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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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23分間の押し問答


いよいよ話は『レコード・コレクターズ増刊 大瀧詠一 Talks About Niagara Complete Edition』に掲載された『ナイアガラ・トライアングルVol.2』のインタビューで語られていた「マンハッタン ブリッヂにたたずんで」に。

昨日も書いたように、この話をふったのは大瀧さん。
そういえば、佐野くんの「マンハッタン ブリッヂにたたずんで」を入れるか入れないかで揉めたね。

この言葉に対して、佐野さんが即座に返したのがこの言葉。
大瀧さんのプロデューサーとしての先見の明ですよね。『トライアングルVol.2』に提供した4曲のうち、自分のソングライターとしての本質が出ているのが、この「マンハッタン ブリッヂにたたずんで」。

これはもちろん2012年という段階だから、冷静に言えたこと。でも、当時、佐野さんははじめて自分でプロデュースしたアルバム『サムデイ』を制作中。相当な決意とこだわりを持って臨んでいたはず。
で、昨日の話に戻ると、佐野さんの「ナイアガラ用に書いた」曲に不満を抱いた大瀧さんは佐野さんのところにやってきて、おそらく他に何か曲はないのかと訊いたんだろうと思います。そこで佐野さんは『サムデイ』のために録音していた曲をすべて大瀧さんに聴かせた。おそらくは収録する曲順通りに。その中で大瀧さんが耳を留めたのが「マンハッタン ブリッヂにたたずんで」。
大瀧:でも、実はあの曲、アルバムの『サムデイ』に入る予定だったんだよね。なんとしてもあれがないと締まらないという…。
佐野:はい(笑)。アルバム『サムデイ』B面の2曲目にセットしていました。

すでにその時点でアルバム『サムデイ』のマスターができあがっていたんですね。でも、大瀧さんは佐野さんを説得します。大瀧さんの車の中でえんえんと。
23分は押し問答したよ(笑)

とのこと。2、3分ではなく23分という、変に細かい数字がいいですね。

さて、大瀧さんの説得のポイントになったのが、例の銀次さんの「4曲」の話。「4曲を気を抜いてはいけない…っていうのは後でも出てくるからよく覚えておいて」という大瀧さんの言葉はここにつながっていたわけです。
さっきも言ったように、自分にはストックがあるからとりあえずこの4曲で…みたいな考え方はダメ。”It’s now or never”だからさ。今がなきゃ明日はない。たかが4曲っていうけど、実はその4曲がでかい。4曲で全部を判定される。手を抜いちゃダメなの。

途中でエルヴィスの曲が出てますね。この考えのもとで、「是が非でも『マンハッタン ブリッヂにたたずんで』だ」と佐野さんを説得したわけです。すでにアルバム『サムデイ』のマスターはできあがっていた段階であることは大瀧さんもわかっていましたが、大瀧さんからすれば「同じアルバムに『サムデイ』は2曲いらないだろうっていうのが僕の考え方だった」とのこと。

ここからまた僕の勝手な推測になるのですが、大瀧さんの車の中で23分間えんえんと続いたという大瀧さんと佐野さんの話の中に「B2」をめぐっての論争があったのではないかと。佐野さんもそれを覚えていたからこそ、即座に「アルバム『サムデイ』B面の2曲目にセットしていました」と答えられたのではないかと。

大瀧さんがB面2曲目の曲を重視していたことは何度かここでも書いてきました。前にも引用したこの言葉。
いわゆる「B2の理論」だね。B面2曲目に小味の効いたものを配置できるかどうかで、アルバムの善し悪しが決まるという。

「同じアルバムに『サムデイ』は2曲いらない」という言葉に示されている通り、大瀧さんは「マンハッタン ブリッヂにたたずんで」を「サムデイ」と同等の曲と評価していました(今となってみると「サムデイ」は、例えばサザンの「いとしのエリー」と同じようにやや神格化されたとてつもなく大きな曲となってしまっていますが)。そんな位置づけをしている人も多いだろうと思います。もちろん僕もその一人。この「マンハッタン ブリッヂにたたずんで」がなかったら、たぶんすぐにアルバム『サムデイ』を聴いてみようとは思わなかったはず。

で、「サムデイ」と同等の評価をしている「マンハッタン ブリッヂにたたずんで」がB面2曲目だと知って、それはちょっとちがうんじゃないか、という話になったのではないかと。B面2曲目に置かれるべき曲ではないと。B面2曲目に置く曲は、例えば「週末の恋人たち」のようなタイプの曲だろうと。
実際、「週末の恋人たち」は『ナイアガラ・トライアングルVol.2』のB面2曲目に収められています。B面の1曲目から3曲目は、1曲目の「Love Her」が杉さんの曲、2曲目の「週末の恋人たち」が佐野さんの曲、3曲目の「オリーブの午后」が大瀧さんの曲と、作者がバラバラなのですが、流れがなんとも素晴らしいんですね。もちろん”小味の効いた”「週末の恋人たち」たちがB面2曲目に収められているからこそ。

仮に「マンハッタン ブリッヂにたたずんで」がアルバム『サムデイ』に収められていたとしたらすごいアルバムになっていたんだろうな、と何度か考えたことがありますが、それが「アイム・イン・ブルー」の後に置かれるとなると、今の「真夜中に清めて」に続く流れに慣れてしまっているからとはいえ、ちょっと満腹状態になってしまいそうな気がしなくもありません。
佐野さんが語った「大瀧さんのプロデューサーとしての先見の明ですよね」という言葉は、そういう大瀧さんの考え方を理解してのことだったんでしょうね。

というわけで『サムデイ』のB面2曲目にセットされていた「マンハッタン ブリッヂにたたずんで」は『ナイアガラ・トライアングルVol.2』のA面4曲目に。でも、この話にはもひとつ小さなちょっと素敵な物語が加わります。
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by hinaseno | 2014-05-13 09:22 | ナイアガラ | Comments(0)