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by hinaseno
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「風の又三郎は僕だ」


川本三郎さんからの素敵なクリスマスプレゼントが届きました。こんな本が出るのを待っていました。『成瀬巳喜男 映画の面影』(新潮選書)。
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時間があまりなくて今は50ページほど読んだあたり。読めば読むほどに思うことは、川本さんが取り上げた映画で観てみたいと思うものがほとんどDVDになっていないということ。例えば昨日読んだところに出てきた『愉しき哉人生』(昭和19年公開)。近年テレビ放送されたとのことですが、だれか録画などしていないんでしょうか。
成瀬のDVD化されていない映画といえば、なんといっても『秋立ちぬ』ですね。映画のワンシーンをとらえたこの写真には心ときめいてしまいました。あの少年と少女が手をつないで線路を歩くシーン。こんな素敵なシーンがあったなんて。
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そして『秋立ちぬ』に触れた話には、やはり大瀧さんのことが書かれています。大瀧さんの『秋立ちぬ』研究は川本さんの『銀幕の東京』がきっかけだったわけですが、大瀧さんによって『秋立ちぬ』はメディアでいろいろと取り上げられるようになったのは間違いのないはず。それなのに、なんでDVD化されないんだろう。個人的には『秋立ちぬ』と『愉しき哉人生』という2つの小品を2in1で出してもらえたらと考えていますが、正直、もう待ちくたびれてしまいました。「待てば海路の日和あり」を座右の銘にしているとはいえ、どうにかしてという感じです。

ところで『愉しき哉人生』を紹介した話の中で、川本さんが「宮沢賢治の『風の又三郎』を思わせる」と書かれていて、思わずおっと思ってしまいました。実は今、宮沢賢治のこと、正確にいえば、大瀧さんと宮沢賢治のことを考える日々が続いているので。

話は前回の「抱きしめたい」について。大瀧さんがはっぴいえんど時代にかいた曲ですね。詞は松本隆さん。詞を読めばその中に宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のイメージが入り込んでいるのがすぐにわかります。あるいは最後の「きみを燃やしてしまうかもしれません」というのは『よだかの星』のイメージが入っているのかもしれません。 東北に向かう列車の中で、松本さんが大瀧さんの書いた曲に詞を付けようとしたときに、心の中に浮かんできたのは宮沢賢治の風景だったようです。

大瀧さんの作る曲にそれ以前のポップスの(あるいはポピュラー音楽やジャズ、民謡)いろんなエッセンスが詰め込まれているように、松本隆さんが書いた詞には、いろんな文学(のイメージであったりタイトルであったり)を取り入れています。
東北に向かう列車の中だったから、ということもあったにはちがいませんが、何よりも松本さんは大瀧さんの中に宮沢賢治的なものを見ていたのかもしれません。

宮澤賢治は大瀧さんと同じ岩手県出身。大瀧さんが折りに触れて同郷の宮澤賢治の話をしていることは気がついていましたが、最近になって、大瀧さんの心の中にはかなり深く宮澤賢治が入りこんでいたことがわかってきました。
小学校のときに大瀧さんが初めて見た映画が『風の又三郎』。おそらく昭和15年公開の島耕二監督のものでしょうね。
その風景の中に、大瀧さんがよく知っている風景がいくつも出てきたそうです。大瀧さんが生まれたのが岩手県の江刺。『風の又三郎』はまざにその江刺を舞台にした物語だったようで、映画もそのあたりでロケされたようです。で、映画を見ていた少年の大瀧さんは現実とフィクションの区別がつかなくなってしまいます。で、こう思ったんですね。
風の又三郎は僕だ。

映画を見ていた何人かの少年たちが同じ気持ちを抱いただろうとは思いますが、大瀧さんは大人になってもこの気持ちがなくなることはありませんでした。

ところで、大瀧さんが松田聖子にかいた『風立ちぬ』について。歌詞は松本隆さん。タイトルは堀辰雄の『風立ちぬ』から来ていたようですが(確かタイトルははじめから用意されていたはず)、でも、大瀧さんと、そして大瀧さんのかいた曲に詞をつけた松本さんの中にあったのは堀辰雄の『風立ちぬ』ではなく、宮沢賢治の『風の又三郎』だったんではないかとちょっと考えたりもしています。はっぴいえんどは「風」に関係の深い人たちではありますが。
そして「風立ちぬ」は数年後に大瀧さんを「秋立ちぬ」に向かわせます。

「風立ちぬ、今は秋」
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by hinaseno | 2014-12-25 11:44 | 雑記 | Comments(0)