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by hinaseno
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『東京暮色』


先日購入した小津安二郎の『東京暮色』を、ゆっくりと、つぶさに見ています。
『小津安二郎 第二集』に収められたブックレットの、田中康義さんの書かれた文章を読んで、はっと思うことがあったので。
『東京暮色』を見たのは、今年になってのこと。『早春』の翌年に作られた映画。小津の中では、実際に映画に関わったスタッフも含めて、たぶんあまり評判の良くない映画なんでしょうね。『早春』と同様にテレビでも放送されてこなかったように思います。
でも、何人かの人はこの映画のことを高く評価していて、村上春樹さんもこの映画を見て深く感銘を受けたと、どこかで書かれていました。

この映画に関する裏話としては、川本三郎さんの『君美しく』に収められた『東京暮色』に主演された山田五十鈴の話が最も興味深いものでした。小津は山田さんの演技にかなり厳しく注文をつけるのですが、その中で小津が山田五十鈴に語ったある言葉が、山田五十鈴の心に深く突き刺さって、その後ずっと心に留め続けたそうです。それは次のような言葉です。
「常識的な芝居はしないで下さい。人間は悲しいときには笑うんです。おかしいときには泣くんです。それだけは覚えて下さい」

たぶん、アキ・カウリスマキもこの『東京暮色』がすごく好きなんではないかという気がします。一見ものすごく暗い映画ではあるのですが、それだからこそ見えてくるユーモアの仄かな光がそこここにあります。バックに使われる音楽も、何でこんな暗い場面でこんな明るい曲調の曲(『早春』でも使われている「サセレシア」という曲)を使うんだろうと思うこともしばしば。これから先、僕が最も繰り返してみる小津の映画になりそうです。

話がそれましたが、田中康義さんの文章を読んで、確かめてみたいことがあったので、丁寧に見ていたら、その言葉は出てきました。
山田五十鈴が有馬稲子に「今、お住まい、どちら?」と訊ねます。で、有馬稲子はこう答えます。
「雑司ヶ谷の奥」

そう、この映画の笠智衆、有馬稲子の父娘が住んでいる場所は雑司ヶ谷という設定になっていたんですね。最初に見たときにはこの言葉を聞き取ることはできませんでした。
で、映画を観ると、この坂道を上ってきて、画面の右側の家に入って行く場面が何度も出てきます。登場人物の動きは、『早春』で池部良が煙突を背景に自分の住む下宿に入る場面とそっくり。
a0285828_964253.jpg

それにしてもこの坂。背景を見ると相当急なことがわかります。
ネットを見ると、やはりこの場所を特定している人がいました。大正14年に木山捷平もこのあたりの坂を歩いていたかもしれません。
というわけで、山田五十鈴の演技に注目しながら、『東京暮色』に雑司ヶ谷の別の風景が出てこないかと、じっくりと眺めています。この映画、基本的には池上線沿線が舞台なのですが、最後の悲劇的な事故が起こる場所は池上線沿線とは全く別の鎌倉市大船近くの踏切りで撮られたそうです。田中さんによれば、事故が発生するという設定を東急が嫌ったためかもしれないとのこと。
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by hinaseno | 2013-12-09 09:08 | 映画 | Comments(0)