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by hinaseno

魅惑のピーター・デ・アンジェリスの世界(3)


昨日の朝発見したこと。それはまさに最後の1ピースというべきものでした。そうか、そんなつながりがあったんだと。本当にびっくりしました。これで全ての謎が一気に氷解しました。おおげさですが。
というわけで、今日は最後の1ピースの話。

おそらく1961年か62年ごろのある日、ピーター・デ・アンジェリスは、いとこからフィラデルフィア生まれの、ある女の子の話を聞きます。一度彼女の歌を聴いてあげてほしいと。当時16歳か17歳の女の子。もちろんまだ高校生ですね。その女の子の両親はフィラデルフィアの中心街で宝石店を経営していて、商売はかなりうまくいっていたようです。
ピーター・デ・アンジェリスのいとこは彼女の両親の経営する宝石店の常連客というか、かなりのお得意様のひとりだったようです。で、その得意様のいとこが音楽プロデューサーとして有名になっていたピーター・デ・アンジェリスだと知って、かねてから娘を歌手にしたいと考えていた父親は、ピーターのいとこに娘をピーター・デ・アンジェリスに会わせてほしいと頼みます。
ピーター・デ・アンジェリスはその申し出を了解したようですね。で、ある日曜日、彼女の両親は彼女を連れてピーターの家に行きます。ピーターが住んでいたのはニュージャージー州(おお!またしてもニュージャージー州ですね)。彼女はピーターのピアノに合わせて何曲かのスタンダードソングを歌います。で、ピーターは彼女の両親に彼女は素晴らしい才能をもっているから、すぐにレコード会社と契約することを勧めます。ピーターが契約を取り付けたのは彼がボブ・マルクーチと始めたチャンセラー・レコードではなく、もっとメジャーなアトランティック・レコード傘下のアトコ(Atco)・レコード。
そのときに彼女は芸名を与えられます。本名のRenee Diane Kushner(レニー・ダイアン・カシュナー)をもとにしてつけられた芸名はDiane Renay(ダイアン・リネイ)。
ピーター・デ・アンジェリスのプロデュースのもとでいくつかの曲が録音されます。
これはその中の1曲、「Little Miss Lonely Heart」という曲。

この曲、残念ながら作曲者が誰なのかはわかりません。ちょっとニール・セダカっぽい気がしますが。アレンジはピーター・デ・アンジェリス・サウンドですね。ただ、この曲は結局リリースされませんでした。もったいないですね。

彼女のデビュー曲として選ばれたのは「Little White Lies」という曲。Walter Donaldsonという人が作ったスタンダード・ソングですね。彼女の、あるいは彼女の両親の好きな曲だったんでしょうか。「Little White Lies」という曲は僕も前から好きだったので、彼女がこの曲を歌ってるのを知って驚いたのですが、でも、この曲、結局ヒットしませんでした。
ちなみに彼女の歌う「Little White Lies」はYouTubeになかったのですが、そのB面の「Falling」という曲はYouTubeにありました。この「Falling」の作曲者はピーター・デ・アンジェリス自身。スタンダード・タイプのとっても素敵な曲。こっちをA面にしてたほうがよかったんじゃないかと思います。

でも、おそらくは経営に厳しいアトコはピーター・デ・アンジェリスでは駄目と早くも判断して、別の、ピーターと同じフィラデルフィアでも活動していたボブ・クリューに声をかけます。ちなみにボブ・クリューが生まれたのもニュージャージー州。
ダイアン・リネイはボブ・クリューのプロデュースのもとで、彼の作ったこの「Tender」という曲をリリースします。

3連バラードのまずまずの曲ですが、かなり地味ですね。これがボブ・クリュー?と思ってしまいます。このあたり、アトコの意向が働いていたんでしょうか。結局これもヒットせず、彼女はたった2曲でアトコとの契約が打ち切られます。

でも、ボブ・クリューは彼女の才能を見てたんでしょうね。アトコとの契約が切れた直後に、彼女と個人的に契約して彼女をプロデュースし、この「Navy Blue」という曲を出します。これが大ヒットするんですね。

いかにもボブ・クリューらしい曲。まさにボブ・クリュー・サウンド、あるいは彼が手がけていたフォーシーズンズ・サウンドですね。特に最後の最後に出てくるコーラスがとても素敵です。

さらに第2弾として出したのが「Kiss Me Sailor」。
今度は「Navy Blue」の最後の最後に出て来たコーラスを曲の冒頭でいきなり使っています。

これもボブ・クリューらしい曲ですが、どこかピーター・デ・アンジェリス・サウンドにもつながっています。ボブ・クリューはフォーシーズンズを手がける前に、ヒット曲というものの分析をかなりしたそうで、当然、そのときに同じフィラデルフィアで活動していたピーター・デ・アンジェリスが作ったフランキー・アヴァロンの「ヴィーナス」のリズム・パターン、あるいはコーラスの使い方を相当分析しただろうと思います。そうしたピーター・デ・アンジェリス・サウンドのイディオムをいくつも詰め込んで生み出したのが「Kiss Me Sailor」。

これでようやく「風立ちぬ」の話をすることができます。
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by hinaseno | 2013-07-11 10:05 | 音楽 | Comments(0)