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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno
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電車の中のロミオとジュリエットと駅前のヴィクター・マクラグレン、そして太陽は光り輝く


ようやく今日から休み。「東京」以降、かなりハードな日々が続きました。
限られた時間で聴いていた音楽といえば、朝はずっとフォスター。午後から晩にかけてはSonny Til & The Orioles、そして車の中では発売されたばかりの佐野元春の『No Damage deluxe edition』に収められた1983年のライヴ。
1840年代後半から1860年代のはじめに作られた曲と、そのちょうど100年後の1940年代後半から1950年代にかけて作られた曲(つまり今から60年ほど前に作られた曲)と、さらに今からちょうど30年前に行なわれた伝説的なライブを同時に聴いていたわけです。もちろん合い間合い間に「ゴー!ゴー!ナイアガラ」をはさみながら。

忘れかけていた「東京」の小さな話を。「効率」と時間がどこかに消えている話にもつながるのでしょうか。
最も便利でありながら、知らず知らずのうちにかなり多くの時間を取られてしまっている原因となっているものがiPhoneであることは自分でもよくわかっています。来年からはその関わり方を相当意識して変えていかなくてはと真剣に考えています。頼りすぎて、関わりすぎていてはやばいなと。得るものもあるとは思いますが、もっと大切なものが気づかないうちに相当に失われているように思いました。

そんなことを考えたのは、あのアゲインでのモメカルのライヴの日でした。iPhoneの充電をし忘れたために、ライヴが始まるときには残り10%を切る状態。本当は少しくらい録音したり、動画を撮ろうかと思っていたのに…。
というわけで、ライヴが終わってからiPhoneのGoogle Mapを見ながら歩いてホテルに戻るわけにもいかず、石川さんにうかがって電車で帰ることに。ただ、2つほど乗り換えをしなくてはいけなくてちょっとややこしい。そういうのも全部iPhoneに頼っていたので、かなり不安な状態に。終電の時間も近づきつつあるようでしたし。
ひとつ目の乗り換えの駅で、本当は到着したときに時に向かいに停まっていた電車にすぐに乗ればいいものの、ひとつでも乗り間違えたら大変なので、ちょっと確認をしているうちに電車は行ってしまいました。ここで次の電車までしばらく待つことに。もう一つ乗り換えをしなければならないので、終電の時間に間に合うのかとさらに不安に。皮肉にもその駅の名前は、どこか縁のありそうな名前の「大岡山」。
ようやく電車が来て、今度は自由が丘で下車。宿泊するホテルのある祐天寺に向かう電車がまだあるのが分かって一安心。それが終電だったのかどうかはわかりませんが、さすがに乗客は少なくてゆったりと座ることができました。
ほっと一息ついて、iPhoneで音楽でも聴こうかと思ったら、すでに残り2%。仕方なく音楽を聴くのをやめて、東急東横線沿線の東京の夜の風景をぼんやりと眺めながら、モメカルのライヴのことやその日一日起こったことを思い浮かべていました。

ふと気づくと横から若い男女の会話が聴こえてきました。といっても実際には人1人分ほど離れた僕の隣に座っていた20歳くらいの女の子がほとんど一人でしゃべっていて、同い年くらいの男の子が相づちを打つような感じ。女の子はその日かなりお酒を飲んでいたようで、ちょっとほろ酔い状態。その酔いを覚ますためか、ペットボトルを片手に水か何かを飲みながら話し続けていました。
「私が今まで付き合った男の子は、みんなあまりお酒を飲まない人だったの」
なんて言葉が聴こえてきました。聴いていて、二人がまだ友達以上、恋人未満の関係(古いな、この表現)にあるような気がしました。その年齢ならではのとても風通しのいい会話。二人はもしかしたら初めてその日デートのようなものをしたのかもしれません。そして食事のときに女の子はちょっとお酒を飲んで。

そのとき、女の子の持っていたペットボトルのふたがことっと下に落ちて、ころころと僕の足下の方に転がってきました。彼女はすぐに拾おうとしたのですが動きが鈍く、僕が拾って手渡すと、「どうもありがと...」と言いかけて頭を後の窓枠でコツン。もしヘッドフォンをして音楽を聴いていたら聴こえなかったかもしれない音。
思わず吹き出してしまって「いい音がしたね」と言ってしまいました。
女の子も「あっ、いい音がしました」の頭をさすって照れくさそうにしていました。男の子は「大丈夫?」と少し心配する言葉をかけている。

