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by hinaseno

船・本当の愛・さようなら、そして臨時ニュース


ふと気がつくと、172回放送された「ゴー!ゴー!ナイアガラ」のうちで聴いたものが100回を超えていました。おそらくは120回分は聴いたでしょうか。新しいものを聴くのもいいですが、以前聴いたものを聴き返すのも楽しい。

で、昨日、これまでいろいろ聴いてきた中で、最も印象に残っている曲は何だろうと考えました。いろいろ思い浮かぶ中、やはりこの曲かなという1曲を紹介しておきます。

それはジーン・ピットニーの「The Ship True Love Goodbye」。
「ゴー!ゴー!ナイアガラ」を聴いて初めて知った曲。

曲がかかったのは1977年10月3日に放送された第2回目のジーン・ピットニー特集。第1回目の特集と第2回目の前半にかかった曲はすべて知っている曲でしたが、後半に知らない曲が何曲かかかります。あまりヒットはしなかったけれど、大瀧さんが個人的に好きな曲、ということですね。

大瀧さんは、こんな言葉でこの曲を紹介します。
さて、この中期の充実ぶりをうかがわせる、全然ヒットしてないんですけども、非常に名曲でございます。

この言葉の後、曲が流れはじめます。
それがまさにキャロル・キングの影響を受けた、あのリバティ・サウンドの曲。いきなりあの黄金律(クリシェ)が聴こえてきて、わおっ、と思ったその瞬間。
急に音量が下がって、こんな声がかぶさってきました。
ここでハイジャック関係のニュースをお伝えします。先程、外務省に入った連絡によりますと、アルジェ空港の日航乗っ取り機に対し、11時42分、タラップ車と2台の車が近づきました。2台の車には食料が積み込まれている模様です。大使館員によりますと、空港周辺は平常通りということです。なお、総指揮はアルジェリアのシェベリ(?)国家警察局長が当たっているということです。ハイジャック関係のニュースをお伝えしました。

1977年9月28日に起きた、ダッカ日航機ハイジャック事件に関する臨時ニュース。
この間、約30秒、バックにはジーン・ピットニーの歌声が小さな音で流れ続けたまま。
曲が終わって大瀧さんはこの一言。
「The Ship True Love Goodbye」でした。非常にいい曲ですね。

どうやら途中に臨時ニュースが入ったことを知らないようです。この日は録音だったんでしょうか。

それはさておき、これは僕の好みのど真ん中の曲だったので、すぐにいろいろと調べました。何種類か持っているジーン・ピットニーのベストCDにはどれも入っていないので、この曲が収められたCDを購入。ついでに『KAWADE 夢ムック 増補新版 大瀧詠一』に収められていた「大瀧詠一コレクション 私の100枚」の25番目に紹介されていた『Gene Pitney’s Big Sixteen』というタイトルのLPも手に入れました(このLPは最高!。ちなみにこのアルバムについての大瀧さんのコメントは「恋に破れて才能枯れる」)。

「The Ship True Love Goodbye」の曲を書いたのはMark Barkan。
Hank Hunterとコニー・フランシスの「I'm Gonna Be Warm This Winter」(邦題は「想い出の冬休み」)を作った人ですが、Ben Raleighとのコンビで、レスリー・ゴーアなんかに数多くの素敵な曲をかいています。
ちなみにこの日のジーン・ピットニー特集で「The Ship True Love Goodbye」の前にかかった「Not Responsible」はMark BarkanとBen Raleighの共作。で、「The Ship True Love Goodbye」はMark BarkanとNeval Naderとの共作。そしてその次にかかった「Cry Your Eyes Out」はBen RaleighとJohn Gluck Jr.との共作。
大瀧さん、何の説明もされていませんが、Mark Barkan、Ben Raleighコンビの作品を並べているんですね。このコンビの作った曲も大好きなので、また機会があれば彼らの曲について書いてみたいと思っています。
ところでこの3曲は、『Gene Pitney’s Big Sixteen』にすべて収録。しかも「The Ship True Love Goodbye」が収められているのはA面の1曲目! そうこなくっちゃ、ですね。
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「The Ship True Love Goodbye」のアレンジャーはジェリー・ラガヴォイ。このブログでは久々の登場ですね。この人、ピーター・デ・アンジェリス・サウンドからリバティ・サウンドまで、いろんなサウンドを取り入れるのが見事です。本当に才能のある人。

というわけで、「The Ship True Love Goodbye」を。本当にいい曲です。タイトルもかなり意味深。
最初に聴かれるホーンの音色が船の出港を告げるよう。港にはどこか別れの気配があります。でも、そのあとに聴かれる、あの黄金律を取り入れたリバティ・サウンドには始まりの予感があります。
始まりが終わり、終わりが始まり。
ナイアガラ双六的な曲といってもいいのかもしれません。

ただ、この曲を聴くといつも、突然、臨時ニュースが入ってきそうで、ちょっとどきどきしてしまいます。あの黄金律が流れてきたまさにその瞬間の臨時ニュースだったので、皮肉といえば皮肉なのですが、生きるということは、臨時ニュースをいろんな形で聴くことでもあるという教訓を暗示しているのかもしれません。
ちなみに、このジーン・ピットニー特集のあとのいくつかの特集を聴く限り、大瀧さんは、この臨時ニュースが入って曲がきちんとかからなかったことに一度も触れていません。もちろん曲を改めてかけ直すことも。

大瀧さんらしい気がします。


by hinaseno | 2014-02-15 08:33 | ナイアガラ | Comments(0)