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by hinaseno

「南の国からメリークリスマス」


YouTubeに埋もれさせておくのはもったいないなと思うような曲をアップするようになっていつの間にか20曲ぐらいになりました。ときどきそれらの曲がどれくらい視聴されているかチェックするのですが、先日須藤さんが亡くなられる前にひっそりと(この表現をずっと使っていますが、”ひっそりと”以外の仕方ってないですね)アップしていた「春の陽射し」は、あっというまに300件を越えました。アップしたものでは達郎さんの「フライング・キッド」がダントツだったのですが、すごい勢いで増えています。いい曲が多くの人の耳に届くというのはうれしいことです。

さて、今日は須藤さんが亡くなられてからひっそりとアップした曲をもう2曲紹介します。最高に素敵な曲です。
小西康陽さんがサウンド・プロデュースした須藤薫さんの『Tender Love』は、スペクターの楽曲をベースにしながらも、いろんなポップスのアイデアをつめこんでいます。このアルバムは大瀧さんの『ロンバケ』をきっかけにして、いろんなポップスを聴いて、ある程度知識が増えてきた頃に聴いたので、あっ、これはもろにあの曲だとか、ここにはあの曲のあの部分が使われているな、とかを見つける悦びもありました。
たとえば「River Deep Mountain High」そのまんまのものがあったり、大好きなロビン・ワードの「Wonderful Summer」やロイヤレッツの「Gonna Take A Miracle」があったり、あるいは昨年気がついたのですがデイブ・クラーク・ファイブの「Because」があったりとか、まあとにかく楽しいです。
中でもとびっきり好きなのが「おねがいラヴァーマン」という曲。作曲は昨日の「つのる想い」と同じ篠原太郎さん。いい曲作ります。
イントロを始め随所にジョニー・ソマーズの「Johnny Get Angry」のあの素敵なアレンジが使われています。それ以外の部分はロネッツの「How Does It Feel」がベースになっているような気がします。「How Does It Feel」は確か小西さんがロネッツの中で一番好きな曲とどこかで書かれていたような気がします。
他にも遊び心あふれたアレンジがなされています。ずっと前にデザイナーの高瀬さんがこの日のブログで、達郎さんのサンソンのジェック・ケラー特集でかかったジュリー・ロンドンの「We Proved Them Wrong」という曲のアイデアが使われているんじゃないかって書かれていて、なるほどと思ったのですが、果して。大瀧さんの楽曲もそうですが、いろんな曲のアイデアが詰め込まれていることは確かですね。それこそがポップスの楽しさ。

最後にもう1曲。実はこれは『Tender Love』には収められていない曲なのですが、プロデューサーからミュージシャンにいたるまで同じ人たちによって作られて、おそらくはクリスマス前にシングルとしてリリースされる予定だったみたいですがた、結果的には未発表になった曲です。これがとにかく素晴らしいんです。この曲は別のプロデューサー、アレンジャーによっていくつか手を加えられて須藤さんの2年後に発表された『Winter Moon』というアルバムに収められることになるのですが、数年前に紙ジャケでこのアルバムが再発されたときに、そのオリジナル・バージョンがボーナストラックで収められたんですね。本当は『Tender Love』のほうに収録された方が納まりはいいような気がするのですが、とにかく素敵な曲です。スペクター・サウンドに満ちあふれています。
タイトルは「南の国からメリークリスマス」。作曲は今井忍。アレンジはもちろん小西さん。めいっぱいナイアガラしています。高浪慶太郎さんの弦アレンジでも随所にナイアガラ・サウンドでしばしば聴かれるフレーズが出てきます。伊集さん、和田さんのコーラスも素晴らしいです。本当に埋もれさせておくにはもったいなさすぎる曲です。



この曲のベースになっているのはやはりロネッツの「You Came, You Saw, You Conquered」という曲。ロネッツの後期の曲ですね。作ったのはトニ・ワインという素敵な女性。いつか彼女のことも書いてみたいと思っています。大瀧さんの「ゴー!ゴー!ナイアガラ」のロネッツ特集の最後がこの曲でした。「僕はこの曲のプロデュース以降はフィル・スペクターの曲はほとんど知りませんし、あまり認めたくないんです」と言って曲をかけています。本当に素晴らしい曲。それから「南の島からメリークリスマス」ではロネッツの未発表に終ったこの「Everything Under The Sun」のアイデア(特にコーラスはもろにそうですね)も取り入れています。こちらもとても素敵な曲なんですが。作っているのもボブ・クリューですし。もったいない。でも、埋もれた名曲を下敷きにして名曲が生まれたんですけど、それも埋もれてしまっていたわけではあるのですが。
一人でもこの「南の国からメリークリスマス」という曲を気に入ってくれたらうれしいです。

Commented by hiromi suzuki at 2021-06-09 19:27 x
時折大瀧さんの記事を読ませていただいておりました。8年前の記事にコメントして見ていただけるか分からないのですが、この曲を取り上げていただき感謝です。実は32年前にこの曲をプロデュースしたレコード会社の担当でした。ご指摘の通りTENDER LOVEと同じセッションでレコーディングされたものです。諸事情があり変則的に世に出ることとなりました。89年当時この手のトライ(TENDER LOVE含め)は残念ながら全く評価されませんでした。小西君もNMMでピチカートのアルバムが0点くらう時代でしたから。
Commented by hinaseno at 2021-06-10 15:35
> hiromi suzukiさん
アルバムのブックレットで鈴木様のお名前を確認しました。コメントをいただき心より感謝申し上げます。このアルバムがあまり評価されなかったのはよく知っています。どうしてだろうといまだに不思議に思います。僕はいまだにこのアルバムが須藤薫さんの中で一番好きで、1年に何度も聞き返しています。個人的には小西さんがプロデュース&アレンジした大好きな「南の島からメリークリスマス」が同じアルバムに収まって再発されることを願っているんですがそれも実現しないまま。そういえば小西さんが「南の島からメリークリスマス」のアレンジの下敷きにしたロネッツの「You Came, You Saw, You Conquered」も大好きな曲なんですが、そのプロデューサーのフィル・スペクターもすばらしいアレンジをしたペリー・ボトキン・ジュニアも昨年亡くなりました。
by hinaseno | 2013-03-08 09:10 | 音楽 | Comments(2)