人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Nearest Faraway Place nearestfar.exblog.jp

好きなリンク先を入れてください

Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno

早春の小田川(14)― 「私は、なにかみちたりたような気持で、しずかな山門を出た」 ―


早春の小田川(14)― 「私は、なにかみちたりたような気持で、しずかな山門を出た」 ―_a0285828_1174281.jpg

国勝寺の境内に入ると、どうやら法事のようなものが行なわれる日だったようで人がたくさん集ってきていました。僕がうかがったときはちょうど法事が始まる直前で本堂の中もかなりせわしない様子。とてもゆっくりと話を聞ける状態ではありませんでした。あの日、木山さんと梵妻が話をしたのはどの部屋だろうかと縁側の開いていた扉から本堂の中を覗いてみましたが、たくさんの人がいてじろじろと眺めるわけもいかず、タイミングが悪かったなと思っていたら、実は国勝寺は普通はだれもおらず、たまたまその日は法事があったために人がいて本堂も開けていたということでした。ついていたんですね。

せわしい中、対応していただいた女性(現在の梵妻でしょうか)と少し話。国勝寺には有名な椿があるとのことで、そこに案内していただきました。
樹齢350年のかなり大きな椿。大きく広がった枝の下に見事な真っ赤な椿の絨毯ができるとのことです。ただ、僕が行ったときには椿が一つ二つ咲き始めたところ。たぶん、今ぐらいがきれいに咲いている頃なのかもしれません。これがその椿の写真。
早春の小田川(14)― 「私は、なにかみちたりたような気持で、しずかな山門を出た」 ―_a0285828_1181153.jpg

ちなみに木山さんが見たという国宝(正確には国指定重要文化財)の骨蔵器は現在は別の場所に保管されていて寺には置かれていないとのことでした。矢掛の郷土美術館にレプリカが展示されているとのこと。でも考えてみたら、木山さんがやってきたときには普通に見せてもらったようですね。梵妻からは「今度おいでんさる時にゃ、写真機や拓本の道具を持ってお出でつかあさいなあ」と言われたりしています。ちょっと考えられません。

あまり長居するわけにもいかず帰ろうとしたときに、僧侶の方から国勝寺の絵葉書をいただきました。そこにはもちろん骨蔵器の写真がありました。
早春の小田川(14)― 「私は、なにかみちたりたような気持で、しずかな山門を出た」 ―_a0285828_1183379.jpg

それから椿の絨毯の写真も。
早春の小田川(14)― 「私は、なにかみちたりたような気持で、しずかな山門を出た」 ―_a0285828_1184697.jpg

というわけで、あの日の木山さんと同じように山門を出て、石段を下りて行きました。その山門の横には大きな桜の木がありました。
これは桜が満開のときの絵葉書。
早春の小田川(14)― 「私は、なにかみちたりたような気持で、しずかな山門を出た」 ―_a0285828_1191740.jpg

で、これは僕が行った日に撮った写真。
早春の小田川(14)― 「私は、なにかみちたりたような気持で、しずかな山門を出た」 ―_a0285828_11103671.jpg

木山さんが行った5月はもちろん桜が散ったあと。葉がかなり濃い青になっている頃ですね。
最後に改めて、「ねんねこ」のこの場面を。
私は、なにかみちたりたような気持で、しずかな山門を出た。そうして石の段々をくだって、国道の乗合自動車の待合所の方へあるきながら、何故か初恋の女にでもあってかえるような、気がするのであった。

僕も「なにかみちたりたような気持で」石段を降りましたが、「初恋の女にでもあってかえるような」気持ちになる前に、足の痛みがさらに増してきて、三谷駅へ一歩一歩ゆっくりと足を進めました。
by hinaseno | 2015-04-10 11:17 | 木山捷平 | Comments(0)