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by hinaseno
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「快盗ルビイ」のヒミツ


大瀧さんの曲作りに関して忘れてはならないことは、遊び心です。大瀧さんの遊び心が取り入れられた曲のことを語ればきりがないのですが、今日は僕の大好きな「快盗ルビイ」のことを取りあげてみたいと思います。
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「快盗ルビイ」。歌っているのは小泉今日子。もともとは彼女の主演した映画のテーマ曲ですね。
映画の監督は和田誠さん。「快盗ルビイ」の詞を書いているのも和田さんです。大瀧さんが和田さんに依頼されたそうです。

この和田さんの書かれた詞もとっても素敵です。ジャズに造詣の深い和田さんらしく、これでもかと言うくらいに脚韻を踏んだ言葉が並びます。



誰かの熱いハート
いつでも恋はきらめく謎ね

ねらいをつけたら もう逃がさないから
海賊が埋めたあの宝 手に入れたらすぐサヨナラ

キラキラ ダイヤモンド 赤いルビイも 輝く夜
夢みれば上がる温度 光るエメラルド 心はおどる

好きよ金銀サンゴ
憧れてたタンゴ
欲しいのはサファイア
それとも素敵なキス・オブ・ファイア

ヒミツの鍵穴 やさしくかける わな
涙をかくしたあの戸棚 思わず心に咲く花

誰かの熱いハート 盗んでいたのいつのまにか
はばたく 天使の鳩 今度の恋は たしかに間近

いつでも恋はきらめく謎ね
私は 私は 燃えるルビイ


韻に関しては、あえて指摘するまでもないですね。
ほぼ全てのフレーズの最後の言葉に韻を踏ませています。
和田さんの遊び心も満載です。

さて、大瀧さんの作った曲の方について。
下敷きにしているのはシェリー・フェブレーが歌った「ジョニー・ラブズ・ミー」ですね。バリー・マンという作曲家が作った曲です。
イントロの部分とか、間奏の部分でそのままのメロディを聴き取ることができます。


「ジョニー・ラブズ・ミー」は、あまりにもわかりやすい形で使われているので、ちょっと60年代のアメリカン・ポップスに詳しい人であれば、すぐに気づくことができます。
でも、「快盗ルビイ」の曲の最大の魅力は、何度も繰り返されるこのフレーズ。

ルビ・ドゥビ・ルビ・ドゥビ・ルビ・ドゥビ・ドゥ


アメリカのオールディーズのコーラスなどでしばしば聴かれる「シュビ・ドゥビ」とか「ドゥビ・ドゥビ」という言葉と、ルビイを重ね合わせたアイデア。こんなアイデアは大瀧さんしか出てこないもの。

さて、このフレーズのもとになっているのは何だろうと考えて、頭に浮かんだのは、やはりバリー・マンがシェリー・フェブレーにかいた「テレフォン」という曲。この曲に使われている「リング・ア・リング・ア…」ではないのかなと勝手に考えています。


バリー・マンが作ったシェリー・フェブレーのような曲をアイドルにかく、ということで思い出される話があります。
大瀧さんと山下達郎さんが1984年から毎年、新春にラジオでやっている「新春放談」。今年は震災のこともあって中止されましたが、その最初の頃の1985年に放送されたもので、達郎さんは興味深いことを語っていました。
達郎さんはバリー・マンという作曲家を最も尊敬していて、もともとは自分で歌うのではなく、バリー・マンのような職業作家になりたかったと(バリー・マン自身が歌っているものもあるのですが)。そして、当時、アイドルとして全盛期にあった松田聖子に曲をかくとすれば、シェリー・フェブレーが歌ったような曲(もちろんバリー・マンが作ったものですね)をかくかもしれないという話を達郎さんが語ったんですね。
結局はそれは実現せず、松田聖子は結婚してアイドルという場所からはいなくなりました。でも、その3年後、大瀧さんは松田聖子の次の世代のアイドルの中心にいた小泉今日子に、まさにバリー・マンがシェリー・フェブレーに作ったような曲をかいたんですね。このあたり、とてもおもしろいですね。

さて、「快盗ルビイ」の話はこれだけではありません。大瀧さんの遊び心が最もよく出ているのは次の歌詞のところです。


好きよ金銀サンゴ
憧れてたタンゴ
欲しいのはサファイア
それとも素敵なキス・オブ・ファイア


大瀧さんは、和田さんの書いてきたこの歌詞に合わせて、曲の中に別の曲をはさみこむという遊びをします。基本的には左のスピーカーに流れています。

まず、「好きよ金銀サンゴ」。
「サンゴ」ということで「珊瑚礁の彼方に(ビヨン・ザ・リーフ)」のフレーズを入れています。


次に「憧れてたタンゴ」。
「タンゴ」ということで、バンドネオンという楽器を使って(演奏しているのはバンドネオンの大御所だそうです)、タンゴの特徴的なフレーズ(ラッタッタッタッですね)を演奏しています。大瀧さんが参考にされた曲はわかりませんが、この「ラ・クンパルシータ」という曲に聴かれるフレーズですね。ちなみに、演奏した人は「今までのレコーディングで最短の時間だった」と言って帰っていったそうです。


その次が「欲しいのはサファイア」。
「サファイア」ということなのですが、タイトルに「サファイア」のついた曲を探したけどめぼしい曲がなかって、唯一ポール・モーリアの演奏する「サファイアの瞳」を手がかりにインド映画の何かの曲の使えそうなフレーズを電気シタールで弾かせたとのこと。これはちょっとわからないので、ポール・モーリアの「サファイアの瞳」を貼っておきます。


で、最後が「それとも素敵なキス・オブ・ファイア」。
これは、まさにそのまま「キス・オブ・ファイア」という曲があるので、その中の最も印象的な部分のフレーズが使われています。


本当におもしろいですね。
でも、遊ぶにしても遊ぶからには徹底して遊ぶところが大瀧さんのすごいところ。

最後に「快盗ルビイ」には、いくつかのバージョンがあります(最初に貼ったYouTubeの音源も、実はシングル・バージョンとはエンディングが違っています)。その極めつけは大瀧さんと小泉今日子のデュエットのバージョン。
ただ、これは実際にデュエットしたものではなく、小泉今日子の歌っているものに大瀧さんの歌ったデモテープを重ね合わせてつくったものです。大瀧さんの歌い方に、ところどころおふざけが入っています。


ちなみに「快盗ルビイ」の弦アレンジをしているのは服部克久さん。達郎さんも服部さんに弦アレンジをしてもらっていますね。服部さんは先月28日ののブログで紹介したいくつもの素晴らしい曲をかいた服部良一さんの息子さんです。つながっていますね。
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by hinaseno | 2012-10-03 10:47 | 音楽 | Comments(0)