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by hinaseno

昭和2年の「南畝町288」を特定する(最終回)


南畝町288があったあたりの昭和11年の地図と現在の地図(グーグル・マップ)を並べて貼ってみます。
昭和2年の「南畝町288」を特定する(最終回)_a0285828_9512275.jpg

昭和2年の「南畝町288」を特定する(最終回)_a0285828_9501375.png

地図の上の方に、斜めに走る道(この斜めの道の右上が姫路駅)、その南に東西に走る2本の広い道路はほぼ昔のままです。問題は南北の道。
古い地図では南畝町の「畝」と「町」の字が書かれている道が飾磨街道と呼ばれる道。これは昔のままのはずです。道の両側には町屋風の家が建ち並んでいるのがわかります。
問題は南畝町288の東側を通っていた南北の道。そして、南畝町288があったはずの区画の中にある細い路地。

実はもう2つ、昭和30年代の住宅地図を持っているのですが(距離は不正確)、そこにはあの区画の中に南北に走る細い路地が描かれています。ただし、それはまっすぐに突き抜けているのですが、現在はそこにマンションが建って、横に曲がっています。現在の地番はその道の北が「南畝町2丁目75」、そして南が「南畝町2丁目60−1と60−2」。ただし「60−1」は道沿いのたぶん幅は1mもないような細長い土地。平成8年に分筆されています。
平成8年にはその「60」の西にあった「61」を合筆しています。ここにマンション(ネオハイツ姫路駅前)を建てるために、いろいろと登記の変更が行われたようです。
何度か触れた兵庫教育大学の前田貞昭教授が書かれた「木山捷平の姫路時代を探索する」では、旧土地台帳などをもとにして、このネオハイツ姫路駅前のある場所を「南畝町288」と特定されているのですが、近所の人の話など、いくつか疑問を残しています。

というわけで、昭和30年代のものも含めて地図をいろいろ見比べたり、土地所有者を調べたりして、だいたい南畝町288(実際には288−1と288−3)があった場所は赤の四角で囲んだ辺りだと考えられます。
東側の道は、おそらく南畝町288のほうを削り取る形で広げられているような気がします。問題は北側の境ですが、(空襲で焼け野原になって境界線が不明になった可能性も含めて)いろいろ考えてみて、おそらく現在パークサイド姫路が立っているところまでではないかと思われます。

では、どんな家が建っていたのかというと、おそらくは東側の道に面した細長い長屋風の家が何軒か建ち並んでいたのではないかと思います。
例の南畝町在住の写真家の撮った戦前のこの写真(タイトルは「南畝町下ノ丁東側」)なんかはもしかしたらもしかするかもしれません。
昭和2年の「南畝町288」を特定する(最終回)_a0285828_9521295.jpg

最初に「昭和2年の『南畝町288』を特定する」を書きはじめたときには、その場所を特定する自信はなかったのですが、結果的にはほぼピンポイントで特定できたように思います。

さて、昨夜更新したブログの最後にちょこっと書きかけた現在のこの場所のこと。
その南畝町288の家があった場所の道をはさんだ向かいの場所には、現在、南畝公園という名の小さな公園があります。古い地図で言えば南畝町287−1ですね。ここは戦前だけでなく、戦後もずっと田圃だったようです。そしてその田圃のあった場所におそらく家が建つことなく、そのまま公園になったと思われます。
この公園、あまり大きな声では言えませんが、僕が駅近くの店に買い物に行くときには、もう長い間、ひょこっと、いや、こそっと自転車を置いているところ。で、例えば駅ビルにあるJ堂書店なんかで本を買ってきたときには、この公園にある、まさにこのベンチに座って、何度も本を読んでいました。ここの目の前に南畝町288のあの家があったなんて…。
昭和2年、木山捷平と彼の「この土地でのたつた一人の友」である大西重利はここにあったはずの家の部屋の中で、きっと夜遅くまで、それぞれの夢や悩みを語り合っていたんですね。
嘘みたいな話は最後まで続きました。
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長屋の話が出てきたのと、ある方が今朝のブログで高田渡のことを書かれていたので、最後に木山捷平の「赤い着物を着た親子」(詩が書かれたのは昭和5年)という詩に曲をつけた高田渡の「長屋の路地に」を貼っておきます。

by hinaseno | 2013-11-05 09:55 | 木山捷平 | Comments(0)