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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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My Darling Clementine(1)


大瀧さんの音楽をもう何十年も聴いているのに、最近になってようやくわかったりすることがあります。後で考えてみれば別にひねっているわけでも何でもなく、こっちの知識がなかったり、あるいは聴き取るだけの耳がなかったりしただけ、ということなのですが。
さて、昨日気づいたこと。でも、たぶん前置きの話が長くてそこまでいかないだろうと思います。

この連休、ジョン・フォードの映画を立て続けに見ていました。といっても見ていたのは『荒野の決闘』。それの劇場公開版と、非公開試写版。
劇場公開版の方は、数えきれないくらい観ていましたが、 非公開試写版の方は10年前にDVDを買ったときに1回観たきり。今回、こちらを観直して驚くことがいくつもありました。
『荒野の決闘』は、西部劇好きの僕にとっては最高の映画の一つ。というよりも、今回観直してみて、やはりこれが最高だなと思いました。どのカットも(正確にいえば、劇場公開には、試写会を観たプロデューサーが、後で付け足した映像があるのですが)これぞ西部劇という、見事なもの。全部の場面を写真に撮って持っておきたいと思うほど、完璧に美しいシーンの連続。いやはや。

ところで、今回観直した目的の一つは、『荒野の決闘』にスティーヴン・フォスターの曲が使われているかどうかということでした。ネットでは確認できなかったので観るしかないなと。
サルーンの楽団がいろんな曲を演奏していて、もしかしたら僕の知らないフォスターの曲を演奏しているかもしれないなと思いつつ観ていたら、よく知っているフォスターの曲が楽団によって演奏されました。
「草競馬」。
たぶん、これは誰でも知っているフォスターの曲。フォスターの中では最も勇ましい曲ですね。これを聴くと運動会を思い出してしまいます。
でも、結局確認できたのはこの1曲。

映画を観終えて、別のジョン・フォードの作品を観ようかと思ったときに、ボックスに入っているもう一つのDVDに目がとまりました。実は、そちらはずっと観ていなかったので、非公開試写版が収録されていることすら忘れていて、よくありがちな関係者の話を収めたメイキング・オブのようなものだと思ってしまっていました。
『荒野の決闘』は、ジョン・フォードが作った映像の試写を観た映画会社のプロデューサーによって、納得のいかない部分を公開前に編集し直されているんですね。いくつかのシーンをカットしたり、別の監督にシーンを新たに撮らせたものを入れたりと。
最も有名なのが、映画の最後のシーン。
ワイアット・アープ役のヘンリー・フォンダがクレメンタインに別れを告げるシーン。場面が切り替わってワイアット・アープがクレメンタインの頬にキスをするところ。ここはその映像も含めて何度見ても違和感を覚えるものなのですが、それがまさにプロデューサーの指示によって別の監督に撮らせて入れたシーン。
そのプロデューサーは試写を観て、いくつかの不満を持ったようですが、どうやら最大の不満がそこにあったようです。あの場面であればキスをさせるだろうと。

非公開試写版は、そのプロデューサーによって手を入れられる前のもの。映画も10分ほど長い。キスシーンを入れた代わりに、いくつものシーンを削除してるんですね。で、その削除されたシーンの中に、なんとフォスターの曲が使われていたんですね。びっくりしました。曲はやはり有名な「おお!スザンナ」。
これがまたいい場面なんですね。日曜日の朝、まだ完成していない教会へ近くに住んでいる村人たちが集まってくるシーン。『荒野の決闘』がいいのは、”闘い”とは別の、人々の普通の暮しの風景がいくつも取り入れられているところ(このプロデューサーは、ジョン・フォードが描いた普通の人々の暮らしに関わるシーンをいくつかカットしています。そういうのはそんなに必要ないと考えたんでしょうね)。で、町にやって来た村人の一団が演奏していたのが「おお!スザンナ」。
そのときにヘンリー・フォンダは理髪店で髪を切っていて、そこでその音楽を耳にすることになっているのですが、「おお!スザンナ」を演奏しながら遠くから町にやってくる村人のシーンをカットしたので、本当はずっと流れ続けていたはずの「おお!スザンナ」の曲はすべてカット。
YouTubeにそのカットされた場面の一部と、「おお!スザンナ」の曲が入った映像がありましたので貼っておきます。ここは「おお!スザンナ」が流れていてこそのシーンです。



音楽に関しては他にも興味深いことが。
ジョン・フォードは、住民たちの普通の生活の中で流れている音楽以外は不必要に音楽を使わないようにしているのですが、このプロデューサーは、切ない場面では切ない気持ちを、不安な場面では不安な気持ちを強調するような形で音楽を付け加えているんですね。
小津の考えとは全く逆。でも、それがハリウッド式というものなんでしょうか。
一応そのプロデューサーは、変更する前にジョン・フォードにメモを送ったとのことですが、果してジョン・フォードはどう思ったんでしょうか。いくらなんでもキスシーンだけは入れるのをやめてくれと思ったはずですが。

というわけで、今後、僕が『荒野の決闘』を観直すときには非公開試写版を観ることになるだろうと思います。こういうの、知らなければよかったという話になるのかもしれませんね。大瀧さんも確かラジオデイズの対談で未発表音源などの話に触れて「知ることの不幸」を語られていたような気がします。
ただ、その一方で大瀧さんは音楽であれ何であれ、感情を殊更に強調するというやり方(今は日本でもそれが主流なんでしょうね)には一貫して批判的でした。

というわけで、話は大瀧さんの曲のところまでいきませんでした。
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by hinaseno | 2014-01-14 09:28 | ナイアガラ | Comments(0)