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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno

Claire De Lune, Summer of '61(2)


まずは波の音の画像を。でも、今日かける曲との相性は微妙ですが。



ボブ・クリューは、このブログでも何度か書いていますが、僕の大好きな音楽をいくつも生み出してきた人。ただ、彼がフランク・スレイとのコンビで活動していたことをちゃんと知ったのは、今年の3月に放送されたアメリカン・ポップス伝パート3でした。

語られたのは第3夜のフィラデルフィア物語。そう、あのピーター・デ・アンジェリスの「ヴィーナス」がかかった日です。
その日の放送は、もちろん「ヴィーナス」がかかったときにも心ときめいたのですが、もう一つ、わおっ、と思ったことがありました。それはビリー&リリー(Billie & Lillie)の名前が出たときでした。ビリー&リリーはフレディ・キャノンと同じSwanレーベルで、50年代の後半の、ほぼ同じ時期にフランク・スレイとボブ・クリューが関わったグループ。
で、彼らの曲が2曲かかります。いずれもフランク・スレイとボブ・クリューの共作。
1曲目が「La Dee Dah」。この曲を彼らのバージョンで聴くのははじめてでした。



で、2曲目が「Lucky Ladybug」。



僕がこの2曲を知ったのはもちろんフォー・シーズンズというグループが歌ったもの。そういえばThe Raysの「Silhouettes」もフォー・シーズンズが歌っています。昨日、「Silhouettes」という曲を初めて聴いたのはロネッツって書きましたが、改めて確認したらフォー・シーズンズで聴いたのがちょっとだけ前でした。

とにかく僕にとっては西海岸がビーチ・ボーイズなら東海岸はフォー・シーズンズ。まあ、ちょっぴりビーチ・ボーイズが好きなのですが、でもほとんど対等。そのフォー・シーズンズをプロデュースし、いくつもの曲をかいていたのがボブ・クリュー。

さて、僕がそのオリジナルであるビリー&リリーの「Lucky Ladybug」ことを知ったのは今から20年ほど前。『レコード・コレクターズ』という雑誌でフォー・シーズンズの特集がされました。ちょっと考えられない話ですが。で、その特集でフォー・シーズンズについて対談したのが大瀧さんと達郎さん。ここで、大瀧さんがこんなことを語っていました。とぉ〜っても興味深い話。
フォー・シーズンズのサウンドをやろうと思ったのは『A Long Vacation』の「FUN×4」。これはご存知ビーチ・ボーイズの「Fun, Fun, Fun」よりももう一つFUNが多いというアイディアから作ったものですが(笑)、あれはフォー・シーズンズ・サウンドをそのまま。中の間奏は、誰にも言わなかったけどビリー&リリーの「ラッキー・レディーバック」っていう、フォー・シーズンズをやる前にボブ・クリューがプロデュースしたグループの曲。そのホーンのサウンドを、間奏に使ったわけ。わかる人には当然わかるわけで、フォー・シーズンズじゃなくて、フォー・シーズンズ以前にプロデュースしてたグループのサウンドを使うことで、これはフォー・シーズンズへのトリビュートであるということを示した。(中略)ただフォー・シーズンズに限らず、あるアーティストに捧げるつもりで作曲する場合に、そのアーティストの曲をそのまま具体的にキリハリして曲にしたことは一度もない。部分的にある曲に似てても、根本的に別の曲を意識している場合が多い。
「FUN×4」の曲全体に関しては、フォー・シーズンズでもヴィー・ジェイ時代のサウンド、自分がリアル・タイムで接したサウンドを意識しました。あえてヴィー・ジェイ・サウンドっていうことで取り上げられたことは、世界的にもなかったんじゃないかな。

テープ起こしで、かなり言葉が削られているみたいなので、大瀧さんの言葉の微妙なニュアンスが失われているように思いますが、「20分の1の神話」の秘密を少しだけ教えてくれているような話。
「FUN×4」はいろんな元ネタが指摘されているのですが(たぶん『ロンバケ』で一番多いはず)、本歌は初期フォー・シーズンズの曲ということですね。ご本人が言っているのですからまちがいはありません。
というわけなので、60年代に湯水の如く作られたフォー・シーズンズ・サウンドの曲を聴くと、どれも「FUN×4」に似たものを感じます。昔、ACEから出た、フォー・シーズンズ・サウンドを真似た曲ばかりを集めた『Laurie Vocal Groups, The Sixties Sound』(このCDは最高に好きです)を聴いたときには全曲「FUN×4」に思えたくらい。

いずれにしてもボブ・クリュー、フランキー・ヴァリ、ボブ・ゴーディオ、チャーリー・カレロらが様々な形で結びついてフォー・シーズンズというものができたのが1961年。
彼らが61年の暮れにリリースしたのがこのシングル。フォー・シーズンズとしての最初のシングルですね。



曲を書いたのは両面ともボブ・クリュー(A面の「Bermuda」はボブ・ゴーディオとの共作)。どちらもラテン感覚を取り入れた曲。
このあとヴィー・ジェイに移って「シェリー」が大ヒットすることになります(今、聴いてみたら「Spanish Lace」と「シェリー」のイントロの最初は、全く同じですね)。

そんな動きが始まる直前の61年の夏にThe Raysの「Magic Moon (Claire De Lune)」が作られています。ラテン音楽への関心の中で、クラシックのドビュッシーも聴いたんでしょうね。で、「月の光」を聴いて曲にせずにはいられなくなった。

驚いたことに、ほぼ同じ頃、もう一つ別のソング・ライター・チームが「月の光」を題材にして曲を作っていました。それもやはり61年の夏の話。この話はまた後日。

そういえば、もう間もなくフォー・シーズンズが日本にやってきます。行ってみたいけど、やっぱり無理ですね。
by hinaseno | 2013-08-21 10:25 | 音楽 | Comments(0)