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『黒い雨』を撮影した場所のこと、そしてそのカメラマンは...


牛窓でロケをした映画として、以前『カンゾー先生』という映画を紹介しました。
監督は今村昌平。小津のいくつかの映画で助監督をしています。
今村がなぜ牛窓をロケ地に選んだかというと、それ以前に『黒い雨』という映画を撮影するときに牛窓に立ち寄って牛窓の町を気に入ったため、というようなことを本で読んでいて、いつか観てみようと思っていましたが、いや観てびっくり、というかびっくりすることの連続。

『黒い雨』の原作は井伏鱒二。1989年に公開されています。物語の舞台は彼の郷里の広島。タイトルからわかるように広島に落とされた原爆がテーマ。主演はキャンディーズのスーちゃんこと田中祐子。
この映画が岡山でロケをされたのを知ったのは何度か紹介した『瀬戸内シネマ散歩』という本。ただ、ロケ地として紹介されていたのは山陽本線では三石駅のとなりの吉永駅から北に行った場所にある八塔寺ふるさと村。

映画を観てまずびっくりしたのはこのシーン。
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スーちゃんたちが広島のどこかの海辺の田舎の町に墓参りに行くという場面。でも、ここで数秒間カメラをとめて捕えられていたのはまぎれもなく牛窓の本蓮寺。
瀬戸内の海を背にした三重塔のある風景を捕えることができるので、ここは本蓮寺を撮るには絶好の場所。ただし、実は撮影する場所は裏山の墓地の中。カメラが捕える風景は次第に下にさがって、墓の前で手を合わせるスーちゃんが映ります。
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この映画を観終えて、もしかしたらもっと牛窓が映っているのではないかと再度観始めたときに気がついたのがこのクレジット。
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「撮影 川又昂」。
なんと小津の映画で厚田カメラマンに付いて撮影助手をしていた川又昂さんがこの映画のカメラマンをされていたわけです。ちなみにこれは『東京物語』のクレジット。
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小津とつながりのある(そして大瀧さんとも何度か話をされた)川又さんが牛窓にやってきていて本蓮寺を撮影されていたとなれば興奮しないわけにはいきません。

ところで僕も全く同じ場所に足を運んでみました。川又さんがカメラを構えたはずの場所にスーちゃんたちが手を合わせていたのは何という家の墓かも確認してきました。
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驚くことはまだまだあって特典に収められていたメイキングを見ると、さらに岡山のいろんな場所で撮影されていたことがわかりました。
まずはメイキングが捕えていたこのシーン。走っている電車はまぎれもなく岡山市内を走る路面電車。以前地図で示したA地点のあたり。
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そしてそれを撮影しているカメラマンの姿が。まぎれもなく川又昂さん。ちょうど表町商店街の入り口のあたりでカメラを構えています。
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ただ、ここで撮影された映像は結局映画では使われませんでした。今村昌平は主人公の矢須子(スーちゃん)が四国を巡礼するというもうひとつのエンディングを考えていて、それを撮影していたんですね。でも撮影した場所は四国ではなくすべて岡山。
で、その未公開ラストシーンである「矢須子の四国巡り」も特典に収められていたのですが、これはもうたまらない映像のオンパレード。

これが路面電車の前を巡礼着姿で歩くスーちゃん。このあとスーちゃんは表町商店街の中を少し歩きます。
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そして、この前のシーンで捕えられたのがこの風景。
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なんと京橋の上を路面電車が走っています。ということはここはおそらくかつて遊廓があった中島で撮られているはず。

もっとびっくりしたのはこのシーン。四国のお寺を巡っているはずなのに、スーちゃんが歩いているのは牛窓の本蓮寺の境内の中の三重塔のそば。小津の『東京物語』の尾道のシーンに重なる風景です。
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メイキングを観ていて最も驚いたのは、本篇のこのシーンを撮った場所。まさかこんな場所で撮影していたなんて思いもよりませんでした。
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もちろんカメラマンは川又さん。メイキングにはきっちり川又さんの後姿が捕えられていました。小津の映画の撮影助手をされていた川又さんが岡山のこんな町までやってきていたとは。
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by hinaseno | 2014-10-02 09:29 | 雑記 | Comments(0)