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by hinaseno
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やっぱり小津はすごかった


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三石のあの場所探し。
昨日書いた通り、ほぼ場所を特定することができました。
まずはその辺りの場所で撮った写真を。
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で、こちらは池部良と淡島千景が、三石の下宿から見ているとされた風景の写真。煙突の左に見える背後の山の形状が同じですね。
a0285828_838695.jpg

僕が撮った写真には山陽本線の線路が写っていません。前にも触れましたが、映画のこの場面は櫓の上の、カメラの位置まで考えるとおそらくは5mくらいの高さから撮られたものです。

もう1枚、以前も載せましたが小津らしき人物が、あの風景をさがしている写真。
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こちらは櫓を建てる前に、あの風景を撮る場所を探しているものですね。ここは、9月15日のブログで、僕が”あてをつけた”ホシレンガの後方の山の中腹からとらえたものであることは間違いありませんでした。
この写真ではわかりづらいかもしれませんが、僕が撮った写真の煙突の下の部分に見える小さな屋根の形が、まさに同じ形状なんですね。もちろん煙突の太さも形も。
この煙突がポイントでした。

この"あてをつけた"場所、先日あてをつけたとき、以前行った場所と書きましたが、それはもう少し西の三石耐火煉瓦工場との境の辺りで違っていました。現地に行くと、ホシレンガはその東にあるかなり大きな工場であることがわかりました。そして、そこに今まであまり意識していなかった1本の煙突が!
この煙突、実はこれまでも何度も通りすがりに眺めてはいたのですが、他の残っている煙突がどれも煉瓦作りであるのとはちがってコンクリート製でしたので、『早春』の映画以降に建てられた新しいものだとずっと思っていたのですが、そうではなかったんですね。この煙突こそまさに、早春のあの場面に出てくる煙突だったんです。そういえば、その場面の煙突はちょっと白っぽいとは思っていたのですが。
前に示した池部良の下宿の背後に見える2本の煙突はどちらも煉瓦作りなので黒っぽい。しかもホシレンガの背後辺りからだと相当距離があって、あの映画の場面の大きさで煙突が写ることは考えにくい。ということなので、あの場面に写っている1本の煙突はすでに失われてしまっている、とずっと思っていたのですが、残っていたんですね。

改めて考えてみると、『早春』の映画を撮影した後、数多くの煉瓦工場がなくなって、何十本もあったはずの煙突のほとんどが倒されて、わずか数本(確認できるものは4本)しか残っていない煙突の3本が映画の重要な場面に写っている煙突だったというのは、奇跡としかいいようがないですね。このときにも、ああ川本(川本三郎)さん、やっと見つけましたって心の中で叫んでしまいました。

さて実際の場所は地図でいうとホシレンガの背後の山の中腹にある恵び須宮という小さな神社の辺りになります。櫓はおそらくその前の工場の敷地に建てたんだろうと思います。小津らしき人物が風景を探していると思われる写真は、その神社の横の高台だろうと思うのですが、そこは現在立ち入りができないようになっていました。恵び須宮も完全に廃墟になってしまっていました。

後で思ったのですが、小津一行が三石に来るなり建てたというあの櫓。彼らは汽車で来たわけですから、あんな櫓の材料を持ってくるわけにはいきません。もちろんトラックで運ぶということもあったかもしれませんが、はじめから櫓を建てる考えはなかっただろうと思います。でも、あの場面をきちんと撮影するにはどうしても櫓が必要になった。そこで浮かんだのがおそらく盆踊りなどに使う櫓だったんではないかと思います。で、運のいいことに恵び須宮の建物の中にその材料が収められていたのかもしれません。撮影したのが9月上旬でしたので、盆踊りの材料がまだしまわれていなかったのかもしれません。それを撮影用の櫓として使ったと。

もしかしたら今もその櫓の材料があそこに置かれていたかもしれませんね。でも、これはあとでひらめいたこと。次ぎに行ったときに確認してみます。できればホシレンガの人に話を訊けたらと思います。

いずれにしても、あの場所を特定できたのは、小津安二郎という人がこだわる部分に関しては徹底的にこだわるということを前提にして探し当てることができたわけです。前にも書きましたが、三石から汽車が東京方面へ去って行くというイメージでは絶対に考えにくい場所でしたから。
もちろん池部良の下宿は実際はセットでしたし、その下宿のあった場所から見える風景は、あの映画の風景とは違って線路に近すぎて、しかも汽車は三石から遠ざかるのではなく、三石に近づいてくるのですが、でも映画的なリアリティを貫くために小津がやっていたことはすごいとしかいいようがないですね。特に下宿のセットの窓の位置と、池部良と淡島千景に見させる方向! 
きっと小津は東京に戻って、池部良の下宿に設定した場所と、彼の部屋から見ている風景として撮影したホシレンガの背後の場所を記した三石の地図を見ながら綿密にセットの間取り(特に窓の位置が重要)を考えて、あの方向を見させたんでしょう。

正直、ここまでのことが発見できるなんて思ってもみませんでした。
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by hinaseno | 2012-09-24 08:50 | 映画 | Comments(0)