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by hinaseno

  路地裏を歩く ― 牛窓の話(その3)


  路地裏を歩く ― 牛窓の話(その3)_a0285828_9124499.jpg 昨日は牛窓の海岸通のことを書きましたが、実は牛窓で魅力的なのは、おそらくは古くから人が行き交っていたはずの、この裏通りですね。海沿いの道が整備されるまではきっとこの通りがメインストリートだったんではないかと思います。ここから北は山になっていて、そこに石段でつくられたいくつもの路地が無数に伸びています。普通の観光客はあまりここを通らないのかもしれません。ちょっともったいない気がします。

 川本さんも当然ここを歩かれています。『日本すみずみ紀行』にはこう書かれています。

 
 路地を歩くと、瓦葺き、格子作りの古い家がたくさん残っている。江戸時代末から明治にかけてのものが多い。ただどの家ももう"現役"の活気はなくして、歴史の底に沈んでいるような寂しい佇まいだ。町全体が、骨董屋の奥にひっそりと置いてある古い家具のようだ。路地裏に明治時代に建てられた煉瓦作りの二階建ての洋館が残っていたが、これも廃屋になっていた。
(中略)
 細い道はくれるようにして海沿いに続いている。漁師の家にはいまでも使われている井戸があったりする。豪商の大きな邸宅がある。造り酒屋があり。古い石段がある。ただ歩いている人の姿をほとんど見かけない。商店の数も少ない。町全体が隠居してしまった老人のようだ。

 
 25年ほど前の風景。でも、この路地は川本さんが行かれた当時のままのはず。廃屋の数はいくつか増えているかもしれませんが、でも、さびれた感じはしませんでした。「骨董屋の奥にひっそりと置いてある古い家具のよう」、あるいは「隠居してしまった老人のよう」と書かれていますが、だからこそ川本さんも奥さんも老後に住んでみたいと思われたんではないかと思います。

  路地裏を歩く ― 牛窓の話(その3)_a0285828_9242864.jpg 川本さんも書かれていますが、路地を歩いていて、すぐに気がつくのは井戸が多いこと。温暖小雨の気候なので井戸は必要不可欠のものだったんですね。もともとは近くに学校があったために「学校の井戸」とよばれるこの井戸の看板を読むと、牛窓の町並みは共同井戸を中心にして発展してきたと書かれてありました。

  路地裏を歩く ― 牛窓の話(その3)_a0285828_930408.jpg ところで、この背後の白い建物、とってもいい雰囲気。写真館だったようです。遊郭もいいですが、こんな建物もものすごく心惹かれるものがあります。今はもう営業をしていないのでしょうか。ここにこんなプレートが立てかけてありました。

「カンゾー先生」

 もう写真がかなり変色してしまっていますが、実は今から15年くらい前に、この牛窓を舞台にして映画が撮られていたんですね。全然知りませんでした。去年買った『瀬戸内シネマ散歩』(『早春』のことを書いている本)という本で初めて知りました。
 監督は今村昌平、主演は柄本明と麻生久美子。原作は坂口安吾なんですね。映画はまだ見ていませんが、今日ぐらいに借りてこようかと思っています。この写真館も写っているんでしょうか。
 『瀬戸内シネマ散歩』を読んでみると、映画の病院として使われた旧牛窓役場は、保存を願う人たちの声も届かず取り壊されたそうです。残念ですね。

  路地裏を歩く ― 牛窓の話(その3)_a0285828_10133016.jpg そういえば、この近くにあったこの建物のそばにも「カンゾー先生」のポスターと、小さな碑が作られていました。
 それにしてもこの建物は雰囲気があります。廃屋になっていて、かなり朽ち果てていますが、でもどこか風格のようなものがあります。「川源」さんの古い建物と書かれてありました。こちらはもと遊郭ではなく純粋な旅館だったんでしょうか。とにかく気になる建物。
 この建物については、また明日以降に書いてみたいと思います。

 ところで、路地裏にはやはりネコが似合います。というわけで、そばに寄ってきてくれたネコの写真を。
  路地裏を歩く ― 牛窓の話(その3)_a0285828_1013468.jpg
Commented by 39nemon at 2013-01-26 00:45 x
それにしても雰囲気ありますね。井戸も共同井戸だけに大きい。井戸端会議ってやつをするところね。
by hinaseno | 2013-01-25 10:15 | 雑記 | Comments(1)