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by hinaseno

僕の感じてることをわかっているのは「美しき女性」ではなくて「寂しい人だけ」(4)


ロイ・オービソンがジョー・メルソンとコンビを組んで作った曲の特徴をひとことでいうならば”ポップ”ということでしょうか。ロイ・オービソン単独で作ると、どうしても重さ、固さ、ときには深刻さが強くなりがちなのですが、ジョー・メルソンと組むことで、その重さや固さや深刻さの部分が弱められ、あの軽快なリズムによってポップでメランコリックな空気に包まれます。親しみやすさが格段に増すんですね。このあたり、井上陽水と平井夏美(川原伸司)の共作した曲につながるものがあるように思いました。

もちろんロイ・オービソンとジョー・メルソンが一緒に作ったものにはいろんなタイプの曲があるのですが、僕の好きな曲を、曲が作られた順にずらっと並べてみます。

全部同じに聴こえるか、あるいは違って聴こえるか。
まずはやはり「Only The Lonely」。正確なタイトルは「Only The Lonely (Know How I Feel)」。

2曲目は「Blue Angel」。

3曲目は「I'm Hurting」。

4曲目は「Come Back To Me (My Love)」。これは日本独自でシングルが出てヒットした曲なんですね。ですから先日紹介したライノのCDには入っていません。この曲にまつわる話はいろいろと耳にしていたので、初めて聴いた時は感動しました。

5曲目は「Blue Bayou」。僕が最も好きな曲です。タイトルが素敵ですね。ロイ・オービソンの曲にはタイトルに”blue”がつくものが多いのですが、これもそのひとつ。意味は「青い入江」ですね。

6曲目は「(I Get So) Sentimental」。これが実質的に2人の共作の最後になります(何年か後に2人の共作は一時的に復活はするのですが)。

共作が続けられなった原因は、ロイ・オービソンの曲がヒットしてツアーが多くなったことがあげられるようです。ロイ・オービソンは移動中の車の中でも曲をかくことができたので、ジョー・メルソンにツアーに同行してもらっていたようですが、しだいにジョー・メルソンも家族のこと、そして自分自身のこと(シンガーソングライターとして独り立ちしたい)を考えるようになって、結局、あるとき一緒に行動することはできないと告げたようですね。

ひとりになったロイ・オービソンはまるで、ジョー・メルソンとのことを惜しむような曲を2曲、単独で書きます。
ひとつは「In Dreams」。ジョー・メルソンの影響なくしては作りえない、本当に素敵な曲。前からこの曲は大好きだったのですが、いろんないきさつを知るとよけいに好きになってしまいました。

そしてもう1曲ロイ・オービソンが単独で作ったのが「Falling」。タイトルがちょっと悲しいですね。あの軽快なリズムは同じですが、重さ、固さ、深刻さが増してきています。

ロイ・オービソンも自分ひとりではどうしてもそんな曲になってしまうことを知ってるんでしょうね。で、新たにツアーに同行して一緒に曲作りをしてくれるパートナーを見つけます。それが「Oh, Pretty Woman」を一緒に作ったビル・ディース。
ロイ・オービソンがジョー・メルソンと別れた直後にビル・ディースと作った最初の曲が「It’s Over」。とても意味深なタイトルですね。

さて、ずらっと並べたロイ・オービソンとジョー・メルソンの共作曲。すべてにあのリズムが聴こえていますね。

チンチキランカンチンキンチャンチャン

ピーター・デ・アンジェリスが「ヴィーナス」で使い、大瀧さんが「風立ちぬ」で取り入れたリズム。そして、アル・カイオラがギターを弾くとドンドコランカンランタンタンタンとなるリズム。魔法のリズムですね。

ちなみにアル・カイオラの「ドンドコランカンランタンタンタン」も、ロイ・オービソン&ジョー・メルソンの「チンチキランカンチンキンチャンチャン」もどちらも大瀧さんの言葉。
実はここで書いたことのほとんどは大瀧さんの「ゴー!ゴー!ナイアガラ」のロイ・オービソン特集を聴いて気づかされたことばかり。「ゴー!ゴー!ナイアガラ」のロイ・オービソン特集は、もちろん石川さんから送っていただいたものですが、たぶん送っていただいたのは3月のアメリカン・ポップス伝パート3が放送される前だったように思います。でも、聴いていなかったんですね。で、アメリカン・ポップス伝パート3が放送されてジョー・メルソンのことが気になって聴いてみたら、めいっぱいジョー・メルソンについて語られていたんですね。今ではパソコンも使えて、いろんな資料にあたることができて、ジョー・メルソン自身の言葉も聴けるので、彼らの共作関係のことを容易に知ることが出来るのですが、今から40年近く前に、すでにそれをとらえていて、ジョー・メルソンとの共作曲がいかに素晴らしいものであるかを語られているのを知ったときには本当にびっくりしました。だって、今でも当時でもロイ・オービソンという人ですら無名に近い存在なのに、普通だったら一時的に作詞をしていた人ととらえてもいいはずのジョー・メルソンをいっしょに曲作りをしていたととらえているのですから。

最後に、「ゴー!ゴー!ナイアガラ」のロイ・オービソン特集でもかかったヴェルヴェッツの「愛しのラナ」を。

この曲はある世代の人は好きな人が多いそうですね。日本で大ヒットしたとのこと。この曲はネットで読めたレコードの解説を見るとロイ・オービソンがひとりで作った曲になっていて、ネット上にみられる「愛しのラナ」に関する話の多くはそれを受けて書かれていますが、実はロイ・オービソンとジョー・メルソンの共作曲。レコード盤にはきちんと”Orbison, Melson”と記載されているのにね。

興味深いのはそのB面の「ラフ(Laugh)」という曲。やはりロイ・オービソンとジョー・メルソンの共作。メロディはドリフターズの「ラストダンスは私に」にそっくりなのですが、まさにあのリズムが使われています。「チンチキランカンチンキンチャンチャン」。今日、ずらっと並べた曲、全てに聴かれるリズムですね。このリズムを曲に取り入れたのはまちがいなくジョー・メルソンでしょうね。彼もロイ・オービソンとコンビを組む前にいろんなヒット曲を分析していた時期があるそうです。で、「ヴィーナス」などに聴かれるリズムを取り入れたんですね。それが見事なほどにはまった。

大瀧さんは「ゴー!ゴー!ナイアガラ」のロイ・オービソン特集で「愛しのラナ」をかけたあと「ラフ」をこんなふうに紹介して曲をかけます。
あのシングル盤を買った人は、ひょっとすると「ラナ」が飽きてしまって裏面のほうがおもしろいな、なんて思った人も意外と多いと思うんですけど、実はアメリカではあの裏面のほうが表面なんです。

というわけで最後にヴェルヴェッツの「ラフ」を。

なんとなく来月のアメリカン・ポップス伝パート4の予習をした形になりました。
次回は「チンチキランカンチンキンチャンチャン」のリズムを曲に取り入れたもう一人の絶対に忘れてはならないアーティストのことを取りあげてみたいと思っています。アメリカン・ポップス伝パート4の予習です。
Commented at 2013-07-19 23:28 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2013-07-20 09:42
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by hinaseno | 2013-07-19 09:35 | 音楽 | Comments(2)