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by hinaseno
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「そぞろあるき」


いつも言っていることですが、何の関係もなく関心を抱いたものがつながるというのは本当に愉しいことです。

ここのところ、松本竣介の画集(『生誕100年 松本竣介図録』)をつぶさに眺める日々が続いています。倉敷の大原美術館で松本竣介の「都会」を”発見”して以来、松本竣介の絵がどこの美術館に置かれているのかを確認しています。絵が好きな人であるならば、こういうのはあたりまえのようにしてるんでしょうね。
で、気がついたのは岩手の美術館に松本竣介の絵がかなり多く置かれているということ。松本竣介は東京生まれですが2歳のときに父親の仕事の関係で岩手県の花巻に移り住んで、少年時代を花巻、そして盛岡で過ごしたんですね。
岩手県はもちろん大瀧さんの出身地。そして花巻は大瀧さんが高校時代を過ごされた場所。
岩手県は、というか東京よりも北は一度も行ったこともないのですが、一生のうち一度は訪れるべき場所のように思えてきました。

松本竣介は1936(昭和11年)、24歳のときに結婚し東京の淀橋区下落合に新居を構え、そこに「綜合工房」というアトリエを作って製作活動をしたんですね。
『図録』には、そのアトリエに置かれていた製図板が載っていたのですが、これがびっくり。その製図板にはランボーの詩篇が書き写されているんですね。それがなんと、荷風の『珊瑚集』に収められた荷風訳の「そぞろあるき」。「そぞろあるき」は少し前に触れたレニエの「仏蘭西の小都会」とともに荷風訳の中ではとりわけ好きな詩。松本竣介はこの製図板の上で読書をしたり、画想を描いたり、原稿を書いたりしたとのこと。その板に荷風訳のランボーの詩が記されていたとは。
松本竣介はこの「そぞろあるき」という詩を心の拠りどころにして様々な創作活動をしていたんですね。そして、まさにその製図板の上からあの素晴らしい作品が生み出されていたわけです。いやはやなんとも。

ところで、僕はこれまでずっと「そぞろあるき」の原題はフランス語で”散歩”を意味する”Promenade”だろうと思っていたのですが、違ってたんですね。原題は”Sensation(センサシオン)”、英語のセンセーションだったとは。というわけなので、荷風以外の人は「感動」とか「感覚」と訳しているようです。でも、僕はやはり「そぞろあるき」という題がつけられていたからこそ、この詩に目をとめたように思います。

というわけで、松本竣介が製図板に書き写した荷風訳の「そぞろあるき」を。僕もこれを書き写したものを机の上に貼っておこうかな。
   蒼き夏の夜(よ)や

   麦の香(か)に酔ひ野草(のぐさ)をふみて

   小みちを行かば

   心はゆめみ、我足(わがあし)さはやかに

   わがあらはなる額、

   吹く風に浴(ゆあ)みすべし。


   われ語らず、われ思はず、

   われただ限りなき愛

   魂の底に湧出るを覚ゆべし。

   宿なき人の如く

   いよ遠くわれは歩まん。

   恋人と行く如く心うれしく

   「自然」と共にわれは歩まん。

これが松本竣介が使っていた製図板です。
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by hinaseno | 2014-07-05 11:24 | 雑記 | Comments(0)