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by hinaseno
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壽荘 スグソコ


改めて、『東京暮色』を観直してみたら、あの橋脚を夜とらえたシーンや、『早春』には出てこない池上線の五反田駅近くの風景をとらえたシーンがいくつも出てきました。『早春』のときに撮っていた橋脚のシーンを『東京暮色』で使ったのではと書いてしまいましたが、それは違っていますね。
例えばこんなシーン。
a0285828_1002125.jpg

上を走っている三両くらいの電車は間違いなく池上線の電車。山田五十鈴が経営している「壽荘」という麻雀屋が池上線の線路の近くにあることを示しています。「壽荘 スグソコ」という看板が映画のために取り付けられたのがすぐにわかりますね。

映画では五反田駅の隣の、五反田駅からはたった300mしか離れていない大崎広小路駅のホームも映っています。
『東京暮色』は、雑司ヶ谷、五反田の他にも、気になる風景がいくつも出てきます。『東京暮色』で出てくるシーンをじっくりと見ていたら、『早春』につながるものが発見できそうな気がしてきました。『東京暮色』のためにどれだけのロケハンをしたかは小津の日記では確認できないのですが、五反田辺りを含めて『早春』のときにしたロケハンが大いに役に立ったのは確かだろうと思っています。
ちなみに小津の日記を見ると、『東京暮色』についてはこんな記述が。
1956(昭和31)年9月7日 シナリオの話出ておおいにすゝむ 題名〈東京暮色〉ときめる
1956(昭和31)年11月1日 シナリオ執筆にかゝる
1956(昭和31)年11月29日 シナリオ脱稿 午後九時二十分

『早春』のときにはシナリオを書くのに3カ月近くかかったのに、『東京暮色』はほぼ1カ月で書き上げていますね。
で、おそらく翌年の始めにロケハン、撮影となるんだろうと思いますが、残念ながら1957(昭和32)年の日記はきちんと書かれているものがありません。

ところで、そういえば、と思い出したのが、川本三郎さんの『いまむかし 東京町歩き』(毎日新聞社 2012年)。
この中に、「池上線五反田駅」というエッセイが書かれていました。
東京のJRの駅で特徴がある所として、御茶ノ水駅、四ッ谷駅、そして「JRの駅のはるか上に東急池上線がある五反田駅」をあげています。
池上線の駅は、JRを跨ぐ感じで作られているから非常に高いところにある。空中に浮かんでいるように見える。しかも吹きっさらし。強風が吹いたらどうなるのだろうと心配になるほど。

そう、高いところが苦手な僕は、ホームを歩いていたときに、少しだけびくびくした記憶が。長谷川裕『五反田駅はなぜあんなに高いところにあるのか 東京周辺鉄道おもしろ案内』という本も出ているとのこと。
五反田は大岡昇平の『武蔵野夫人』にも出てくるんですね。もう、何年も前に読んだ本ですが、もちろんその頃五反田なんて場所を知るはずもなく。
こんな文章が出てくるようです。
五反田の駅は接続した百貨店の上層階から池上線を発進させ、広い目黒川流域の真中に人口造営物のブロックを据えつけていた。

このブロックが、あの橋脚なんでしょうね。
で、川本さんの文章の中には当然、小津の話も出てきます。
その造形の面白さに惹かれたのが小津安二郎監督。『東京暮色』(57年)で、...

改めて、先日紹介した松本竣介の五反田駅近くを描いたデッサンのことを思い浮かべました。彼は結局、池上線の五反田駅辺りの風景をカットして、あの「鉄橋付近(鉄橋近く)」という作品に仕上げたわけですが、もともと彼があの場所を描こうと思ったのは、やはり「その造形の面白さ」、つまり目黒川にかかる国鉄の低い鉄橋と、そのかなり上を跨ぐ形になっている池上線の風景の面白さに惹かれたからではないかと思います。
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by hinaseno | 2014-07-10 10:02 | 映画 | Comments(0)