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by hinaseno
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「いつか佐分利信を気取って」


つい先日、前からずっと気になっていた『ぽかん』という雑誌を、岡山の古書五車堂さんで購入しました。最初に購入したのは先月発売されたばかりの最新号の4号。

『ぽかん』という雑誌のことを知ったのは、数年前から個人的には最高の敬意を持って毎日拝読している画家の林哲夫さんのブログで紹介されていたため。最新号の表紙コラージュは林さんの描かれたもの。林さんが3号を紹介されていたときに、そのデザインがすばらしくて強く印象に留めていました。最新号の4号は、倉敷の蟲文庫の田中美穂さんの「木山捷平様」というエッセイと、やはり木山さんに関する本や解説をいくつも書かれている岩阪恵子さんのエッセイが掲載されていることがわかったので、ぜひ手に入れねばと。

ある程度は知っていたとはいえ、実際に手にしてみて、その素晴らしさに圧倒されました。附録もどっさり。最初はどれがメインの雑誌でどれか付録なのかわかりませんでした。収められた文章で僕の知っている人はほんの数人。でも、どの方の書かれている文章も読ませるものばかり。さらに、附録にいたるまでデザインが素晴らしすぎ。しかも値段がたったの900円。信じられない。
というわけで、すぐに2号と3号も購入。ほんとうは1号も欲しかったのですが、これは品切れとのこと。残念。

いろいろ読んだ中で、特に目を留めたのが藤田加奈子さんという方。3号の附録の『のんしゃらん通信 Vol.1』に載っていたエッセイを読んで、強く共感を覚えてしまいました。例えばこんな文章。
東京會館でお茶を飲むたびにいつも思うのだが、いつか佐分利信を気取って『化石』ごっこをしたいなあということ。

後のプロフィールを見たら1974年生まれ。40歳くらいの女性が「佐分利信を気取って」なんてことを書くなんて、かなりびっくり。で、ネットで調べてみたら彼女のブログを発見。これがすごすぎて。
先日ちょこっと触れた、ここのところ毎朝、かなりの時間をかけて読んでいるというのは、この藤田加奈子さんのブログのことでした。

映画や文学、ときには絵画にからめながら東京の町歩きをされているのですが、大瀧さんや川本三郎さんがされていたのと同じ。もしかしたら大瀧さんといっしょに歩かれていたメンバーのお一人だったんではないかと思ってみたり。とにかく趣味が合いすぎて。

今朝読んだのは、藤田さんが2005年1月に書かれたもの。ブログを始めらた2004年から順番に読み進めています。
紹介されている映画や本も僕の大好きなものや、これから見たいものばかり。音楽に関しては基本的にはクラシックを聴かれているようですが、基本的には室内楽を好まれるようなので、ああ同じだな、と。

今朝読んだものにはウィーン弦楽四重奏団のハイドンの弦楽四重奏について書かれていました。彼女がその日購入したCDとのこと。僕が弦楽四重奏に魅かれたのは、まさにこのCDでした。

藤田さんは吉田秀和の『私の好きな曲』からこんな言葉を引用されています。引用している文章もいいですね。
ハイドンをきくたびに思う。なんとすてきな音楽だろう、と。
すっきりしていて、むだがない。どこをとってみても生き生きしている。いうことのすべてに、澄明な知性のうらづけが感じられ、しかもちっとも冷たいところがない。うそがない。誇張がない。それでいて、ユーモアがある。ユーモアがあるのは、この音楽が知的で、感情におぼれる危険に陥らずにいるからだが、それと同じくらい、心情のこまやかさがあるからでもある。
ここには、だから、ほほえみと笑いと、その両方がある。
そのかわり、感傷はない。べとついたり、しめっぽい述懐はない。自分の悲しみに自分から溺れていったり、その告白に深入りして、悲しみの穴をいっそう大きく深くするのを好むということがない。ということは、知性の強さと、感じる心の強さとのバランスがよくとれているので、理性を裏切らないことと、心に感じたものを偽らないということとが一つであって、二つにならないからにほかならないのだろう。
こういう人を好きにならずにいられようか?

藤田さんの引用されているのはここまで。この後には「こういう芸術を好きにならずにいられようか?」という言葉が続きます。
もちろん僕はここから「こういう芸術」を大好きになってしまいました。
藤田さんのブログに書かれていることで、他にも書きたいことがあるのですが、それはまた次回に。

話は最初に触れた林哲夫さんのブログのことに。
林さんのブログは基本的には絵画と本に関してのみ書かれています。でも、大瀧さんの訃報が伝えられた翌日のブログで、なんと大瀧さんのことに触れられていて、とても驚いてしまいました。それまで大瀧さんどころか、音楽に関してもほとんど触れられることがありませんでしたから。
ここにその日のブログを引用させていただきます。
大瀧詠一急死に驚く。いつだったか、大瀧がラジオで日本における流行歌の歴史を古い音源を紹介しながら分析してみせたことがあった。これは見事だった。歌手としては、はっぴいえんど二枚目のアルバム「風街ろまん」(URC、一九七一年)に入っている「颱風」が好きだ。いつ聞き直してもしびれる。

林さんが大瀧さんの「日本ポップス伝」を聴かれていたことにも驚きましたが、何よりも林さんが大瀧さんの曲の中で選ばれたのが「颱風」ということにさらに驚いてしまいました。

大瀧さんの音楽というのは、僕の知らないところで、いろんな人にいろんな形で影響を与えていたんだなと改めて思わされました。
考えてみたらハイドンの弦楽四重奏について吉田秀和さんが書かれていたことは、そのまま大瀧さんの音楽にもあてはまりますね。

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by hinaseno | 2014-05-26 10:43 | 雑記 | Comments(0)