ちょっとほっこりした気分になった頃に祐天寺に到着。
駅を出たものの、駅からちょっと離れた場所にあるホテルの方向が全く分かりません。残り2%のiPhoneで調べようかと思っていたら、駅前に交番が。しかも12時近いというのに巡査が立っている!
巡査が前に立っている交番なんて、こちらではもう完全に見かけなくなりました。そればかりか、昼であれ夜であれ、交番があっても中に人もいない。
東京ではこれがあたり前? それとも祐天寺駅前の交番が特別?
若い巡査かと思って近づいてみたら意外にも結構年配の人。大柄で恰幅もよく、人当たりもいい。まるでジョン・フォードのいくつもの映画に出演しているヴィクター・マクラグレンのような感じ。ジョン・ウェインではなく。
僕が宿泊するホテルの名前を告げると、にっこりと微笑んで、的確に場所を教えてくれました。ほっこりとした気分が再び蘇ってきました。
電車の中の恋人未満の男女も、祐天寺駅前の巡査も、iPhoneがしっかりと充電されていたら”出会う”ことのなかったんだろうなと思いながらホテルへの歩みを進めました。

ところで話は唐突に変わって昨日の『駅馬車』のこと。
「金髪のジェニー」は映画が始まって間もなく、すぐにわかるように使われていました。でも、全編にわたって使われているわけではなかったですね。最初と最後と、その部分だけ。
ただ、「Gentle Annie」は映画が終わりに近づいても、よくわからない。もともと全く知らない曲でしたので、映画を夢中になって観ているうちに(何度観ても引き込まれます。ああ、この場面は『バック・トゥ・ザ・フューチャー3』にパロディ的に取り入れられているな、とか思いながら)、どこかの場面でさらっと使われたかなと思っていたら、最後の方に意外な形で使われていました。よっぽど注意していないと気づかない人は気づかないだろうなと(『早春』での「サセレシア」のように)。
それは駅馬車に同乗した、身分も立場も全く違う主演の二人の女性が最後の最後に心を通わせる場面で、例のホンキートンクピアノ(いい西部劇にはかかせないもの)に演奏されて、酒場(saloon)から流れてくる形で使われていました。なんとも心憎い使い方をしています。

『駅馬車』を観終えた後、双葉十三郎がジョン・フォードについて書いた文章を読んでいたら、おっと思うものを発見。ジョン・フォードがフォスターの音楽を使った映画がもう一つあることがわかりました。映画のタイトルは『太陽は光り輝く』。使われているのは「My Old Kentucky Home」。石川さんがモメカルのライヴのときに「これからはこれをクリスマスの曲として聴きます」と言われて紹介された曲。
『太陽は光り輝く』は西部劇ではないのですが、ケンタッキーを舞台にしているんですね。「My Old Kentucky Home」はまさにこの映画の主題歌。演奏しているのはなんとヴィクター・ヤング。
『太陽は光り輝く』はDVDにもなっていなくて僕も観たこともないのですが、YouTubeには映画を全編収めたものがありました。この最初でヴィクター・ヤングの演奏するフォスターの「My Old Kentucky Home」が聴かれます。



『シェーン』の「遥かなる山の呼び声」とそっくりな感じ。と思ったら『太陽は光り輝く』は『シェーン』と同じ1953年公開。つまりヴィクター・ヤングは、ほぼ同じ時期に、おそらくは同じ演奏者を使って「遥かなる山の呼び声」と「My Old Kentucky Home」を録音しているんですね。
映画では最後に黒人の人たちが「My Old Kentucky Home」を歌って終わる形になっています。まさに「My Old Kentucky Home」そのものの映画。と思ったら、『太陽は光り輝く』の原題は”The Sun Shines Bright”。これって「My Old Kentucky Home」の最初のフレーズの歌詞そのまま。ジョン・フォードがいかにこの曲が好きだったかがわかります。僕の直感ははずれていなかったと、うれしくなりました。ちなみにジョン・フォードは自分の作った作品の中でもとりわけこの『太陽は光り輝く』が好きみたいです。ああ、字幕付きのものを観てみたい。

最後にもう一つだけ気づいた興味深いこと。きっとフォスターをこよなく愛されている石川さんにも喜んでいただけるのではないでしょうか。
『太陽は光り輝く』が公開された1953年は、まさに小津の『東京物語』が公開された年。前にも書いたように『東京物語』でもフォスターの「Massa's in de Cold, Cold Ground」が使われています。日米の巨匠が同じ年に作った映画にフォスターの音楽が使われていたなんて、ちょっと奇跡的。単なる偶然とすませていいものかどうか。

というわけで、今年の最後の曲はビング・クロスビーの歌う「My Old Kentucky Home」を。石川さんにいただいたCDに収められていたのは、石川さんがお持ちのSP盤から録音されたものでしたので、同じSP盤からの音源を貼っておきます。演奏はヴィクター・ヤングです。
多くの人が「My Old 〜 Home」に向かっているんでしょうね。僕も「My Old Okayama Home」に戻ります。では、よいお年を。


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by hinaseno | 2013-12-31 10:05 | 雑記 | Comments(0)