出ていたことが大きいでしょうね。特に『おかあさん』は加東大介にしてはとても好感の持てる役柄。
加東大介を意識するようになったのはやはり小津の『早春』ですが、同じく小津の『秋刀魚の味』も含めて第一印象はなんとなく疎ましい役柄。でも、何度も何度も見ているうちにその演技の素晴らしさに気がついていって、すっかりその魅力にはまってしまいました。考えてみると『早春』は出演している人がすべて愛すべき存在になっていて、脇役でも最初が高橋貞二、次が三井弘次、そして今は加東大介。

そんなある日、いつものようにちょっとした偶然が起こります。
先日初めて見た『森崎書店の日々』という映画にちらっと映った本がこのブログでも紹介した旺文社文庫版の梶井基次郎『檸檬・ある心の風景』。主人公の菊池亜希子が読んでいた本です。その本のことが気になって古本屋に行って旺文社文庫が並んでいる棚を眺めていたら、まさにその梶井基次郎『檸檬・ある心の風景』の隣にこれがありました。
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加東大介が戦地での体験を記した『南の島に雪が降る』という本。こんな本を書いていたなんて全く知りませんでした。「人生とは、何かを計画しているときに起きてしまう別の出来事のこと」(by 星野道夫)ですね。後で調べたらこの『南の島に雪が降る』は今年になってちくま文庫、さらには光文社の知恵の森文庫から復刊されているのがわかりました。

これを読んで加東大介という俳優についてもう少し調べてみたくなったのですが、残念ながら加東大介が書いた本はどうやらこれだけ。加東大介について書かれた本もなさそうです。
でも、川本三郎さんの本を読んでいたら『キネマ旬報』の1958(昭和33)年5月下旬号に加東大介のインタビュー記事が載っていることがわかり、再び同じ古書店に行ったら、幸運なことにそれがありました。こういうのっていい形でつながっていくから不思議です(この『キネマ旬報』にはもう一つ面白いつながりがあったのですが、それはまた明日にでも)。
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加東大介の特集は「今日の傍役」というシリーズの4回目。
1958(昭和33)年といえば小津の『早春』に出て2年後のことなので『早春』や小津の話が語られていることを期待しましたが、残念ながらありませんでした(なぜだろう?)。
でも成瀬巳喜男に関する話はたっぷりとありました。一番よかったのはこの話でしょうか。終戦後、映画の役者になって東京に行ったものの、時代劇の役しかもらえない状態が続きます。こんなのでやっていけるんだろうかと思っていたときに成瀬から声がかかります。
そんなことをしているうちに、成瀬巳喜男さんから『おかあさん』のクリーニング屋の役に口がかかりました。以前、成瀬さんは前進座と『我等の仲間』というのを撮る予定だったことがあったのです。ところがそれがルンペンの話で、内務省から「そんなものは危険だ、いかん」という鶴の一声があり、クランクの初日にしてストップしてしまった。その時、私のことを覚えていてくれたのです。会社はウンとは言わなかったらしいのですが、成瀬さんが「同じ下町の人間なのだから、彼ならでる」とくどいてくれたという。電話でその話を聞いたときには、思わず電話口で泣きましたね。涙がボロボロ出やがった。牛ちゃんが『先代萩』の舞台を見て泣いたときのように、まったくの男泣きというやつ。よく判る?どうもありがとう。
これが大変好評だった。それと『決闘鍵屋の辻』とで、賞をいただきました。さあ、それからは現代劇の話がドンドン来る。まったく不思議なもんです。

このあと三井弘次の話もちょっと出てきます。「私の尊敬する三井弘次さん」という言葉で始まっているように、加東大介が三井弘次を俳優としていかに尊敬していたかがよくわかります。加東大介と三井弘次は『早春』でもいいコンビを組んでいますが、その前年の『ここに泉あり』でも抜群のコンビネーションが見られます。酒に酔っ払ったこのあたりのシーンはほとんど『早春』と同じ。
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さて、もう少し成瀬の話。
私は監督運というのがまたよかった。成瀬さんには、前にお話ししたようなわけで、以後の作品にはかならず出させていただいている。こんどの『鰯雲』にしても、主演の淡島さんと並んで決まったのは、チョイ役の私なんです。役者冥利につきるというやつですよ。

この成瀬の『鰯雲』は川本三郎さんも『成瀬巳喜男 映画の面影』で絶賛されていて、今、いちばん見てみた成瀬の映画です。だれかアップしてくれないでしょうか。でも、その前に5/7までしか見れなかった『おかあさん』を全部見てみたい。
これは『おかあさん』の一場面。手前は香川京子さん。めちゃくちゃかわいいですね。
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Commented at 2015-06-30 23:35 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by hinaseno | 2015-06-28 14:59 | 映画 | Comments(1)