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by hinaseno
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山田洋次が映画化しようとしていた藤原審爾のもう一つの作品のこと


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上は、現在発売されている山田洋次監督の『馬鹿まるだし』のDVDのパッケージの表の写真。公開時のポスターと同じものが使われている気がします。
「監督 山田洋次」の下には同じ大きさで「原作 藤原審爾」、そしてその下には小さく「庭にひともと白木蓮より―小説中央公論―」と記載されています。
劇場公開日は1964年1月15日。成人の日ですね。この時期はまさにクレージー・キャッツの人気が大爆発していた時期。ただ、ハナ肇が映画で主演するのはこれが初めてだったんでしょうか。この作品から「馬鹿シリーズ」そして「為五郎シリーズ」が次々に作られることに。
ハナ肇がはじめて主演するということで、クレージー・キャッツのメンバーも参加したわけですね。興味深いのは植木等が契約の関係でクレジットを全くされないことで出演していること。ナレーションも植木等。
DVDのパッケージの裏にもクレジットはなし。でも、お坊さん姿の植木さんの写真がきっちりと掲載されています。
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『馬鹿まるだし』で一番気になっていたのは、この映画のロケがどこでなされたかということ。ネットでは確認できなかったので。で、 DVDの特典の「山田洋次監督自作を語る」を見たらわかりました。どうやら千葉の海沿いの町のようです(おそらくいくつかの町)。
山田洋次によれば、藤原審爾の作品の舞台がどこかはわかっていて、できれば瀬戸内海の見える場所でロケしたかったようですが、それにはかなり予算が必要で、まだ新人監督であった山田洋次さんが会社に無理をお願いするのはとてもできなかったそうです。それから人気絶頂でテレビに映画に引っ張りだこのクレージーを東京から遠く離れた場所に何日も滞在させて映画を撮影するというのは時間的にも無理だったんでしょうね。

さて、山田洋次は、寅さんシリーズを作っているときに、藤原審爾のもう一つ別の作品を映画化したいと考えていました。やはり藤原審爾が子供時代を過ごした片上を舞台にした小説。
小説のタイトルは『へそまがり』。これは後に『われらが国のへそまがり』という題名に変えられています。藤原審爾が亡くなってまもなく徳間文庫から出されたものはこちらのタイトル。考えたら藤原審爾は大瀧さんの『EACH TIME』が出た年に亡くなっていたんですね。没後30周年だったのに、何もなかったようです。ちょっと悲しいですね。

この文庫本の解説を解説を書いていたのが山田洋次。藤原審爾と山田洋次は『馬鹿まるだし』をきっかけにして交流が生まれたようで、藤原審爾は10歳年下の山田洋次をかわいがっていたようです。これがとてもいい話で全文引用したいのですが、大変なので今日はその最初の部分だけを。
 1984年12月21日、長い病気との戦いの果てに藤原さんはこの世を去った。

 正月に封切られる『男はつらいよ』第24作の追い込み撮影中だった私は、不精髭を剃る暇もなく仕事着のまま通夜に駆けつけた。
 ひとまわりもふたまわりも小さくなった藤原さんの白い顔を見ながら私が最初に思ったことは、とうとう『われらが国のへそまがり』の映画化がまにあわなかったということだった。
 手を合わせ私はそのことを藤原さんに詫びた。

「洋ちゃん、今夜へそまがりというのを書くからね、君、映画にしろよ」
 棺桶が安置されたその同じ部屋で、眼鏡の奥から優しい目で私を見ながら藤原さんがそう云ってくれたのは九年前のことだ。

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by hinaseno | 2014-10-19 14:45 | 雑記 | Comments(0)