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あのシーンで酒を飲んでいたのは木山さんだったかもしれない


ここまで『秋津温泉』のことを書きつつ、実はまだ藤原審爾の小説『秋津温泉』を読んでいません。一連のこの話を書き終えてからゆっくり読んでみようと思います。

映画の『秋津温泉』は、原作とは時代設定を少しだけ変えているようです。原作では主人公の河本周作が秋津温泉に初めていくのは戦中のこと。藤原審爾自身の体験と同じ。でも、映画は主人公が空襲で焼かれた家に戻ってくる場面から始まります。それから新子が自らの手首を切って自殺するというラストシーンも原作にはないものでした。
まだ藤原審爾の1960年くらいまでに書かれた代表的な作品をほとんど読んでいないのでなんともいえないのですが、映画は『秋津温泉』だけではなく、藤原審爾のいくつかの作品が取り入れられているのではないかと思っています。例えば主人公の新子には『魔子』もきっと入っているんだろうと。

ところで、映画の『秋津温泉』の製作はすんなりとはいきませんでした。
最初の撮影は1962年2月。場所はもちろん岡山の東を流れる吉井川上流にある奥津温泉。まず、冬の、雪の中のシーンを撮影。ところがその撮影後に河本周作役の芥川比呂志さんが入院、長期入院しなければならなくなります。芥川さんの病気は、岡田茉莉子さんの父親が亡くなった病気と同じ肺結核。
で、新しく決まったのが長門裕之さん。3月末に撮影を再開ということに。おそらく最初に撮られた冬のシーンでも、芥川さんが出ていた部分は撮り直されたんだと思いますが、雪が降る中を岡田茉莉子さんがひとりで歩く場面はそのまま使われているんでしょうね。そのシーンは本当に美しい。

さて、若き日の長門裕之さんというと、サザンオールスターズの桑田佳祐にそっくりすぎて、どうしてもそれを意識せずにはいられなくなって困ります。
これは津山駅での岡田茉莉子さんと長門裕之さん。
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それからこれは文壇仲間と思われる人たちと酒を飲んでいるシーン。長門裕之さん演じる河本周作イコール藤原審爾と考えるならば、この中に木山捷平がいてもおかしくありません。
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さて、これは原作にはないラストシーン。
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岡田茉莉子さんは手首を切った後、吉井川の河原まで歩き、血が流れ続ける手を吉井川の水の中に浸します。そして、息絶えた彼女を長門裕之さんが抱き上げる。
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映画の撮影がすべて終了したのは1962年の5月下旬。そして6月15日に『秋津温泉』は全国で公開され映画は大ヒット。この映画によって岡田さんは数々の賞を受賞します。

で、この年の夏の終わりに彼女は再び小津の映画に出演します。つまり、彼女は岡山の空気をたっぷりと吸って、吉井川の水に触れ、きっと吉井川で取れた魚も食べた後に、小津の最後の映画『秋刀魚の味』の撮影に入ったわけです。
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by hinaseno | 2014-10-16 08:05 | 雑記 | Comments(0)