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Talks About Music, Books, Cinema ... and Niagara


by hinaseno

がんばれば愛


先日、阪神タイガースにいた江夏豊選手のことを書きました。背番号が完全数28の快速球投手。その江夏投手の球を阪神時代に受けていたのが田淵幸一捕手。
田淵選手とは少しつながりがあって、実家の近くにある母方の先祖にあたる墓のとなりに田淵さんの先祖の墓がありました。田淵さんもときどきは来ていたようです。僕はそこの墓にそんなに何度も行ったわけではないので、田淵さんに実際に出会ったことはありませんでしたが、行くと必ず「田淵」と書かれた墓を見ていました。確か数年前に取り払われてしまったと思いますが。
ちなみに、母や田淵さんの先祖の墓の近くには、かの田中眞紀子さんにゆかりのある(ということは角栄さんにゆかりのある)人のお墓もあったみたいで、ちょうど田中眞紀子さんが自民党のときの大臣時代に訪ねて来たことがあって、町中大騒ぎになったそうです。
話はそれますが、木山さんのお父さんの日記を読んでいたら、静太さんはどうやら2度ほど実家のある町に来たみたいです。岡山で言えば、静太さんの住んでいた笠岡は西の外れ、僕の実家があるのは東の方ですから汽車で1時間以上はかかったはず。でも、日記で見つけたときはとてもうれしかったです。

話が(いつものように)それました。田淵選手の話です。
田淵選手は天性のホームランバッターで、あの王貞治さんとも何度もホームラン王を競っていたのですが、その一方でかなり特異なキャラクターを持っていて、年々その個性が際立ってきました。
それを見逃さなかったマンガ家がいました。いしいひさいちです。実は彼も岡山出身の人。マンガのタイトルは「がんばれ!!タブチくん!!」。
がんばれば愛_a0285828_1247553.jpg

このマンガにははまりました。当時よく読んでいたマンガはほとんど処分したのですが、これだけは処分しないでいたので、先日実家に戻ったついでに取ってきました。3巻ありました。久々に読んでも笑えます。
がんばれば愛_a0285828_838540.jpgちなみに僕の一番好きなキャラクターはヤクルトのヤスダ投手でした。「うりゃ」って言いながら投げている絵はたまらなく好きでした。
「がんばれ!!タブチくん!!」には野球とは関係のない時事問題を扱ったマンガも含まれています。のちに朝日新聞の4コママンガを書くようになったのもうなずけます。でも、かの名作「フジ三太郎」の後を受けて書き始めたときは相当のプレッシャーを感じましたが。今、「がんばれ!!タブチくん!!」をパラパラと見ると、どうやら当時の総理大臣は大平さんのようです。絵になりますね。今は絵になる政治家、いないですね。

さて、その「がんばれ!!タブチくん!!」は映画化されます。ただ、僕はこの映画は、たぶんテレビで放映されたときも見ていません。4コママンガだからこそ好きだったんでしょうね。
ところが後年、この映画(正確にはパート2)の主題歌を大瀧さんが作っていたことを知ってびっくりしました。この曲です。タイトルは「がんばれば愛」。歌詞やアレンジは大瀧さんではありません。


先日、この曲の収められた『大瀧詠一作品集VOL.2』(1995年発売)のブックレットを読み返して驚いてしまいました。以前ここで書いたことを訂正しなければならないことがわかったんです。
この曲を歌っているのはクレイジー・パーティーという名前の人ですが、実はスターダスト・レビューの根本要さん。そしてバックコーラスは大瀧さんの一人多重コーラスなんですね。デモ・テープに大瀧さんが多重コーラスを入れていたら原盤会社の人(キティの安室さん)に気に入られて、レコードにもぜひコーラスを入れてほしいということになったそうです。で、井上陽水さんはこの「がんばれば愛」のコーラスが気に入って、筑紫さんの「ニュース23のテーマ」を作るときに、この「がんばれば愛」のようなコーラスをやってほしいということになったんですね。そしてこの制作を手伝ったのが川原伸司(=平井夏美)さん。ブックレットにもちゃんと「川原伸司(平井夏美)」と書かれていました。気づきませんでした。
「ニュース23のテーマ」は何回か変わっていて最初のものははっきりと記憶していないのですが、「がんばれば愛」に聴かれる「おーっ、おーっ」のようなコーラスを使っていたものがあったように思います。YouTubeにはちょっと見当たりません。
「がんばれば愛」を録音したのは1980年の2月。『ロング・バケイション』の録音が始まるのが1980年の4月18日(最初に録音したのは「君は天然色」)。つまり『ロン・バケ』がまだ世に出るどころか、録音される前に「がんばれば愛」は作られているんです。
僕は前に陽水さんは大瀧さんの『EACH TIME』を聴いて、コーラスをお願いしたんじゃないかって書きましたが全然違っていました。全然違っていたと言えば、『ロンバケ』には大瀧さんの一人多重コーラスはないって書きましたが、そんなことはありませんでした。数曲ですが、大瀧さんの一人多重コーラスが聴かれます。

改めて考えてみれば、もし大瀧さんが「がんばれば愛」のデモ・テープを渡すときに、あえてそこに一人多重コーラスを入れることをしなければ、「少年時代」は生まれなかったんですね。もちろん、そのデモを聴いてそのコーラスをレコードに入れようと判断したキティの安室さんとか。
「君は天然色」(つまりは『ロング・バケイション』)が生まれる背景にも、様々な偶然のつながりと確かな耳を持った(単なる思いつきだったかもしれませんが)何人かの人がいたように、「少年時代」が生まれる背景にも様々な偶然のつながりと確かな耳を持った何人かの人がいたことだけは忘れてはいけませんね。
Commented by 39nemon at 2012-11-21 00:18 x
『がんばれ!!タブチくん!!』なつかすィ~。さすがに、マンガは読んでませんが、映画は(テレビ放映かもしれないけど)見た気がします。随分経ってから、タブチくんの「がんばれば愛」が大瀧さんの曲と知って、私もびっくりしました。それでもって、今日この曲を歌われているのが根本要さんであることと、一人多重コーラスで大瀧さんも参加されていると知り、またまたびっくりしています。当時は両方とも知りませんでしたし、聴き返す機会もありませんでしたしね。んまぁ、周知の事実なんでしょうね。
それでまた、この話が「少年時代」に続くところにもびっくりしました。びっくりしすぎですね。...ということは、陽水さんがこの『がんばれば愛』の多重コーラスのようなことをやりたいということで大瀧さんに問い合わせたところ、その制作を手伝った川原さんを同行させたという訳ですか。それであの「少年時代」ができたと。うわー、まさか『がんばれ!!タブチくん』と『少年時代』繋がっているとは誰も思わぬことでしょうね。
Commented by hinaseno at 2012-11-21 23:27
この話の最も大事なポイントは、メロディーだけを作ってデモ・テープを渡せばよかったのに、そこにコーラスを入れたってことですね。なんとなく思いついてやったことが、大きな物語へと発展するという。なんとも素敵な話。
Commented by Kayo at 2013-05-08 11:44 x
「君は天然色」の間奏は「がんばれば愛」用に作ったけれど使わなかった間奏メロディの流用だそうです。そう思って聞くと雰囲気似てますね
Commented by hinaseno at 2013-05-08 14:34
間奏の話は書いてませんでしたっけ? もちろんその話は知っています。その間奏部分ばっかりギターで弾くのが一時期マイブームでした。
by hinaseno | 2012-11-20 08:44 | 音楽 | Comments(4)